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第46話 特訓して稼いだ額は?

 10月に入り、丸戸たちは連日、ダンジョンにこもっていた。

 これまではダンジョンで2日活動し、3日休養にあてる日程だったが、今は4日ダンジョン、2日の休養である。


 日程を変更した理由は魔法の練習のためであった。


 丸戸は身体強化、ダメージ軽減、照明、氷魔法、雷魔法。

 リナは火魔法、土魔法、神聖魔法。

 フロストは身体強化、水魔法、闇魔法。


 いちおう、これらの魔法が使える。



 魔法書から入手した魔法、丸戸であれば氷魔法の氷結を覚えた。これは単純に氷の塊を作る程度で、戦闘には向かない。

 以前、リナに指導してもらって、石を強く投げる程度の威力で攻撃できるようにはなった。


 一方、彼らが『スキルの書』や『緑の書』と呼ぶ緑色の書物からは雷魔法を取得したが、どういった魔法が使えるのか丸戸自身はわからない。

 サンダーホースの素材を使った槍は、落雷の魔法を発動するので、それを意識して練習してみたら使えるようになったものの、だいぶ威力が弱かった。


 闇魔法を習得したフロストにいたっては、使いこなせないままだ。


 せっかく魔法を取得したのに存分に使えておらず、持て余した状態。

 リナが実戦で魔法を上達させているのは見ていたので、丸戸とフロストも少し鍛えようと思ったのだ。



 下の階層の探索は階段を見つけるまで、1日1階層分しか探索しない。

 こちらはたいてい1日数時間で終わるので、空いた時間でオークが多い29階層で狩り、ここでお金をしっかり稼ぐ。

 残りの3日間で他の冒険者がいない、あるいは少ない階層で魔法の練習がてら魔物を狩るといった感じだ。


 学園では実技が苦手だったこともあり、座学をしっかり学んだリナは、魔法に関する知識は豊富。

 自身の経験を踏まえ、彼らにひとつひとつ丁寧に教え、実習に励んだ。



 集中特訓したことにより、丸戸は氷刃や氷槍で弱い魔物なら倒せるくらいになった。

 コツは具体的な想像力と、実際に現象を起こし認識すること。

 イメージが不十分で詠唱の言葉だけなぞっても、魔法は発動しない。


 漠然とした想像ではなく、リナの攻撃魔法を実際に見てイメージできているので、一定レベルまで上達するのも早かった。

 結果、雷魔法も落雷の威力が上がり、槍を媒体とした魔法攻撃も、より威力を増すことになる。



 リナは神聖魔法の上達に集中。回復、攻撃、防御と1種類ずつ使用できるが、まだ初級レベルという段階でもう少し時間がかかりそうだ。


 フロストは元々魔力量が少ないこともあり、リナが知っている魔法から、魔力消費量が少なく、使い勝手が良いとされる魔法を教わる。

 小さな水の刃を飛ばしたり、目を暗ませるといった初心者向けの魔法ということもあり、使い慣れるまでそれほど時間はかからなかった。




 初めて特訓をした4日間では、初日に31階層の探索とオーク狩りで約1500万G,3日間は主に19階層でゴブリンの群れを狩り約2100万G。

 1日の稼ぎとしては一人あたり約300万Gと、彼らにしては少ないものであった。


 2度目も450万Gと少なめだったが、3度目に830万G、4度目には1500万Gを超えた。


 倒した魔物の数は2万匹以上。

 魔石は極小サイズが約5千個。33階層の魔物が小サイズをドロップするようになり、こちらは50個だった。


 なお、この間にスキルで買える商品の価格が5万Gを超えた。

 ダンジョンにこもる時間が長いせいか、キャンプ用品や食べ物、飲み物が多かった。業務用とかケース単位での購入となり、今月はかなりの出費となりそうだ。




 今月5度目のダンジョン探索日。35階層と36階層の探索を終え、丸戸たちは明日以降の予定を話し合っていた。


「明日は予定通り、29階層で一日オーク狩りでいいかな?」


「特訓の成果を確認するには、これ以上わかりやすいものはないわ」


「うん、1日でどれだけ稼げるか、楽しみだね」



 31階層以降の探索後にオーク狩りをしていたが、最高で1時間500万Gを超えるくらい。

 だが、そのままダンジョンで休息を取るため、適当に流して狩りをすることのほうが多く、その場合は1時間300万Gほどだった。


 翌日、さっそくオークを狩りに向かう。29階層で何度も狩りをしているので、皆、地図は頭に入っている。


 フロストとリナが別ルートに消えた。

 丸戸はオークを狩りながら少し開けた場所に出ると、そこにもオークやホブゴブリンが群れている。

 落雷の魔法で大部分を倒し、残りを槍で仕留めている間に、別方向からフロストとリナが多くの魔物を引きつれこちらに向かってきた。


 フロストを追う魔物の群れに、丸戸が高威力の雷を落とす。生き残った魔物はフロストがとどめを刺していく。

 リナは広間に出る直前の通路で、背後の魔物の群れに火炎魔法を浴びせた。スキルと装備品の効果で強化された火炎により、魔物は全滅。

 ドロップ品を回収し、次の狩り場ポイントに向かう。


 ポイントを4か所回り、2時間休憩。それを3回繰り返したら終了。

 そのままダンジョンを出ても馬車のない時間帯なので、いったんダンジョンを出入りする転移の部屋がある広場へ行き休息する。


 じゅうぶん休んだら、さらに狩り場ポイントを2周し、ダンジョンを出て町に戻った。



 その日のうちにドロップ品を精算。


 3日間で2億8716万G、極小の魔石が1612個、小サイズが37個。一人あたり9572万Gだった。


 初日の探索ぶんの収入を除外して単純計算すると、2日目の3周回分の収入は一人あたり4200万Gほど。パーティー狩りで1時間あたり約1060万G稼いでいた。


 これが他のパーティーであれば、一人あたり100万Gから200万Gがいいところ。

 装備や戦闘系スキルより、ドロップ品を制限なく持ち運べるアイテムボックスの存在が大き過ぎるのである。



 金額が大きいので丸戸が預かり宿屋に戻ると、部屋で夕飯を食べならが狩りの成果について話し合っていた。


 ほとんどダンジョンで寝泊りしていたので、それまで利用していた宿屋は延長していない。

 今は1泊1万6千Gの2人部屋にいる。



「1日で1人4千万Gってすごすぎて、頭がおかしくなりそうだよ」


「2人とも収納スキルがあれば、もっと稼げるんだけどな」


「無茶言わないでよ。1人いるだけでじゅうぶんだわ」


「クロスの森だと、倒したぶんがそのまま素材になるから、ダンジョンだとちょっともったいなく感じちゃうね」


「ダンジョンでは4~5匹倒して1匹分の素材だからなあ」



 ダンジョンでは魔物が素材をドロップする確率は20~25%ほど。

 ダンジョン外だと倒した数だけ素材になるが限りがある。ダンジョンなら魔物が尽きることはない。


 素材を落とすまで倒すのに労力はかかるものの、解体する手間は不要で、素材は良品質。

 ただ、ダンジョン内では休める場所が限られ、補給はできない。

 魔物を倒しても負傷して動けず、そこで人生が終わる者も少なくない。



 1か月のうちダンジョンで20日も活動していたため実感が薄かったが、今日は10月最終日。

 丸戸のスキルによる商品をパーティーで購入するのだが、毎回買うたびに金銭のやり取りをするのもめんどうなので、月末にまとめて精算するようになった。


 今回は1373万G。1人あたり500万Gずつ出し合い、あまりは共同費として使用する。


 丸戸個人の10月の収入は約2億1千万G。支出が3918万Gで、収支は約1億7千万G。

 所持する現金は4億1748万9670Gである。



「明日から2日間、豊穣祭なんだってな。それが終わるまで休むか?」


「ここダンジョンの町だから、あまりお祭り感はなさそうだし、僕は明日からダンジョンでいいよ」


「よそ者が多い町だと、治安が心配よね。私もダンジョンでいいわ」


「そ、そうか。それで特訓も稼ぎの検証も終わったから、次からは普通に探索を進めていく方針でいいかい?」


「早く40階層のボス倒しちゃいましょ。もう虫だらけの階層は抜けたいわ」



 31階層から先は、昆虫系の魔物が多い階層ばかりだった。

 1日1階層ずつというのも、昆虫系は単純に数が多く、長時間の探索が精神的に辛かったためである。

 魔法を強化した今なら、時間をかけずに進めそうだ。



 翌日、お祭りムードが高まる前に町を出て、ダンジョンに入った。


 30階層までしか転移できないので、31階層から探索する。

 最短ルート上にいる魔物は駆逐し、離れた位置にいる魔物にはフロストが暗闇の魔法をかけたり、リナが炎の壁を出したりして、接近を阻止した。

 37階層に降りる階段までたどり着いたところで休憩を取る。



「途中で休んだけど、ここまで5時間か。思ったより早く着いたな」


「まだ半分を超えたところと思うと、先が長く感じるわ」


「ボスがいる階層は、たぶんすぐにたどり着くから、あと3階層突破するだけだよ」


 途中でダンジョンを出て、また31階層から移動するのも時間がかかる。

 今回は階層ボスを倒すまで、町に戻らず突き進むことにした。



 37階層も昆虫系の魔物ばかり。

 人と同じくらいの大きさのクワガタやカミキリムシ、ガやトンボなど日本で見たことがある昆虫もいれば、まったく見たことがなかったり、2~3種類の虫が混ざったような魔物もいた。


 ワー、キャー悲鳴をあげながら、38階層までを突破。

 時刻は現地時間で20時を回ったところ。今日は39階層に降りる階段で泊り込む。

 他にパーティーはいないため、ダンジョン内にしては贅沢なものを食べ、つらいことを忘れることにした。


 丸戸はトンカツ定食。リナとフロストはトンカツサンドにカルボナーラスパゲティ、生野菜のサラダとコンソメスープ。

 デザートはチョコレートケーキである。



「あと1階層超えればすぐと思うと、ちょっとドキドキしてくるね」


「私はもうすぐ終わると思うと、ホッとするわ」


「30階層まではそんなに苦労した感じはなかったけど、31階層からは楽ではなかったな」


「うん、この辺はもう中ランク冒険者が来るような感じだよね」


「私たちは進めるから来ちゃったけど、30階層で止めても良かったわね」


「ああ、お金稼ぐだけなら29階層でじゅうぶんだもんな」


「今日探索したところも魔物が多かったから、狩りに時間をかければ稼げそうだよ」


 いや、それはちょっと……と、苦笑いする丸戸とリナであった。

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