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第48話 進むか、退くか

 冒険者ギルドでダンジョンの報酬を受け取った後、3人は宿屋の食堂で少し早めの昼食をとる。

 それぞれ1億5千万G以上を受け取り、フロストとリナはご機嫌だ。

 しかし丸戸は「良い装備があれば、同じような結果を出せるわけではない」という、冒険者ギルドの職員の言葉が気になっていた。



 お金は億単位で稼いでいる。この先行き詰るなら、より性能の良い武具を買えばいいだろうと思っていた。

 だが、装備を買い換えたところで自分自身は変わらないのだから、劇的に向上するとは限らない。

 今より少し性能が良いくらいでは、現状はあまり変わらないだろう。


 ダンジョン31階層以降は、辛抱強く我慢して探索した。

 40階層のボスは、今までのボスとは違って耐久力があった。

 フロストがボスの注意を引きつけていなかったら、もっと苦戦していた。


 オークやゴブリンを相手にしたときのように、圧倒して進んできたわけではない。

 多少装備を良いものにしたところで、41階層以降は厳しいかもしれない。



「今後の活動方針について話がある。そのまま楽にして聞いてくれ……」


 みなが食事を終えたところで、丸戸は話を切り出した。


「ダンジョン41階層以降も時間をかけて探索していけば、先へ進むことはできる。ただ、今までのようには進めないかもしれない。それでも2人は先へ進みたい?」


「そうね、40階層まで進めたけど、最後はどうにかたどり着いたって感じだったから、30階層まで進んできたときのようにはいかないんだろうなって思うわ。お金を稼ぐだけならオークのところでじゅうぶんだし、無理する必要はないわね」


「僕は先へ進んでみたいけど、魔物しだいかなあ。白い猿みたいに数匹ならいいけど、虫みたいにたくさん寄って来られるときついから……」


「41階層へ踏み込むなら、階層ボスのいる部屋を目指すことになるわよね? 50階層にたどり着くまで、どれだけ時間かかるかしら?」


「休養日や特訓した日も入れてだが、30階層までが半月ほど、40階層までは1か月かかってるね。単純計算で2か月、慎重に進むならさらに倍くらいかかるかもな」


「な、長いわね……」


「時間がかかる上、危険度も増す。ダンジョン探索はここまでというのが俺の結論なんだが、2人はどう思う?」


「ダンジョンを踏破するつもりで来たわけじゃないし、私も40階層で終わりにしたほうが良いと思うわ」


「僕はもうちょっと先を見てみたかったけど、ボスの部屋まで行くまでも大変だと思うから、次にきたときの楽しみにしておくよ」


「あっ、でも、アレはいいの?」


 リナのいう『アレ』とは、階層ボス討伐後に出現する箱に入った緑の書である。

 ダンジョンで休憩時に、商業ギルドの職員から聞いた話や丸戸が国に戻れる魔法なんかもあるかもしれないと、2人にも伝えていた。

 緑の書は世間に出回っていないものなので、他人がいるいないに関わらず、ぼかすようにも言ってある。


「早い者勝ちだった場合が困るが、かといって無理して大怪我したり、命を落としてもなあ。執着しすぎて取り返しのつかないことになるのは避けたい。今はあきらめよう」



 こうしてダンジョン41階層以降は探索しないことで決まった。

 元々ダンジョンの町の近くまで来たから、ちょっと見にきたに過ぎない。

 何か月、あるいは1~2年もかけてダンジョンを踏破しようとまでは考えていなかった。


 続いて、このままここを拠点として活動するか、他の町へ移動するかを話し合う。


「ダンジョンでオークとかを狩って、休養日に簡単な依頼を受けるのも悪くはないんだけど、僕は他の町や国をみてみたいな」


「この町でできる雑用の依頼ばかり受けていたから、もう少し冒険者らしい依頼を受けてみたいわね」


「今までは日数がかかる依頼を避けてきたからな。これからはそういった依頼も受けてみるか」



 今日はギルドで報酬を受け取ったら自由行動の予定だったが、3人は再び冒険者ギルドへ向かった。


 ダンジョン帰りの冒険者がいるので、お昼過ぎの時間帯でもギルド内は人が多い。

 ただ、掲示板の前は人が少ないので、じっくり依頼内容をみていく。

 G、Fランクはいつもと変わらぬ依頼だったが、Eランクにちょっと興味を引く案件があった。


「ナジェルの町で魔物の討伐依頼。僕らでもできそうかな? 報酬は1日5千G、討伐数によって特別手当もあるみたいだよ」


「1日5千って、毎日もらえるのかしら?」


「討伐数で特別手当ってのも気になるな。話だけでも聞いてみるか?」



 さっそく職員に依頼の内容について説明してもらう。


 ここから馬車で3日ほどの距離にナジェルという町がある。

 その付近に森があり、魔物を狩ってほしいという依頼であった。

 主に町の近くの森に潜む魔物と、遠い位置にある森から移動してくる魔物が討伐対象。


 基本給1日5千Gであるが、何も活動しなければ支払われない。

 討伐を証明する部位を持ってくれば種類と数に応じて報酬が支払われ、素材は冒険者のものとして買い取りもしてもらえる。

 魔物によっては、他の冒険者と協力する必要もあるという。



「移動に3日はさすがに長いわね」


「ここを拠点にダンジョンで狩りをする冒険者は、受けない依頼だよなあ。まあ、俺たちは少し遠出するのもいいんじゃないか?」


「今まで受けたことのない条件の依頼だから、僕は楽しみだよ」


 ダンジョンの町シルバストには1か月半以上滞在していた。

 リナとフロストは3億G以上、丸戸は5億G以上のお金を持っている。


 お金はじゅうぶん稼いだので、少し他の町を旅しながら依頼をこなすのも悪くないと思い、ナジェルの依頼を受けることにした。

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― 新着の感想 ―
[一言] おー、踏みとどまったか~。お金とスキルに目がくらみ、調子に乗って攻略して痛い目見る展開もあるかと思ったけど、さすがはマジメパーティ!
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