12.騎士学生との関係は
次の日――。
「その、さ。あの騎士学生とはどういう関係なの?」
朝、ロイクが花を持ってきた。そして伏し目がちに聞いてきたのである。
(どういう関係……)
特に何か関係がある訳ではない。
「なんだろ……」
「友達ではないよね」
「違う」
「何で収穫祭一緒にいたの」
「それは……私から収穫祭に誘った」
あの日の収穫祭は、ローズがら誘ったことにはなる。その前からデートには誘われていたが――。
「ロ、ローズから!?」
「一応そう。でもその前から誘われてはいて――」
「え!?」
「それで、収穫祭に誘った……ことになるのかな」
「……そう。それで、腕まで組んで……」
がっくりと肩を落とし、絶望した表情で床を見つめていた。
「ロイク?」
「そっか。ローズはああいう男が好きなんだね」
「え……はぁ!?」
「いいんだ。分かったよ。イケメンで小説の主人公みたいだ。あの人と幸せに――」
「何言ってるの!? 好きじゃないよ!!」
「でも――」
「好きじゃない! あの日遊んだのは……その、何回も言い寄られてもう面倒だから1回遊んでおこうかなって思っただけで特に何とも思ってない!」
慌てて否定し、ロイクの誤解を解こうとした。するとロイクはほっとするように安心し、「良かったぁ」と呟いた。
「もう……はい。納品間違ってないよ」
「分かった。あ、それとローズに謝らないと行けないことが……」
「何?」
「騎士学校の剣術大会チケット取れなかったんだ」
「え?」
最近レオナールのことでいっぱいで、すっかり忘れていた。
「販売して直ぐ売り切れちゃったみたい」
「あー、精霊称号の貴族が出るってやつだっけ?」
「そう。父さんが2枚買ってたから譲って欲しかったんだけど、父さんも観戦したいみたいで」
「大丈夫だよ私は。特に興味ないし」
「……でも僕はローズと一緒に行きたかったなと思うんだ」
「ありがとう。私は本当に大丈夫」
「……うん」
ローズはさほど剣術大会に興味が無い。特に行けなくても別に構わない。
「あと次のニニブの日。なにかある? よかったら出かけない?」
「あ、ごめん。その日は予定があって……」
午前中は図書館、その後はレオナールと舞台を観に行く予定である。
「そうなんだ。じゃあまた今度出かけよ」
「うん」
ロイクは残念そうに店を出て行った。
(そう言えば今日はレオナール来ないのかしら?)
来るのであれば頬にキスしたことを文句言ってやりたい。だが、レオナールは来なかった。
それは今日だけでなく、ずっと来なかったのだ。