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第50話 初めての護衛依頼

「こっちは東の森の魔物素材や珍しい植物の素材採取だわ」


「これは盗賊の拠点捜索と殲滅だ。ゴブリンの集落のときより条件は良いけど、3人だと厳しいな」


「募集定員が埋まらないのか、いくつか商隊の護衛の依頼が残ってるね」


「護衛か。行ってみたい町があるなら、その依頼受けてみようか?」


「Eランク1人しかいないパーティーでも、受けられるかしら?」


「人数不足なら受けられるかもしれないね。行きたい町があったら、聞いてみようよ」


 フロストがEランクに昇格したので、どんな依頼があるのか、みんなで掲示板を見ていた。

 ギルドの規定ではひとつ上のDランクまでの依頼を受けられる。

 丸戸はGランクであるがパーティーに所属しているので、Dランクの依頼を受けることもできる。

 ただし、依頼主の判断によっては拒否されたり、報酬が減額されることもある。



 依頼を受けられそうな商隊の目的地は、この国の王都ブレモントとその手前の町。西側にある国境付近の宿場町とロゼイア国王都サンロードまでの4件。


「ロゼイアと宿場町は同じ方向だね。あとはブレモント方面だから、どっち方向にする?」


「ブレモントよりロゼイアの方がいいんじゃない?」


「そうだなあ。あとは宿場町か王都の違いか……」


「宿場町のほうが近いけど、そこだとあまり依頼はなさそうだよ」



 宿場町を拠点とする冒険者は、元々付近の出身者くらいである。

 クリフという宿場町で1か月ほど過ごしていたので、依頼も低ランク冒険者向けのものが多いことは知っていた。

 ロゼイア国サンロードに向かう商隊の護衛を選択するのに、それほど時間はかからなかった。



 受付で依頼内容を詳しく聞くと、馬車10台を率いる商隊の護衛で、まだ予定より人数不足な状態だという。

 Eランクが1人しかいないパーティーでも受けられるか尋ねると、「魔物の討伐実績がほとんどなければ難しいですが、みなさんなら問題ないですよ」とのこと。


 依頼料は基本給が1日2万G、成功報酬5万G、宿や食事は依頼人が負担するが、野営となる日のほうが多いそうだ。

 冒険者が集まりにくいのは、10日間から半月ほど時間を取られるわりには、報酬が安く感じしてしまうからだった。

 最短の10日間で報酬は25万G。町の近くの森で魔物を討伐したほうが稼げるので、その報酬では悩むだろう。



 丸戸たちは町への移動のついでに依頼を受けるという形なので、報酬にはそこまで執着していない。

 受け付けてもらえるならと、護衛の依頼を受けることにした。

 このまま依頼主と会って顔合わせをするそうで、別の職員に案内され、依頼主の元に向かった。


 西門付近にある倉庫の前まで来ると、ギルド職員が中に入っていった。

 依頼主の商会が所有する倉庫のようだ。

 数分後、やや中年太りで少し日焼けした40代男性と一緒に戻ってくる。

 依頼主の商人デニスだった。ギルド職員に紹介され、挨拶をする。


 デニスはEランク冒険者の3人パーティーと知り、顔には出さないものの、はじめは落胆した。

 しかし、「町付近の魔物の討伐に関しては、並のDランクよりも秀でている」というギルド職員の言葉に安心したようだ。

 これで他のパーティーと合わせて12人の護衛が集まった。予定通り明後日の早朝に出発するという。


 丸戸たちは翌日も森に入り少し狩りをし、1人12万G強の報酬を受け取ると同時に、ここでの魔物討伐活動を終えることを告げた。

 ポーションなど必要なものを買い揃え、明日の出発に備えるため、早めに就寝する。




 早朝、待ち合わせ場所の西門付近にある倉庫前に移動。

 すでに数台の馬車があり、従業員が荷物を積んでいる。

 馬車から少し離れたところにデニスと数人の従業員がいて何か話していたが、丸戸たちの気づいたようだ。 


「おはようございます、デニスさん。今日からよろしくお願いします」


「おはようございます、『疾風迅雷』の皆さん。出発までもう少し時間がかかりますから、その間、同行者を紹介しますね」


 商会で働く男性4人が紹介される。2人は30代で、残りは20歳前後。デニス含めて商会の者5人と御者が10人。

 冒険者は12人で、総勢27名の一団だ。

 話をしている間に、他の冒険者パーティーもやってきた。


 全員そろったところで、改めて依頼内容の確認や日程などがデニスから説明される。

 積荷は武具が多く、野営用具、ポーション類、酒や乾燥肉などもある。

 その後、パーティー同士でも自己紹介しあう。



「俺たち5人は『明星の守護』、俺がリーダーのアルバだ。Cランクで剣を使う。そっち側から盾役のロッコ、鈍器使いのクツカ。こいつらもCランクだ。弓と短剣の使い手ボリ、主に火属性の攻撃魔法を使う魔術士のミラがDランクだ」


 平均年齢30前後で、女性魔術士が1人のパーティー。

 Cランクの3人は190センチメートル前後で身体がゴツイ。弓使いと魔術士は160センチメートル以上あるが、より小柄に見える。

 自己紹介で主武器やランクを伝え、役割分担の参考にするようだ。

 続いて4人組のパーティーが自己紹介する。


「『草原の大牙』のリーダー、ハイメ、Dランクの槍使いだ。こっちの2人が剣使いのククレにロドリゴで同じくDランク。こいつがFランクのニヨンで弓使いだ」


 こちらは全員が男性でリーダーが20代後半、残りは20代前半かそれ以下のように見える。

 近接武器の3人は170から175センチメートルあたりで、筋肉質ではあるが細身だ。

 彼らよりも小柄な弓使いがFランクなのは、遠距離から攻撃できる人員がいないため、勧誘したのだろう。



「『疾風迅雷』のリーダ、レイです。Gランクで主に槍を使います。隣にいるのがフロスト、Eランクで双剣の使い手で、その隣がFランクの魔術士リナ。火と石の攻撃魔法が得意です」


 リーダーがGランクで、パーティー内で最高がEランク、しかも3人。

 直接口に出すことはないが、「こいつら大丈夫かよ……」という不安な表情をする者は少なくなかった。



『明星の守護』のリーダー、アルバが他のパーティーに向かって話しかける。


「うちが一番人数多いし、護衛の任務にも慣れている。護衛に関する全体の指揮を任せてもらうがいいだろうか?」


 丸戸たちはもちろん、『草原の大牙』の面々も異論はなかった。


 護衛も全員馬車に乗って移動するため、配置が割り振られる。

 馬車の数は10台と多いが、冒険者が乗れるスペースもある。

『明星の守護』が先頭と3番目の馬車に分かれて乗り、『草原の大牙』が最後尾。『疾風迅雷』は6番目の馬車に乗ることで決まった。


 各自の荷物も馬車に積まれた。短期間で往復できる依頼なら不要なものは持ち込まないが、長距離移動でこの町に戻るかは不明。

 そういった冒険者は所有物をすべて持って移動する。


 何者かに襲撃された際、どう行動するべきか確認しあい、馬車も準備が整ったので、朝一番の鐘がなる前に出発した。

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― 新着の感想 ―
[一言] なろう小説だと「はぁぁ!? Gランクがリーダーで、最高がEランクぅ? なんでこんな雑魚が依頼受けてんだよ!?」とか言い出すモブが出てきて実力見せつけられて「雑魚なんて言ってすまなかった」的な…
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