55.醜聞(ゴシップ) 1
――1カ月半後。
朝、ローズが店に来るとポストに手紙が1通とA4サイズの封筒1つが入っていた。手紙の印字は隼に短剣のラファル家の紋章であり、差出人名はレオナール・ヴァン・ラファルと書いてある。もう既にレオナールとの手紙のやり取りは優に30通を超える。案外筆まめなのだと知った。
(だからモテるんだろうな)
平民でもそうだが、手紙をまめに書く男性はモテていた。筆無精は初めモテはやされていても、後々モテなくなっていく。相手を気にかけるかそうでないかは重要なのだ。
レオナールからの手紙は、初めの1通目以外は店に届いている。1通目は母親から見つかってしまい、揉めた。2通目以降は店に届いている為、問題は起きていない。店に届いた手紙は、ひっそりと自室の机の中へと仕舞っている。
(こっちは……?)
封筒には差出人名も住所も書いていなかった。封筒を触ると本が入っているようだ。封を開けると週刊誌が3冊入っていた。
週刊誌はたまに流し見する程度である。芸能関係のゴシップを見るためだった。
(なんでこんな物が?)
不思議に思いつつもページを捲り、見出しを見て目を見開いた。
【ラファル家次期当主、レオナール・ヴァン・ラファル。不仲と噂される婚約者、レティシア・ヴァン・タンペットと仲睦まじく卒業パーティーへ出席!】
該当のページまで捲って、その記事を読んだ。
【女性関係が派手なレオナール様(18)。レティシア嬢(15)との不仲説が囁かれていたが、カプリコルヌの月上10日に行われたヴェストリ騎士学校スフェンヌ校の卒業パーティーではレティシア嬢を連れて参加。
最近では平民とも噂され、結婚は危ぶまれていた。しかし、ポワソンの月下1日にレティシア嬢は16歳を迎え、結婚式は予定通り月下15日に行われる模様。
「2人の不仲説は噂ですよ。ずっと仲は良いです。レオナール様が女性関係が派手だとも言われていますが、実はそうじゃないんです。元々レオナール様はレティシア嬢が好きでした。なのでレティシア嬢と一緒にいるのが恥ずかしくて、他の女性と共に行動をするんです。あれは、一種の照れ隠しなんです」(ヴァンの貴族関係者)
卒業パーティーを終えたレオナール様に話を聞いた。
――レティシア嬢とは上手くいっていますか?
「上手くいっていますよ」
――最近では平民とも噂がありましたね?
「私が平民と? 有り得ない。噂は所詮噂でしょうね」
――結婚はどなたとしますか?
「勿論レティシア嬢とです。他の女性となんて考えられない。彼女を愛しているので」
ラファル侯爵は「週刊フレーズプランタン」の取材に対し、「プライベートのことは本人に任せています」と回答した】
貴族は度々ゴシップ記事のネタになっていた。
ローズは貴族関係のゴシップより、芸能関係のゴシップの方が好きだったため、今までそちらばかり読んでいた。なのでレオナールのことが書かれていたことも知らなかった。
「嘘だよね……週刊誌に書いてあることなんて……」
卒業パーティーに呼ばなかったのは、こちらの仕事に配慮して呼ばないと言われた。だが実際はレティシアを呼んでいる。
深く深く溜息を吐いた。会えないことがもどかしい。何か理由があったのなら知りたい。
【愛しのローズへ】
【元気にしているか? 他の男に目移りしていないか? それはさておき、卒業試験に合格した。これで晴れて自由の身だ。これから卒業パーティーがある。この手紙を読んでいる頃には、もう終わっているな。1人での参加は寂しいものがあるが仕方がない。
それと、今王都に行く準備をしている。しばらくはホテル住まいだ。前にローズも泊まったスレイプニルに滞在する。ヴェルソーの月上旬にそちらに着く予定だ。また連絡する】
【愛を込めて、レオナールより】
綺麗な質のいい紙に綺麗な文字で書いてあった。初めてレオナールからの手紙を開いた時「字、うまっ」とつい独り言を言ってしまったくらいだった。
「何が【1人での参加】よ。レティシアさんと参加してるじゃない」
ローズは週刊フレーズプランタニエを閉じる。他に入っていた先週の週刊ファムと先々週の週刊ヌーヴォーマレを取り出して読んだ。週刊ファムには【レオナール様、領地で仲良く手繋ぎデート】と書いてあり、週刊ヌーヴォーマレには【仲睦まじくピクニックを楽しむ2人】と書いてあった。どれもレティシアとの関係に関するものだった。
不安が募る。
(やっぱり全部嘘だったのかな……大事な人はレティシアさんで、私を愛してはないのかな……違うって信じたい……)
だがウジウジしていても仕方がない。ローズは開店準備をし、空いた時間で急いで手紙を書いた。




