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第6話 冒険者で初報酬

 丸戸は日の出とともに起床。身支度をして部屋を出る。

 食堂で朝食を終えると冒険者ギルドへ向かった。

 まだ朝の6時を過ぎたところだが、町の人々も何かしら行動をしている。


 早足で移動中、遠くから鐘の音が聞こえた。太陽が地平線から完全に登りきった合図だ。

 この鐘の音が朝の仕事を始める合図としているところもあり、冒険者ギルドもその一つである。



 丸戸が冒険者ギルドへ到着したときは、すでに人がいっぱいだった。好条件の依頼を取り合っているようだ。

 Gランクの依頼がある掲示板は入り口から右手にあった。

 人が密集している場所から少し離れている。


 冒険者全体に占める割合では、Gランクは少ないのだろう。他のランクに比べると掲示板を見ている人が少ない。

 ちょうど目の前にいた緑のローブを着た女性が掲示板の前から去って、前が開いた。

 丸戸は自分にもできそうな依頼を確認する。


 町のお店の雑用、街道の整備や城壁の修復の手伝い、各種薬草採取などがあった。

 雑用は2千G、街道と城壁は4千G。採取は種類に応じて1点あたりで1千Gのものもあれば、50Gなんてものまである。

 雑用以外は常設依頼と呼ばれ、ギルドに立ち寄らず、直接現場に行って仕事をすることができる。


 丸戸は一つ上のFランクの掲示板も確認する。

 こちらは付近の村での雑用、魔物の駆除や素材採取などがいくつか残っている。

 地理はまったくわからないし、ろくに武器や防具を持っていないため、Fランクの依頼は厳しい。


(町のお店の雑用がもう少し報酬が高ければなぁ。2千Gじゃ、宿代にもならない。しょうがない、採取をガッツリがんばるか!)



 一度部屋に戻り、採取用の道具をリュックサックに入れ、鍵を閉め宿屋を出た。

 ギルドの身分証を見せ、西門を通過。街道の脇の草地を見ながら歩き続ける。


 街道は道幅が広く、凹凸も目立たず、歩きやすい。

 町に近い場所では、すでに何人かが採取をしているようだ。


(町のすぐそばの街道で、薬草類がそんなに簡単に見つかるもんじゃないか?)


 早足で2時間くらい歩けば、10キロメートルくらい進む。薬草を採取するためにそこまで歩くやつなんていないだろう?

 丸戸はそう考えてひたすら歩いた。



 エンフェルデの王都ブレモントは高い台地の上にあり、町の周囲は平原である。

 街道を通らず、急な斜面を上ってくる魔物も少ないため、他の町に比べると危険は少ない。


 西門を出て2時間が過ぎたところで、街道から離れて草地に入る。

 くるぶしを隠すくらいか、膝下あたりまでの草原が広がっていた。


 ミハエルと一緒に採取した植物はしっかり覚えている。記憶と照らし合わせてじっくり見ていくと、見覚えのある草があった。

 ナイフを手に取り、教わったとおり根ごと切らず、丁寧に葉を切り取っていく。

 葉の部分だけ刈れば、数日後にはまた新しい葉が生えるらしい。


 目利きの効果か、質が良くないものはなんとなくわかり、そちらは見送る。

 途中、小休憩を取り、街道から少し離れた地点でウロウロしながらひたすら採取。


 街道に近すぎると、魔物に間違えられて攻撃される可能性があった。かといって、街道から離れすぎるのも危険。

 以前、馬車で同乗したミハエルに教わったとおり、街道からは200メートルくらい離れて、採取し続けた。



 4時間近く経ったところで、採取を終了。これから2時間、いや、ギルドまでとなると3時間ほど歩くことになる。

 往復6時間歩いて、4時間の採取活動。初日から張り切りすぎたか?

 また延々と歩くことを想像すると憂鬱になるが、今日の成果がどれくらいになるかを楽しみにすることで、黙々と歩き続けた。


 西門に着いたときはすでに夕方遅くで、ギルドには依頼の報告で列が出来ている。


(早く休みたい……)


 この待ち時間も、歩くのと同じくらいつらかった。



 茶色っぽい髪をした小柄な男性が目の前から去ると、やっと丸戸の順番になり、採取したものを提出する。

 ギルド職員さんの想像より採取したものが多かったのか少し驚かれたが、査定するためにバックヤードへ引っ込んだ。

 しばらくして戻ってくると、報酬の内訳を伝えてくれる。


「これらの素材ですが、あまったぶんの報酬は支払えません。どういたしますか?」

「そちらで処分しちゃってください」


 素材には規定の数をそろえて一組として査定されるものがあり、丸戸は数を数えながら採取していたわけではなかった。当然あまりが出ると思っていたので、報酬にならなくてもショックはない。


「それでは、こちらが報酬となります。ご確認ください」


 ミハエルと採取したときによく取っていた傷薬になる薬草が50Gで、採取数が一番多かった。

 他の薬やポーションの材料となる植物も五種類ほど採取しており、受け取った報酬の合計は9700G。


 4時間の採取で1万G近くなら、日本の時給で考えるとかなり高い。

 でも移動で歩いた時間も往復で4時間。合計8時間で約1万Gと計算すると、そこまで高いとはいえない。

 しかも今日採取した場所は、しばらく採取できない。もっと遠くに移動するか、方角を変えるか。

 それに毎回これくらいの報酬になるかどうかも賭けである。


 移動時間を今日の半分くらいにしたら、どれだけ採取できるだろうか?


 丸戸ができるGランクの他の依頼を見れば、日給で4千Gがいいところ。

 初日で約1万Gはかなり良い結果なのだが、何時間も歩いた割には……という思いが強く、素直に喜べない丸戸であった。

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