第31話 狩りの成果
借金をして武具や魔法書を購入した翌日。
これらの新しい装備を身につけ、早朝から森に入る丸戸たち。
狙いはオークだが、中型クモやクロスベアももちろん狩るつもりだ。
狩場ポイントに到着するとさっそく中型クモが2匹現れ、丸戸とフロストが攻撃を仕掛けた。
フロストはすばやい動きで両手に持った剣をクモの頭部に突き刺し、一撃で仕留める。
丸戸も頭部を深く突くつもりで刺したのだが、思っていた以上に槍が深く刺さり、その威力に驚いた。
低ランクの冒険者にとっては上位となる魔物を次々に倒していく。
そんな中、丸戸は槍の属性攻撃が少し気になっていた。
一段落し休憩を取っているときに、リナに質問をする。
「物理攻撃しながら魔力で攻撃するというのがよくわからなくて、雷属性の追加攻撃がいまいちな感じなんだ。リナ、何かコツみたいなのは、ないかな?」
「魔法を放つ感覚で良いんじゃないの?」
「そうすると物理攻撃の威力が落ちるんだよね」
「ああ、物理攻撃しようと意識すると、魔法のほうまで意識が回らないか。そうね……、攻撃が当たる直前に、頭を瞬時に切り替えてみたらどうかな?」
「切り替えるといっても、どうすれば……」
「う~ん……、条件反射するようなものがいいのかな? 例えば攻撃が当たる直前で、『魔法!』とか、『雷!』って、心の中で叫んでみたりとか?」
「なるほど、ちょっと試してみるよ。ありがとう、リナ」
短めの休憩を終え、狩りを再開。
魔物を見つけ狩るごとに、雷属性の追加攻撃の威力も上昇し、パーティーの殲滅速度は増していった。
標的にしている魔物の討伐数は、これまで1日30匹前後だったが、お昼休憩までに50匹以上を討伐。
「リナのおかげで、属性攻撃の威力があがったよ」
「威力が上がるってことは、そのぶん魔力を消費しているはずだから、魔力切れには気をつけてね」
「リナもだよ。前に比べたら石の槍が大きく速くなってて、魔物を一発で倒しちゃうんだもん。僕、びっくりしたよ」
「杖は前から持っているやつだから、火力はそんなに変わらないと思っていたけど、別次元だもんな……」
「それだけこのローブの魔力上昇効果がすごいのよ。さすがに1千万Gしただけはあるわ」
今回3人が入手した装備や魔法書は、商人の好意もあって約8千万Gで手に入れることができた。
これらを普通にお店で買うとすれば、2億Gくらいかかる。
Bランクの冒険者、あるいはCランクでもかなりの実力者がするような装備であり、低ランクの冒険者が狩るような魔物は苦にならなかった。
昼休憩後も40匹以上狩って、この日の狩りを終えた。
次の日、報酬を受け取りに、いつものように冒険者ギルドへ向かう。
他の冒険者が少ない時間に来たので、すぐにカウンターで対応してもらった。
討伐数はちょうど100体で、報酬の合計は2253万6千Gに極小の魔石38個、小さい魔石が12個。1人あたりでは751万2千Gだった。
「前回の3倍くらいは倒したから、おかしくはないんだが、ここまで高いとは……」
「僕、これでもう借金返済だよ」
「私は次の狩りでまとめて払うわ。でも、毎回これくらいの収入になると、金銭感覚おかしくなりそうね」
熟練者なら丸戸たち以上に魔物を倒せるが、ほとんどの者はこれほど稼げない。
素材を持ち帰ることが困難なのだ。
丸戸たちもアイテムボックスがなければ、1人あたり10万Gから20万Gといったところ。
持ち帰える量が多いということは、それだけ戦闘経験も積めている。
高価な武器、防具の恩恵があるとはいえ、3人は単独でもオークを倒せるまでになっていた。
それほどの実力があれば、Eランクになっていてもおかしくないのだが、昇格の規定により一気に昇格はできない。
丸戸はFランクに昇格するのに必要なポイントが、ようやく3割を超えるところだった。
収入を得たところでポーションを購入し、共同生活費をリナに渡す。
今回は30万Gだ。
丸戸がスキルで仕入れた商品を、価格を気にせず購入するためである。
パーティー共有のものであれば、一まとめにしたほうが管理がラクという理由もあった。
これまでは少しでも節約しようと、たいてい1点ずつ買っていた。
これは残しておいたほうがいいだろうな……と、丸戸の判断で在庫として残しておいたものもあるが、毎日何かしら買い物をしていると、一つ一つの商品に気が回らない。
さらに今回競売が行われたことで、何をどれだけ売って良いかと考えるのは、非常にめんどくさかったのだ。
ここ数日で新たに丸戸から商品を購入した代金、4万4880Gが支払われた。
その日の夕方。
丸戸はスキルでおすすめを確認する。
【ビール350ml24本 4800】【まぐろのたたき1kg 3500】【あらびきウインナーソーセージ1kg 1000】
「装備品買ったから今朝までは安いものしか買えなかったけど、報酬をもらって所持金を増やしたら、元の水準に戻ったな」
明日は競売の売上を受け取る日だ。
いったいどれだけの収入になるかと、期待を胸に膨らませながら、表示された商品をすべて購入するのであった。
 




