表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/66

第8話 おすすめ品を全部買っちゃう

 丸戸は一晩かけてユニークスキルを検証していた。


 現時点で知り得たことは、お金は日本円だけでなく、ガレルも使用できること。入金するだけでなく、出金もでき、その際、強く意識することで通貨も選べる。


(仮に、日本に戻れる方法があって、こっちで億単位のお札を出金させて帰還できるだろうか? 偽札を持ち込んだとして捕っちゃうか?)


……と、どうでもいいことまで考えてしまうほど、高揚していた。



 商品だけでなく、他の道具も升目に移動して、出し入れできることもわかった。

 ゲームでよくある、インベントリやアイテムボックスみたいなもの。


 最下部の右端には箱のようなマークがあり、予想するまでもなく、ゴミ箱機能ということも確認した。

 日本で買った商品の包装紙や容器が捨てるに捨てられず、小さな皮袋にまとめて所持したままだったので、ゴミ箱機能があって助かった。


 買った商品は、返品できない。また、1度購入した後、さらに追加で買うこともできなかった。なので、湿布薬は初めに買った1点のみである。

 ヨーグルトとバランス栄養食は最大数の10個購入。

 ヨーグルトは常温保存できないので、後で一気に食べることになるかもしれない。



 買い物ができなくなり、やることがなくなった。


(時間が経てば補充されるのか、買えなかったものも再び買えるのか?)


 気になることはあるが、何をしたらいいか思いつかず、少し横になって睡眠を取ろうとした。

 しかし、夕方まで寝ていたし、興奮していたせいもあり、寝付けなかった。




 再び寝ることはせず、そのまま食堂で朝食を済ませる。今日はギルドへは寄らずに東門を出て、直接、薬草採取に向かうつもりだ。


 買い物すればお金は減るばかり。商品をこっちの世界の人に売ることができれば、生活しやすくなるけれど、今回買ったものは売りにくい。

 足腰はまだ痛むが、昨日丸一日休んだので、少しでも収入を得たいという気持ちが強かった。




 長距離移動で、帰りは疲れて動けなくなるのも困るため、1時間ほど街道を歩き、そこから草地に入る。

 もう少し手前で採取したかったが、他の人が見えたため、少し距離を取ったのだ。


 やはり街道近くには、対象の植物は見当たらない。街道から魔物と間違えられて攻撃されることを警戒し、200メートルくらい歩いたところで各種薬草を採取する。



 4時間ほど移動しながら採取をしたが、前回よりも収穫量は少ない。町から徒歩1時間圏内では、やはり見つかりにくいのだろう。


 座るのにちょうどいいサイズの岩を見つけ、そこに腰を下ろす。

 アイテムボックスからヨーグルトを取り出そうとしたら、画像の部分が変わっていた。

 初めてみたときは黒い布に見えたけど、明るい屋外にいるためか、少し透けている。


【石鹸 150】【歯磨きセット 200】【ボディーシート 200】



(時間はわからないけど、毎日更新されるのか? この3つが表示されるって、そんなに不潔な状態だったんだろうか?)


 歯磨きは元々所持していた歯磨き粉の容量が少なくて、1日1回しかしていなかった。

 身体もシャワーを浴びるだけだった。

 自分の汚れっぷりに、納得してしまう丸戸であった。


 問題は、何をどれだけ買うか?

 買いそびれるともう入手できないかもしれない。そう考えると全部買いたい。


「お金に困ったら、石鹸なら他の人にも売れるんじゃないか? あの時買っておけばと後悔するくらいなら、全部買っちゃうか……」


 価値の無いものだと思ってた日本円が、2万3千円ほどあった。そのぶんを日用品の購入に当てても良い。

 丸戸は自分に言い聞かせるように、表示された商品をすべて購入するのだった。



 そしてヨーグルトを一つ取り出す。まだ冷えた状態だった。昼食にバランス栄養食のソフトクッキーとヨーグルトを食べ、採取を続ける。

 町から遠ざかるように東方向へ進み、3時間ほど採取して町に戻った。



 7時間採取したが、前回より数が少ない。ギルドで鑑定された結果は、5900Gであった。


(まぁ、そうだろうとはわかってたけど、厳しいなぁ)


 採取時間と移動時間を合わせると、9時間半ほど。時給計算してしまうと、金額の低さに心が折れそうになる。


(あいつらの保身のために自分が犠牲になるなんて、やっぱりおかしい。お金を要求すればよかった……)


 なんで自分がこの程度の額を稼ぐために、半日近くもがんばらないといけないのか、憤りを感じるのであった。



 夕飯は宿の食堂で取ることにした。シャワーを浴びてからと思ったが、昨日もまともに食事していないので、荷物を部屋に置いて食堂へ。

 普段は500Gと安いメニューしか頼まないけど、今日は奮発して800Gのステーキセットだ。

 単純に焼いただけの牛らしいステーキは、ボリュームがあり、それなりに美味しかった。ここまで節約してばかりだったので、お腹も心も満足した夕食だった。



 部屋に戻ってシャワーの準備をする丸戸。

 アイテムボックスを表示させると、画像が更新されていた。


【靴下 100】【軍手 100】【ゼリー飲料 100】



「今のおすすめはコレってことなんだろうけれど、どういう基準なんだ?」


 軍手はちょっと考えたが、他の仕事で役に立つことがあるかもしれないと、全部10点買い。

 改めて石鹸を取り出すと、3個で1セットだった。つまり石鹸を30個所持している。


「さすがにこんなにはいらないだろう。毎日買い物していたら、採取の仕事だけじゃお金が足りない。石鹸を少し売るか?」


 とりあえず石鹸を一つ持ってシャワールームへ入るのだった。




 翌日、疲労はあるものの、直接採取へ向かう。

 今回は西門方面と同様、東門方面も町から2時間ほど離れたところで採取をする予定。


 ヨーグルトは相変わらず冷えたまま。丸戸のユニークスキルは時間経過しないアイテムボックスのようだ。

 朝食後にヨーグルトを食べ、新しい靴下を履いて出発。



 鐘が鳴る前に東門を通過。数分歩くと、街道から少し離れたところで採取している人がチラホラ見える。

 冒険者になったばかりか、早朝に少し小遣い稼ぎをして、別の仕事をする人たちなのだろう。


 2時間ひたすら歩いて、草地に入る。

 目利きでどのあたりに価値のある植物があるか試してみたが、見渡しただけでは判別できなかった。


(そこまで都合の良いスキルじゃないか)


 軍手をはめていつものように採取をしていく。



 黙々と採取すること4時間。西門で採取したときよりも多く採取できた。

 休憩できそうな場所を見つけ、昼食のついでにおすすめチェック。


【ゆで卵 50】【食用塩 90】【缶コーヒー 40】



 安い商品ばかりだったので、とくに考えずまとめ買い。

 たった今買ったものと、バランス栄養食、ヨーグルトを出す。

 塩は小瓶に入ったありふれたもの。缶コーヒーは特定地域で販売されているのか、見慣れないデザイン。


 皮袋に入った水で手を洗い、久々にゆで卵に塩をかけて食べる。50Gで買えるものが、こんなに美味しいとは!

 味わって食べるつもりが、夢中になってしまい、あっという間に食べ終えてしまった。


「よしっ、後半もがんばるか!」



 昼食に満足し、リフレッシュできた丸戸は、採取に精を出す。

「わざわざ遠出して来たんだから」と、ギリギリまでがんばり続け、町に戻った。


 アイテムボックスのおかげで、荷物は最低限持つだけで良い。

 採取したものも劣化しないので、いったん部屋に戻る。


 すでに日没となり、外は暗かった。この時間帯にギルドに行っても待たされるので、部屋でしばし休憩。

 ついでにおすすめが更新されているかと確認したら、更新されていた。


【下着 150】【肌着シャツ 200】【スポーツドリンク 100】


 下着とかは召喚された日にもらったものを使いまわしていたけど、こまめに洗濯してないからなぁ……と、迷うことなく、全部購入。


「う……今日もおすすめだけで6千Gも使ってしまったか」


 丸戸は日本にいたときは、下着なんて5~6枚しか持っていなかった。もう購入できないかもしれないという心理が、判断に影響しているのは間違いないだろう。



 報酬を受け取りにギルドへ向かう。

 日没後でも大きな通りの店から明かりが漏れ、人もまだ多く出歩き、危険は少ない。

 ギルドの中も人はまだ残っていたけれど、これくらいならそんなに待たずに済みそうだ。

 丸戸の順番が回ってきて、「あまりは処分で」と告げて、今日の収穫品を提出する。


 量が量だけに、鑑定するのに時間がかかっているようだ。西門で採取したときよりも倍以上あった。

 担当するギルド職員が戻ってくる。


「お待たせしました。本日の報酬がこちらです。ご確認ください」


 買取内容を聞いて、2万4800Gを受け取った。


「薬草採取で1万Gを稼ぐ人はたまにいますが、2万G以上は滅多にいないですね。品質も良いものばかりで、すばらしいです」


 ギルドの職員さんに、褒められてしまった。

 ちゃんと時間を確認していなかったけれど、移動時間も含めて約12時間ほど。時給にすると2千G。


 心の中でガッツポーズする丸戸であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ