表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢見る冒険者(仮)  作者: I.D.E.I.
17/23

草原の種族その2 機械

 「仮面! フォロー遅いよ!」


 「仮面! そっち行った! 逃がすな!」


 「仮面。一旦休憩しよう」


 佐藤一、林一華、加藤孝史、伊藤悟の四人は草原でスライム狩りを行っていた。


 「なぁ、お前ら。俺の名前って知ってるか?」


 「「「仮面」」」


 「……俺の名前は寿限無ってんだ。もちろんフルネームじゃ無ければ返事をしないからな」


 「仮面! 弾幕薄いよ! なにやってんの!」


 「拗ねてんだよ! ちきしょーめぃ!」


 時折蟻の集団とも戦わなければならないが、それも含めてかなり楽な戦いを繰り広げていた。和気藹々と楽しそうだ。


 「楽しくねぇ!」


 対象がスライムなため、使う武器は主に剣鉈だ。銃だとスライムが爆散してしまうので使えない。しかし弓矢だとスライムの核を逃してしまうので、近場から核を狙った攻撃が出来る剣鉈に落ち着いた。


 初めの内は剣鉈でも核を逃してしまう事も多かったが、何度も繰り返す内に確実に核を壊す事が可能になった。これはレベルアップでは無く、剣鉈の熟練度という事だろうと佐藤一たちは理解していた。


 なのでスライム相手には銃弾は使わないので弾幕などは無い。


 「お? ようやくドロップしたな」


 スライムを倒し、その亡骸をズタ袋に入れている時に小さな宝箱を発見した。伊藤悟が拾い上げ、蓋を開ける。


 「時間延長の宝玉だ。これで五つ目か」


 スマホで鑑定した結果を見て伊藤悟が言う。


 「はぁ、大体スライムを十数匹倒して一回ドロップすると言う感じか」


 「ドロップ率七、八パーセントぐらい? それってどうなの?」


 「ゲームのRPGならドロップ率は高い方に分類されるな」


 「これで高い方? う~、飽きたよぉ~」


 「気持ちは判るが、この手のゲームだと定番中の定番だ」


 「判るけどぉ。でもこれ、四人でやる作業じゃないよぉ」


 「まぁ、なぁ。それでも一人でやってる所にクマさんが現れたら、イヤリングを落としている暇も無いぞ?」


 「クマかぁ。あたしたちでもクマ、行けない?」


 「やってやれない事は無いが、結構疲れるぞ?」


 疲れる。つまり負担が大きいと言う。それは林一華にも判った。


 「とにかく今はドロップアイテム集めるのが重要だ。飽きたとか面倒とかは置いとけ」


 「ぶー、ぶー」


 文句を言いつつもそれに逆らう事は無い。林一華にも判っている事だった。それでも飽きた事をアピールするために背伸びをして空を眺める。


 「あー、空が青いぃぃ。あぁぁぁ、ヒコーキ雲だぁぁぁぁ」


 「おら、さっさと移動するぞ……、ちょっと待て! ヒコーキ雲だぁ?」


 あるはずの無い言葉を聞いて佐藤一が空を見上げる。そこには確かに一本の飛行機雲が伸びていた。


 「全員警戒! 伊藤! 見えるか?」


 伊藤悟は斥候担当だ。チュートリアルで貰ったのは装飾装備で単眼鏡。望遠鏡の一種だが、偏光レンズを使って上下が逆さまになるのを修正している。通常は使用する用途により低倍率から高倍率まで様々なタイプが存在するが、伊藤悟の持っている単眼鏡は四倍から百五十倍までの、オペラグラス並みから天体望遠鏡並みの倍率まで選べるとんでもない物だったりする。


 遠くの獲物を狩ると言う目的のモノで、街の中の妖怪やスライム相手だと邪魔になるので、普段は使用していない。


 しかし高い空の上。尾を引く飛行機雲しか見えない上空ならばと草原に仰向けに寝転んで単眼鏡を目に押し当てる。


 オペラグラス並みなら問題が無いが、高倍率にすると少しのブレで簡単に視野から外れて見失う。なので倍率を上げる時はしっかりと固定する必要がある。出来れば三脚などで固定したい所だが、それでは使い勝手が悪くなるので寝転んで頭と身体を固定させた。


 そしてじっと飛行機雲の発生源に単眼鏡を向けた。


 「ダメだ。距離感がおかしい。アレがデカいのか小さいのかも判らない。でも、アレが飛行機雲じゃ無いのは判った」


 伊藤悟の言葉を聞いて佐藤一も空を見つめ直す。


 「雲じゃなく、不完全燃焼の煙か?」


 「あっ、バランスを崩した? 落ちる?」


 伊藤悟が言う。その通りに移動速度が落ちた様に見えるが、それは急角度で落下したためとも見えた。


 「伊藤は周辺警戒に切り替え! 皆も装備変更! 全力を出せるようにしとけ」


 佐藤一の指示で全員が剣鉈を鞘に収め、ポーチから連射できるショットガンを取り出す。さらに魔法の杖を取り出して腰のベルトに差し込み、いつでも切り替えられるようにした。


 そうしている間にも謎の飛行物体は落下を続け、その後、佐藤一たちから五百メートル程先へと落下した。


 「この距離なら無視すれば無視出来る様だが、どうする?」


 「え? 行こうよ。当然でしょ?」


 「どれぐらいの脅威か判らないんだから、慎重にしないとなぁ」


 「でもどんな脅威か調べておかないと、他の皆が遭遇した時にヤバイとかの可能性もあるしねぇ」


 場所は草原。芝生並みの高さから佐藤一たちの腰の高さまで、様々な草が生い茂っている。既に落下した物は草原の草に隠れて見えない。確認するには近づかなくてはならない状況だ。


 「ちっ、仕方ない。行くぞ。念のために言っておくと、確認が最優先。敵対されても逃げるのを第一に。逃げる事が可能かどうかも重要な情報だからな。もう一度言うぞ、戦うとは思うなよ、一華!」


 「え? 名指し? あたしってそんな戦闘狂に見えるワケ?」


 「「「見える」」」


 「えー? 酷いよ。こんな可憐でか弱い美少女に向かって戦闘狂とかって、パワハラだよ、セクハラだよ、業腹だよぉ!」


 「移動を始める。伊藤、少しだけ先行してくれ」


 林一華の言葉を軽く無視して佐藤一は移動を命令した。


 伊藤悟は中腰のまま背の高い草を避けるルートを上手に選択し、草を掻き分ける音も出さないように移動を始めた。


 それと同じルートで佐藤一たちが続く。


 「こ、この距離を中腰はキツい」


 半分程で佐藤一が音を上げる。


 「あたしもダメ。膝が痛い」


 「伊藤。すまん、少し休憩入れてくれ」


 林一華が同意し、加藤孝史が少し前を行く伊藤悟に小声で頼む。


 「ならここで待っててくれ、少し先行して様子を見てくる」


 「無理はするなよ」


 佐藤一が念を押して送り出した。


 そして伊藤悟は陸上部の持久力を生かし、中腰のままに草の中を分け入って走っていった。


 そろそろ、と言う所で速度を落とし、慎重にすすみ、ようやく落下した何かを視界に収めた。


 それは刈り込んでいない芝生程度の長さの草むらに横たわる金属質の物だった。しかも時折パタパタと動いている。


 機械であろうと予測をしていたので、動作不良の機械が同じ動きを無造作に繰り返しているだけの状況かと想像した。


 そしてもう少しだけ、と近づき、そのモノを完全に視界に入れた。


 鳥だった。しかも鷲や鷹の様な猛禽類を参考に作られた機械の鳥だ。大きさも翼を真横に広げたら軽く三メートルはありそうだ。


 胴体の方は嘴から尾羽の先までで約一メートル程。


 大型の猛禽類であれば平均的な大きさだ。


 その機械の鳥が燃えていた。ビニール系統の燃える匂いが立ちこめ、翼の付け根から黒い煙が立ち上っている。さらに別の場所からは白い煙がいくつも漏れている。


 伊藤悟との距離は約二十メートル強。草に隠れているのでそれ以上ははっきりしない。そこで単眼鏡を取り出し、低倍率で覗き込んだ。


 しかし見た目だけしか判らないので肉眼で観察したのと変わり無い結果になった。ただ一つだけ判ったのは、黒い煙を上げている片方の羽が完全に動かなくなっている事だけだ。その状態であれば飛んで遠くに行く事は出来ないだろうと判断し、伊藤悟は佐藤一たちの休憩している地点に戻る事にした。


 再び中腰で草の間を移動し、戻った時には佐藤一たちはほぼ復活し、移動を再開しようという所だった。


 そこで見たままを報告。佐藤一たちに判断を委ねる。


 「なぁ、これって関わらないとならないイベントだと思うか?」


 「この夢にイベントという概念があるかどうかも判らないしなぁ」


 「イベントらしき物はチュートリアルだけだった様な? あ、ビギナータウンが初心者用イベントだったとかもあるか」


 「ねぇ? イベントって?」


 「売ってるゲームとかオンラインのゲームとかは、プレイヤーを楽しませなきゃならないだろ? だから戦わせる以外にストーリーを差し込んで紆余曲折な行動を強要して、飽きさせないようにしたり楽しませたりするんだ。そして達成出来れば報酬が入ったり、次のステップに進めるようになったりする。まぁそういうのを総じてイベントと呼んでいるんだが、細かい定義とかは無いな」


 「ふーん。なら、それはやらなきゃ行けないんじゃ無い?」


 「用意されたイベントならな。だが、この状況が用意されたイベントなのかどうかも判らない。それに特定のイベントは乗ったせいで取り返しのつかない状況にされたりするモノもある」


 「取り返しのつかない、って?」


 「例えばだが、クラスの他の連中と敵対する立場になるとか、手に入れる事が困難なモノを手に入れるまでは何かの縛りを受けるとか、だな。だが、そう言う縛りのあるイベントが存在するかどうかも判らないから悩んでるワケだ」


 「判らないなら二択じゃん。やるかやらないか、だしょ?」


 「ま、まぁなぁ」


 林一華の簡単理論に拍子抜けする。


 「はぁ、何を悩んでたんだろうなぁ。まぁ、良い。四人だけだが多数決だ。他の連中と決別する可能性とかも入れて考えてくれ。伸るか反るか。じゃぁ、関わる!」


 そこで全員が手を上げた。


 「賛成しておいて何だが、良いのか?」


 「ここで穏便な生活を選択しよう、っては無しだろ?」


 「そうそう、冒険しよう!」


 「これからも似たような事の連続なんだろうからなぁ。手が届く範囲なら手を伸ばしても良いんじゃ無いか?」


 「だな。良し、装備再点検。使わない物でも直ぐに取り出せるように確認しておいてくれ」


 そして再出発。


 先ずは近づいて相手が攻撃を出せないように拘束してから話を聞く事がベストと判断して、伊藤悟の案内で隠れながら進む。


 先ほど伊藤悟が機械の鳥を観察した二十メートル強の位置に全員がしゃがみ込む。そこからは言葉を発せず、手信号での支持になる。と言っても、全員が同じ手信号を理解しているワケでも無いので、極簡単なモノだ。


 まず左手で握り拳を作り、それを機械の鳥に見立てる。次に伊藤悟を指差してから握り拳の向こう側の位置に指を指す。林一華を指差した後は今いる地面を指差す。そして残りの方向に自分自身に割り当て、残った加藤孝史には少し離れた位置に割り当てる。念のためのバックアップ担当だ。


 ただそれだけの作戦。


 静かに散らばり、頃合を測って佐藤一が号令を掛ける。


 「確保!」


 「ピェー!」


 機械の鳥が驚いて悲鳴のような声を出したが、構わずに押さえつけにかかる。


 左の翼を伊藤悟が。右の翼を佐藤一が。そして尾羽の付け根を林一華が押さえつける。


 それに対し機械の鳥は暴れた。が、暴れるための動かす自由度も無いのでほぼ押さえつけられたままだ。


 「しまった。誰かロープを持ってないか?」


 佐藤一は捕縛用のロープを用意していなかった事を思い出した。


 「あるぞ」


 答えたのは加藤孝史。獲物を血抜きするための吊り下げ用にロープを購入していた。


 ドロップアイテムを入れておくように用意しておいた巾着袋から中身を取り出し、その袋を機械の鳥の頭に被せて巾着の紐を軽く締める。

 それから翼を強引に折り畳み、その周りにタオルを巻き付けてからロープをグルグルと巻いていく。両足は二本を一つにまとめるように軽く縛るだけだ。


 横方向にグルグルと巻き終わった後に、斜めに交互になる様に巻き付けて、一応は安心というレベルになった。


 「捕獲完了」


 ロープで巻かれ、一つの塊のようになった機械の鳥から離れ、佐藤一は息を抜いた。


 「さて、どうする?」


 伊藤悟が佐藤一に聞く。


 「んー、まずは本人と対談してみるか?」


 「おい…」


 「冗談じゃ無く、本気だぞ。まぁ可能性は半々だが」


 「…まぁ、こう言う世界だからなぁ」


 頭を掻く伊藤悟の横で、佐藤一は機械の鳥の頭に被せた巾着袋だけを取り除いた。


 「クエーッ!」


 「あ、あぁ、あー。俺の言葉が判るか?」


 佐藤一がそう言うと、警戒色丸出しだった機械の鳥が驚いたように頭を後ろに逸らす。そして佐藤一をじっくりと見つめる。


 「言葉が判るなら話を聞きたい。言葉も判らず、ただ暴れるだけなら、この辺にいる獣と同じ扱いで狩りの対象にするだけだ」


 その佐藤の言葉に機械の鳥は動かずにじっと見つめていたが、暫くして頭を下げて、伏せをする姿勢になった。身体はグルグル巻なので首から上しか動かないが。


 「ピー(お主たちは…)」


 「「「しゃべったぁ!」」」


 機械の鳥の言葉に全員が一斉に驚きの言葉を吐いて、その場を飛び退く。


 「ま、マジでしゃべったぞ?」


 「え? ここの鳥ってホントに会話出来るの?」


 「いや、待て待て、アレは機械だから人が作ったロボットかも知れない」


 「これは夢だ。あ、本当に夢だった。夢なら仕方ないか」


 言い出しっぺの佐藤一までが驚愕していた。


 「ピュー?(何を驚いているのだ?)」


 「え、えっと、その、初めまして。お、俺は一と言います」


 「ピェーピー(我はへブラクワイと言う)」


 「へぶ? くわ?」


 「へブラクワイだ。三十二番目の九番目という意味だ」


 「あ、ちょっと失礼」


 そこで佐藤一はポーチからメモ帳を取り出し、へブラクワイの名と三十二の九と書き込む。


 「三十二の九ってどう言うのぉ?」


 「たぶんM-9とか言う認識番号みたいなモノじゃ無いかな? 人名とかにも使う場合もありそうだけど」


 林一華の質問にメモを書きながら答える。


 「ピー(良いか?)」


 「あ、はい」


 「ピュー、ピェー、ピェー(其方らは何処の者だ? 我の知る猿族とは違った者たちのように見えるが)」


 「猿族…。たぶん違うんじゃ無いかな? 俺たちも猿族ってのがどんな種族かは知らないけど」


 「ピーピェー(それで何処よりまいった?)」


 「俺たちはこの近くの、あの小さな森の中にある門の一つから来ました」


 「ピーーー!(なんと夢見る街の者たちか。まさか実在するとは)」


 実在したか、と言う言葉に、佐藤一たちは互いに顔を見合わせる。


 「あ、その、貴方方から見て、あの夢見る街とはどういった場所なのでしょう?」


 「クェッ、ピェーピェーピー(ぬ? うむ。確かにお主らからしたら、我らの認識は知らぬ話よな)」


 「あ、その前に、今、貴方はどういった状況なのでしょう?」


 改めて、機械の鳥の身体を見て佐藤一が聞く。間にタオルを挟んだとは言え、ロープでグルグル巻の状態だ、その前は黒い煙を上げていた。


 「ピ。クェーッ、クワッ、ピューピューピュー。ピー(我か。我は罪を犯した者なのだ。それで逃亡しておった。お主たちに捕まりもはやこれまでと観念した。我を突き出すなり、ここで殺すなり、好きにせよ。もはや無様な命乞いなどせぬ)」


 あまりの潔さっぷりに、佐藤一たちは逆に困ってしまった。


 「あの、どう言った罪を?」


 「ピューピューピーピーピークェ(我らの、我らのみに関わる掟の問題だ。お主たちにはおそらく通じぬであろう)」


 「それでも一応は知っておきたいです。それと、追っ手は来ているのですか?」


 「ピェー、ピーピーピークェー(追っ手は…、既にこのような身。遠からず朽ち果てるだろうと思われるだろう。あってもそう長くは気を配らぬであろうな)」


 「それで?」


 「ピーピーピー。ピェーピーピークエー。ピー(う、うむ。我は禁忌たる恵の丘に入り、その秘密を覗こうとしたのだ。実際は我にもよく判らぬ仕組みが動いておった事しか判らなかった。その結果がこれよ。実に不甲斐ない)」


 「恵の丘ですか?」


 「ピェー、ピーピーピー(うむ。我ら一族を生み出す母の胎たる丘の事だ)」


 「母の胎…。あ、もしかして貴方方は、一つの場所から全ての一族が生み出されてくるわけですか?」


 「ピー。ピェーピェー、ピーピークェー。ピーピーピー(そうなのだ。お主らの様な柔き身体を持つ者たちは雌と言われる型違いから生み出されるのは知っておるが、我らは生まれ出でた時より完全体で生まれ、何時までも変わらぬ姿で有り続けるのだ)」


 それを聞いた佐藤一たちは、あぁ、やっぱり、と言う感想を持った。やはり彼らはロボットで、恵の丘というマザーマシンがあるのだろうと。


 「あの、貴方の身体は治らないのですか?」


 「ピー、ピー、ピェークェークェー、ピー(恵の丘に戻れば生まれたてのごとくになれるが、それまでの記憶を全て失ってしまう。それに禁忌を犯した我は一族の者が恵の丘に入る事を許さぬであろう)」


 「(修理するとリセットされてしまうのか。それって修理って言うのか? あ、いや、直っているから修理ではあるだろうけど…)」


 佐藤一はこれからどうするかを思案した。


 「あの。貴方はこれからどうするつもりだったのですか?」


 「ピー、ピーピェー。キュェークァー、ピー(うむ。追っ手の届かぬ所へ生き延びられたらと考えておったが、その先の事は何も考えおらなんだ。故にお主たちに捕まった事で完全に諦めておった)」


 「なら、俺たちにその身を預けて見ませんか? もしかしたら生き地獄になる可能性もありますが、なんとかその身体を直す事ができるか試してみたいと思います」


 「ピェーーピーピーピ、クェー、クェー(うーむ。ならば致し方なし。どうせ捨てたこの身である。お主たちに託そう)」


 そして佐藤一は機械の鷲を抱え上げ……ようとしたが途中で断念し、ロープを編んで簡易的な網を作り、四人で四方を持って運ぶ事にした。


 「重いんだよ」


 ほぼ金属の塊なのだから当然である。


 レベルアップでステータスは上がっているが途中で休憩を入れつつも夢見の街ミイヤに戻り、役所で休憩をとる。その間に佐藤一はスマホのメール機能を使って生産職の五人に連絡を取った。


 そして五人の内、機械部品関係で役に立ちそうな道具を揃えている岡田小梅の工房で対応する事になった。


 再び網の四隅を持って移動開始。


 途中、出る必要も無いのに、と思いながらも河童やすねこすりなどを蹴散らしながらすすむ。


 そして岡田小梅の工房近くに五人が外で迎えてくれた。


 自動車程度なら軽く格納できそうな工房には、大きなテーブルと旋盤やボール盤、そして溶接機とそれに繋がるコードなどが乱雑に置かれていた。


 大きなテーブルという作業台の上に置かれる事になった機械の鳥。


 「ピーェー(よろしく頼む)」


 ロープを解かれ、タオルを取ると、部品のいくつかがこぼれ落ちた。縛る時に乱暴にしてしまったが故に、部品が散乱しないようにと今まで縛りっぱなしだった。佐藤一はその判断が間違っていない事に少しだけ安堵したが、縛り付けたのも自分なのでややばつが悪い気持ちになった。


 「痛みとかはあるのですか?」


 生産職の中では比較的しゃべる方の中村梓が代表して聞く。


 「ピエー(痛みとは?)」


 「動かす時に、何かに引っかかった場合、その抵抗は感じ取れますか?」


 「ピー(それは判るが)」


 「うん」「ん」「はい」「うん」「ん」


 中村梓の頷きに吉田恵、斎藤董子、岡田小梅、山本光雄が頷いて答える。


 そして岡田小梅がノギスやマイクロメーターを取り出し、他の者たちがノートとペンを取り出す。中村梓はアルコールやオイルを布に染み込ませ、こぼれ落ちた部品を綺麗に洗浄し出し、山本光雄はB4サイズのトレイの内側が細かく区切られたパーツホルダーを用意するなど、それぞれが動き出した。


 「あー、後は任せても良いか? 本来なら俺たちは付き添って結果を確認しなければならない立場なんだけどな」


 すでに機械の鳥であるへブラクワイとの会話は全て伝えてある。ならば生産職に任せても良いんじゃ無いかと考えた。


 「はい。少し時間がかかると思います。何かあったらメールか電話します」


 言葉はほとんど交わしてはいないが、身振り手振りだけで采配を取っていた中村梓が忙しそうに答えた。


 「じゃ、よろしく」


 「はい」


 佐藤一に託された中村梓は、ブラクワイへと指示を出す。


 「すみません。両方の翼をゆっくり広げてくれますか?」


 「ピー、クエー(左は一部が動かぬのだが)」


 「構いません。こちらで引っ張るので、開こうとしてくだされば」


 「ピー(判った)」


 そして大きな作業台ではあるが、そこからも大きくはみ出すぐらいに翼が広げられた。


 「左のココ。黒く変色していますが、ココの周りを大きく分解します」


 「ピー(ああ、お手柔らかに頼む)」


 中村梓が石油系溶剤のスプレーをかけ、岡田小梅がブラシで擦っていく。そして山本光雄が細いラジオペンチを何本も駆使して部品を挟み込んでいく。


 そして取り出した部品を吉田恵と斎藤董子に渡していく。


 渡された部品を二人は金属製のトレイに乗せ、潤滑剤と溶剤を混ぜた液体に浸けて洗浄していく。


 それらの行程は一つの行程ごとにスマホで撮影され、どの部品がどんな形で固定されていたかの記録を取っていた。


 「燃えていたのはこのチューブと配線の皮膜ですね。ショートしているんですが、痛みとかは感じますか?」


 「ピーピェー、ピーピピーピー(お主たちの言う痛みというのが判らぬが、その傷を受けてより、我の力が抜けていく感覚はわかる)」


 「はい、判りました。えっと、これって」


 中村梓が黒い塊状になった配線部分を指差して山本光雄に聞く。


 「ん」


 「判った買ってきて。董子ちゃんも一緒に行って」


 「うん」


 二人が手を拭いた後にホームセンターへと駆け出していく。配線と同じ物が無いか確認に行ったのだ。同じ物があれば交換出来る。無くとも、代替品を探してきてくれるだろう。そのために二人で行かせた。


 二人が戻るまでの間、壊れた部品の周りを洗浄する事と、外した部品の洗浄と調査を行った。


 「これ」


 吉田恵が一つの部品を差し出す。


 「出来る?」


 「やってみる」


 中村梓が聞くと、壊れた部品を修復してみるという。吉田恵は錬金術師だ。金属の合成や加工に適した錬金魔法を鍛えている。


 壊れた部品は二つに割れていたので、それを一つに戻すのだ。単純に接着剤でくっつけるのでは無く、元の単一部品の時のように状態を戻す。


 熱で溶かしてくっつけたり、溶接したりするとサイズや比重が変わってしまうので、指先で摘まめるような小さなパーツの場合は同一材料で削り出すなどした新しい部品を交換する方法が一般的なのだが、錬金魔法術師であるなら魔法で修復する事が出来る。


 地球は魔法の無い世界なので、地球の錬金術に魔法は使えないので同じ事は出来ない。


 錬金魔法のあるこの世界故の特別な能力だ。


 「ん」


 「へぇ、ほとんどがアルミ素材で、重要な部品がジュラルミン合金なんだ」


 ジュラルミンはアルミを基調に銅やマグネシウムを混ぜた合金だ。丈夫で軽量という特徴を持つが、銅が入ったために腐食耐性はアルミよりも劣る傾向にある。アルミよりは重いが、ステンレスと比べ半分以下の重さしか無いため、ジェット機や鉄道車両、船舶など幅広く利用されている。


 「やっぱ重さ対策なんだね」


 中村梓の言葉に岡田小梅も答える。


 「ん」


 「ああ、無くなった部品はほとんどアルミ素材なんだね。手持ちのアルミでなんとかなりそう?」


 「うん」


 「鉄よりは溶かしやすいから溶かして整えるんだ? 錬金魔法って凄いね」


 「ん」


 「比率が判ればジュラルミンも試して見たい? …それは後々必要になりそうだから、考えておいた方が良いよね」


 「うん」


 この二人の会話を聞いていた機械の鳥であるへブラクワイが興味を持った。


 「ピーェピーピー(お主たち。我らを形作る物質に対してなかなか造詣が深いようだな)」


 「え? そうですか? そちらの方が自分たちの身体の事なので詳しいのではないでしょうか?」


 「ピェ。ピーピーピーピェー、キュークェーピーピー(いや。我らは恵の丘の事でも判るように出自や自らの身体の事はほとんどが禁忌なのだ。動く事が困難な状況になれば、必ず恵の丘に入らねばならぬからな)」


 「貴方方の一族に関して聞きたいと思っていた事があるのですが宜しいですか?」


 「ピ。ピー(うむ。構わぬ)」


 「へブラクワイさんは空を羽ばたく事に特化していますが、その他の形態を持つ方々もいますか?」


 「ピーピーピェー。ピーェピーェピーピーピー(うむ。我のように空を飛ぶ者は少ないと言えるな。ほとんどが四つ足にて素早く地を駆けるか、大きな力を持っている者、小さくとも小器用な者などがいる)」


 「あぁやっぱり。それで、一族全体の存在意義と言いますか、何か目的はあるのでしょうか?」


 「ピーェ。ピーピーピーェ、ピーピーピーェ(ある、はずだ。我もまだ知らぬが、一族に命が下れば、それに全力を持って応えなければならぬと言う掟がある。その命が下るまでは状態を維持せよと言うのが一族のそれぞれの役割だ)」


 「なるほど」


 中村梓が納得した所で、山本光雄と斎藤董子が戻って来た。息が荒いのは走ってきたのだろう。


 二人が買ってきたのは電気配線用のコードを、太めの物から細めの物まで、色違いで多種多様な物だった。数は多いが一つ一つの量は少ない。それと、配線に被せる絶縁用のチューブや端子にする金具やハンダごてのセット。ワイヤーストリッパーからヒートガンまである。さらに熱に強いゴムチューブも各種取りそろえてある。


 「ん」


 さらに山本光雄が差し出したのは、機械の鳥であるへブラクワイの翼の中に仕込まれていた動く部品の一つだ。


 「これはアクチュエーターですか?」


 部品はビニール袋に入れられ、その口を二つ折りにしたボール紙に挟まれて封がされている。そのボール紙には色々と型番やら寸法やらが書かれている。つまり売っている製品だ。


 そのビニール袋を切って中身を取り出す。


 小指の半分の太さも無い筒状のピストンに見えるそれは、わずか一センチの幅しか無いが二十キロの物を持ち上げる力があるという。


 理論的に言えば、五本を並列的に並べれば百キロの重さを一センチ浮かせる事が出来る。直列的に繋げば二十キロの物を五センチ浮かせる事が出来る。

 実際は本体自体の重さなどの関係もあってそこまで単純でも無いが、指二本だけの力で百キロを動かすと思えばその力が判るだろう。


 ただし一つで二十キロは限界値で、使う電力も大きく、場合によってはコイルが焼き付いてしまう事もあるし、本体自体の構造もその運用に耐えられる強度は持っていない。


 なので通常は一つで五キロと言うのが正式な使い方だそうだ。


 そんな説明をスマホの鑑定で確認した。


 「これは面白いですね。これがあれば色々な物が作れそうです」


 「ん」


 だが、中村梓の言葉に山本光雄は首を傾けた。


 「え? 昨日までは無かった?」


 「ん」


 山本光雄によれば、おそらく機械の鳥であるへブラクワイをこの街に入れた事で販売されるようになったのでは無いか、と言う事だった。


 「あ、そう言う仕組みですか」


 「ん」


 山本光雄も、ココで自分たちが新しい物を作れば、ホームセンターでそれが売られるようになるかも知れない、と言う可能性を指摘した。


 「んー、とりあえずこの事は後で佐藤君に報告する事にして、先ずは修理を済ませる事を考えましょう」


 別のテーブルを出し、買ってきた物をぶちまけて、それぞれが勝手に使うという形式で作業が再開された。


 しかし全体的な流れは中村梓が取り仕切っているので、作業が重複する事が無く、最適に近い速度で修理が行われた。


 「外側の羽はまだ作っていませんが、中の仕組みはほとんど直ったと思います。一度動かしてくれませんか?」


 中村梓の言葉で、機械の鳥であるへブラクワイはテーブルの上に二本の足で立ち、両翼で横幅三メートルはある翼を広げてみた。そして軽く羽ばたいてみる。


 「ピー。ピーピーピー。ピェーピーピー(ふむ。我の感覚では問題は見受けられない。後は実際に飛んでみての確認だな)」


 「はい。それじゃ、外側の羽を付けていきましょう。もう一度伏せて、翼を広げてください」


 破損した骨組みに同じように作った骨組みを合わせ、それを錬金魔法で融合させて修復し、そこに羽の一枚一枚をネジ止めするという作業に切り替える。


 一番の問題は羽の作成だった。


 破損した部分だけでは無く、他の部分も、おそらく経年劣化も含めて消耗している物や失われている物も多く、それらも一枚ずつ作成して小さなネジで固定していく作業が続いた。


 アルミ素材を薄く精錬魔法で伸ばし、羽と同じ厚さにしてから大凡で切り出し、錬金魔法で同じ形に錬成する。


 羽の自作は錬金術師の吉田恵と斎藤董子が担当し、他の三名は作られた羽を取り付ける作業を担当した。


 小さなネジは自作も可能だったが、ホームセンターに売っている物を買ってきて済ませた。


 そして本日の夢の時間が終わりに近づいてきた時に、やっと作業が終了した。


 「ピーピェー。ピェーピーピーピーィエ(全ての羽が揃った。何と喜ばしい事か。本来は恵の丘にて全ての記憶と引き換えに成される事なのだ。感謝の言葉しか無い)」


 「それじゃ、最終確認ですね。実際に飛んでみてください」


 「ピー(うむ)」


 工房から自らの足で歩いて出たへブラクワイは翼を広げ、アスファルトの道路を駆けて走り、勢いがついた所で翼をはためかせた。


 始めは地面を叩いたが、二度三度と羽ばたく内に身体は浮き、そして本格的に飛び上がった。さらにせわしく羽ばたき、高度を取ると、今度は羽を広げたままゆっくりと旋回する。そして偶に羽ばたき、高度を維持して、また滑空すると言う飛行を続ける。


 「上手く行っているようです」


 「ん」「うん」「ん」「ん」


 吉田恵の言葉に頷きだけが返るが、これでもそれぞれがかなり感動している。常人なら拍手しながら飛び跳ねてはしゃいでいる状況だ。


 暫くして機械の鳥であるへブラクワイが滑空して戻って来た。そして一度大きく羽を羽ばたかせて地面に降り立つ。


 「ピーピー、ピェーピェー(再びこのように飛べるとは思わなんだ。重ね重ね感謝する)」


 「それで、実際に飛んでみて不具合とかはありませんでしたか?」


 「クエー、ピーピーピーピェーピェー(大凡では不具合など無いが、贅沢を言えば、直して貰った左の方が力が強く感じたのだが)」


 「ああ、なるほど。おそらく新品のアクチュエーターとオイルの所為だと思います。動作バランスが悪いのでは直したとは言い切れないので、宜しければ右も同じ部品に変えたいと考えますが、いかがいたしますか?」


 「ピェ。ピーピェ。ピーピーピーピェピー(う、うむ。これ以上の世話になるのはいささか心苦しいのだが、お願いできるだろうか?)」


 「はい。喜んで。あっ」


 居酒屋か! と突っ込みたくなるセリフは中村梓の気づきで吉田恵に向く事になった。


 「もうすぐ時間だよね?」


 「うん。…じゃ」


 中村梓の言葉に同意してから、吉田恵は斎藤董子、岡田小梅、山本光雄の方に向貴直る。


 「…うん?」


 「ん」


 「ん」


 「だね」


 「判った。あず」


 「うん」


 セリフの順番は、吉田恵、斎藤董子、岡田小梅、山本光雄、吉田恵、中村梓だ。


 最後の結論を受けた中村梓はスマホを取り出して佐藤一に電話をかけた。


 「あ、佐藤君? 中村だけど、ちょっと相談があるんだけど」


 『お? 修理に問題があったか?』


 「そっちはほぼ終わったんだけど、左右でバランスが崩れたから、部品交換とかで調整しようかと思って…」


 『問題が無いなら、少し待ってくれ。今、ゼロツーたちのパーティから生産組に依頼があった。今からそっちに行く』


 そこで電話は切れた。


 「なんか、佐藤君たち、こっちに来るって」


 「「「「?」」」」


 生産組の疑問も解消されないまま、暫くして佐藤一たちが現れた。それもゼロツーたち五人も引き連れて。そしてなぜ生産組に用があったのかも直ぐに判明した。


 「見て判るように、このバイクモドキの仕組みを解明して、使いやすいモノを作って貰いたい、と言う依頼だ」


 佐藤一が完結に話す。


 「ハンドルを握ると魔法の杖のように魔力供給されて、それで走るようなんだが、サスペンションも無いし、クッションになる構造も全く無い。尻を乗せて運転する構造じゃ無いみたいでな。移動手段としての動力部分は役に立ちそうなんで、なんとかなるか聞きたいと思ったんだ」


 ゼロツーこと村田伶治が代表して説明する。


 「お預かりするのはいいんですけど…。佐藤君、相談があるんだけど?」


 「さっきも言ってたな。どんな?」


 「時間延長の宝玉ってあったよね? あれ、いくつある?」


 「あー、確か五、六個あったな」


 「それ、使わせて欲しいんだけど」


 「え?」


 中村梓の説明によると、生産は時間がかかるし、一つに集中する時間がかかる作業が多い。もちろん短時間で済む作業も多いが、研究や試行錯誤の開発となると時間はいくら有っても足り無い。


 そこで皆に先んじて時間延長の宝玉を使い、開発に注力したいと言う。さらに今回は依頼が重なり、時間が足り無いという事情もある。そのため、人柱という実験体になる覚悟でプラス八時間を使いたいと申し出た。


 「うーむ。どうするか」


 悩む佐藤一。その横では機械の鳥であるへブラクワイをスマホで撮影しまくっているゼロツーたちがいた。川端信や綿貫光洋たちも撮りまくっている。


 「ピー。ピェーピーピーピェー(ふむ。其方たちが会ったのはケモノ人の鶏人族であるな)」


 「ここの草原にはあのような種族が多く住んでいるのか?」


 「ピーピィーピーピーピェー、ピーピー(草原はいわば逃げた先であるな。我らは草原で生まれたが、彼奴らは彼奴らの世界より逃げてきた者たちなのだ)」


 「逃げてきた、か。なら元の世界があるんだな」


 「ピェー、ピーピーピー、ピェー(彼奴らは元の世界に戻る事を一族の願いとしていると聞く)」


 自分が仲間たちのために真剣に考えている横で、ドンドン重要な情報が出てくる状況に佐藤一は嘆息する。


 「はぁ。判った。一応陽平と相談して、それから使ってくれ。どうせ俺たちもいつかかは使う予定だったしな」


 斎藤始めも早く機械の鳥であるブラクワイと話したいと思ったが、我慢して陽平に連絡を入れる。


 「陽平? 今大丈夫か?」


 『大丈夫だ。問題無い』


 「いや。装備の話では無くてな。生産組の連中が一足先に時間延長の宝玉を使いたいそうだ。開発に色々時間がかかるってな」


 『そうか。なら俺たちも一緒に使ってみる事にする。丁度こっちにも三つあるしな』


 「おい。まだ検証も出来てないんだぞ?」


 『俺たちが検証だ。もともとココはそう言う世界だろ』


 「それはそうなんだが」


 『生産組だけを置いて帰れないからな。じゃ、結果は学校で』


 それで直ぐに切れた。


 結果を生産組に言い、時間延長の宝玉を中村梓に五人分渡す。


 「はい。確かに受け取りました。早速使って見ます」


 中村梓は他の四人にも宝玉を渡す。


 どんな使い方をするんだろうと佐藤一が疑問に思うが、使用するという意思を持って握れば良いだけのようだった。


 そしてあっさりと発動は終わった。


 「結構簡単に済むんだな」


 時間延長の宝玉を使うと言う事で村田伶治たちも凝視していたが、そのあっさりとした結果には拍子抜けしていた。


 「所詮は通過儀礼の一つという事なんだろう。取って当たり前、取れなければ遊ぶ時間が短いからガンバレって取れよ、と言う意味しか無いんだろ」


 川端信の言葉は本質を突いているように聞こえた。


 村田伶治たちの会話に疑問を持ったへブラクワイが質問してきたが、それには綿貫光洋たちが答えていた。


 そこで村田伶治のスマホがアラームを鳴らす。


 起きる五分程前にセットしたアラームだ。


 「なんだ?」


 「目覚ましの五分前にセットしておいたアラームだ。本当に五分後に目覚めるならこれからも使えそうだしな」


 「八時間延長でも有効かが問題だが、それは彼らの結果待ちか」


 それから五分後。佐藤一たちや村田伶治たちはこの夢の世界から消えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ