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第49話 特別報酬のある依頼

 丸戸たちはダンジョンの町シルバストから、北東にあるナジェルの町へ移動。予定どおり3日で目的地に到着した。


 ナジェルは王都ブレモントからも馬車で3日の距離にある町だ。

 王都と他国をつなぐ街道にあり、宿場町よりは規模が大きい。

 商人だけでなく他国の貴族も立ち寄ることがあるため、町の南西の一画に高級な邸宅が並んでいる。


 丸戸たちは指定先の宿に泊まり、翌日、だいぶ日が昇ってから冒険者ギルドに向かった。


 ギルドは町の北側の大きな通り沿いにあり、通りの先は魔物に備えて大きな外壁が見える。

 中に入ると冒険者が10数名。待ち合わせか、こちらをチラッと見る人もいたが、多くは他の人と話したり、掲示板を見ることに夢中になっていた。



 丸戸はシルバストのギルドで受け取った封書を出して、カウンターの女性職員に渡す。

 封書の内容は、他の町で依頼を受けたことを証明するものであった。


「魔物の討伐依頼ですね。こちらからも改めてご説明させていただきますので、もしも条件が合わなければおっしゃってください」


 そう言って職員が依頼内容を説明してくれた。


 だいたいはシルバストのギルドで聞いたとおりだった。

 一度依頼を引き受けたら、冒険者が止めるまで依頼は継続され、毎回手続きする必要はないとのこと。

 宿泊費や食費は自己負担なので、1日5千Gの報酬はそういった代金も含めてということなのだろう。


 説明が一通り終わり、質問をする。


「町に戻らず、野外で数日活動した場合は、どうなりますか?」


「活動した日数に応じて報酬が支払われます。ただし、相応の討伐証明がなければ無効となりますのでご注意ください」


 そんな気は毛頭ないが、少し魔物を狩って、他の町で遊んで戻っても駄目なようだ。

 相応の討伐証明も、具体的な数は説明されなかった。公表するとそこにつけ込む冒険者もいるのだろう。



 簡素な周辺地図を見せてもらい、特に念入りに駆除してもらいたい区域や、魔物の情報などを教えてもらい、ギルドを後にした。

 町を散策しながら、いくつか絞り込んだ宿の候補から個室の部屋を取る。




 翌朝、食堂で待ち合わせして軽く食事を済ませ、魔物を狩るため森に向かった。


 町の北に小さな森。そこから東に、より大きな森がある。

 間には荒地や草地があり、そこも今回の依頼の狩り場になっている。

 初日ということもあり、まずは北の小さな森の中に入っていく。


 丸戸は索敵のスキルを使用した。

 ダンジョンで入手してからは魔物を狩りにいかなかったが、町への移動中にちょくちょく試していたのだ。


 背景が黒っぽく四角い画面みたいなものが、脳内に現れる。

 画面には十字の白い線が引かれ、交差する点が自分の位置となる。

 初めてスキルを使ってみたときは、古いゲームの画面みたいだな……と思った。


 魔物がいると赤い点が表示される。

 拡大縮小もできるが、索敵範囲は半径500メートルほど。

 索敵を意識して森を進むと反応があった。



「北東に4匹の魔物だ」

「ゴブリンだね」

「向こうは気づいてないみたいだわ」


 葉が落ちた木もあり、じゅうぶん光を通すので、見通しは悪くない。

 リナとフロストはゴブリンを視界に捕らえていた。


 ちょっと複雑な心境のまま、丸戸は仲間とともにゴブリンを倒し、討伐部位の右耳と魔石1つ、武器2点を回収。

 森の東側から中心部に向かって、魔物を狩っていった。



 クロスの森の浅い場所にいた魔物が多く、苦戦することはない。

 適度に休憩を取りつつ、日没前に町に戻った。

 獲物を大きな解体場に持ち込み、査定をしてもらう。



 翌日も短時間であるが、魔物狩りに出ていた。

 これまでなら狩りの翌日は休養日だったが、少しでも成果を出せば報酬がもらえるためである。

 昨日のぶんとあわせて、その日のうちに報酬を受け取った。


 魔物素材が56万5千G、討伐報酬1万8100G、特別報酬10万G、基本手当て3万G。魔石は極小サイズ32個。

 合計で71万3100G、1人あたり23万7700Gの収入となった。



「魔物素材以外に、いろいろと報酬が加算されるのはうれしいわ」


「特別報酬って、魔物100匹倒すと10万Gももらえるんだな」


「がんばったら毎日10万G以上って、すごいよね」


 今の丸戸たちにしてみれば2日間で得た報酬は少ないが、普通の依頼を受けての報酬としては高額であったため、素直に喜んでいた。



 次の日は森に入らず、平地で魔物を狩る。

 職員の話では、町の北にある森とそこから東のほうにある森の間で、よく魔物が現れるらしい。


 視界を遮るものはなく、リナとフロストはおもちゃの双眼鏡で遠くまで見渡せる。

 平地ではオークをはじめ、森よりも体格が大きい種類の魔物が多く、群れをなしている。

 東の森と平地で縄張り争いをしており、負けた魔物が町の北の森のほうへ逃げてきて定住するようだ。


 オークがいるかと思ったら大きな蛇だったり、蛇がいると思ってきたらトカゲの群れだったりと、日によって出現する魔物が変わることもある。

 Fランクはもとより、Eランクの冒険者でも平地で狩るのは難しい。

 だが、ダンジョンで大量に狩りをしていた丸戸たちには、たいして苦にもならなかった。



 平地での初日の狩りを終え、日が暮れる前に夜営の準備をする。

 フロストが言うには、周囲数百メートル以内に魔物はいないようだ。

 丸戸の索敵スキルにも反応はない。


 アイテムボックスから拾い集めた大きな岩をいくつか取り出し、四方を囲む。

 テントの周囲にもバリケードを設置。


 日が暮れると気温が下がり寒い。

 丸戸が選んだ夕飯は、生めんタイプのインスタントのきつねうどんだ。

 お湯で温めるだけのレトルトのミートボールも付け足す。

 見張りの際にも暇つぶしがてら惣菜パンやお菓子を食べるので、空腹を満たすにはこれだけでじゅうぶんであった。



「平地の北のほうに山脈があったけど、山の向こう側には何があるんだ?」


「ヨークセンという国があるわ。この周辺では人口が多く、豊かな国よ」


「ナジェルの町なら、西から山を回りこんで行けるんだ」


「山を回りこんで東がヨークセン、西にロゼイアという広い領土を持つ国もあるわ」


「ロゼイアにはクロスウィッチみたく近くに森があって、さらに大きくしたような町があるって聞いたよ」


「ほお、それは行ってみないとな」



 次の目的地になりそうな町の話をしつつ、夕食を終えた。

 北側には東西に広がる山脈がある。南側には王都ブレモントがある台地になっており、山脈と台地の間は魔物の住処であった。


 見張りはリナ、丸戸、フロストの順番。

 周りに岩を置いてしまったので付近の様子は伺えず、岩を乗り越える魔物がいるかもしれない。

 念のため、電源が不要な防犯用のセンサー型ソーラーエネルギーLEDライトも設置。

 万全の状態で何事もなく、一夜を明かした。



 2日目、3日目と魔物の群れを見つけて狩り、4日目に町に戻った。

 まだお昼前だったので、獲物を査定してもらって、夕方遅くに報酬を受け取る。


 魔物素材1340万3千G、討伐報酬8万5500G、特別報酬と日給が46万G、魔石が極小131個、小サイズが3個。

 合計で1394万8500G、1人あたり464万9500Gの収入となった。


「オークがいたから、かなりの報酬になったわね」


 リナの言うとおり、オークの素材だけで780万Gを稼いでいた。

 これが普通の3人組のパーティーなら、各種手当てを含めて1人あたり30万G超えれば良いほうである。


 他の冒険者がどれだけ稼いだか、あからさまにジロジロ見る者はあまりいないが、後ろに並んでいる者には丸戸たちの会話が聞こえていた。

 信じられないといった表情で、ポカンと口を開く冒険者たち。



「フロストさんが条件を満たしましたので、Eランク昇格の手続きができます。今、ここで更新なさいますか?」


「やったじゃん、フロスト! Eランク一番乗りだね」


「おめでとう。これでランク2つも差がついてしまったな」


「ありがとう。カードの更新、お願いします」


 そう言ってギルドカードを職員に渡すフロスト。


 それほど時間がかからず、ギルドカードがフロストに渡される。

 今までと変わらず黒を基調としたカードだが、ランクの部分にEの文字が記載されていた。


「これでDランクまでの依頼を受けられるから、帰りにちょっと見ていっていい?」


 フロストの希望で、掲示板を見にいく。

 もっとも、夕方の時間帯で残っているような依頼に好条件は期待できないが……。

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