表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベース⚾ガール!!~HIGHER~  作者: ドラらん
第七章 また、始まる
98/223

96th BASE

お読みいただきありがとうございます。


伊予坂の最後の攻撃です。

どこまで反撃できるのでしょうか。

《七回裏、伊予坂高校の攻撃は、八番、実篤さんに代わりまして、与謝野(よさの)さん》


 この回の先頭は投手の実篤だが、伊予坂は代打に二年生の与謝野を送る。彼女は左打席に立つと、バットを縦に掲げながら気合を露わにする。


「さあ来い!」


 真裕がワインドアップから一球目を投じる。外角への威力あるストレート。与謝野は思わず見送った。


「ストライク」

「与謝野ビビんな! どんどん振ってけ!」


 ベンチから与謝野への檄が飛ぶ。代打で出てきた選手は基本的に一打席しかない。つまりチャンスは三つのストライクのみ。受け身になっていてはいけない。


 二球目は内角低めに食い込んでいくカーブ。与謝野は一転して打ちに出たが、空振りを喫する。真裕は早々に追い込んだ。


(代打の一打席で真裕を打つのは難しい。ましてやあの子のスライダーは一球で捉えられないでしょう)


 優築はスライダーのサインを出す。もちろん真裕は首を縦に動かし、大きく振りかぶってから三球目を投じる。

 コースは真ん中やや内角寄り。そこから鋭く与謝野の体に向かって滑り出す。与謝野はどうにかバットに当てようと脇を締めてスイングするも、やはり初見では対応しきれない。


「スイング、バッターアウト」


 三球三振。右中間後方にある電光掲示板に、赤いランプが一つ灯る。


《九番、坪内さんに代わりまして、(いずみ)さん》


 伊予坂は立て続けに代打を敢行。坪内に代わって泉が右打席に入る。

 初球、真裕はインコースのツーシームを投じる。泉は積極的に打っていった。


「サード!」


 鋭いゴロが三塁線を破っていく。しかし僅かに切れており、ファールとなる。


(こっちは一球目から打ってきたか。けどそれにはそれなりの与し方がある)


 二球目。優築は続けてツーシームを投げさせる。コースは外角低め。真裕の投球は少々高めに浮いたが、ほぼ要求通りのコースに行く。泉はこれにもスイングしていった。ところがツーシームの軌道は僅かにバットの芯から外れるような軌道を見せる。


「ショート」


 打球はマウンドの左をゴロで通過していく。けれども勢いは無い。京子は二塁ベースの後方で追い付き、軽快な動きで一塁に送球する。


「アウト」


 泉はショートゴロに倒れた。あっさりとツーアウトになり、あとアウト一つで亀ヶ崎の勝利、裏を返せば伊予坂の敗北が確定する。


《一番セカンド、正岡さん》


 伊予坂も打順が四巡目に入る。追い詰められはしたものの、上位打線が出塁して中軸に繋がればまだまだ得点の可能性はある。


(終わってたまるか。私が出て夏目が続いて、翼たちに託すんだ)


 正岡の気持ちも切れていない。初球、外角低めのボールゾーンへ逃げていくツーシームが来たが、彼女は落ち着いて見送った。


(見逃されたか。正岡は四打席目だし、前の二人よりも対応力は高い。真裕も分かってるだろうけど、あとアウト一個だからって気を抜かず丁寧にいきましょう)


 優築はストレートのサインを出す。真裕はすぐに頷いて二球目を投げた。


「ボール」

 ところが高めに大きく抜けた。これも正岡はしっかり見極める。


(あれ? おかしいなあ。普通に投げてるんだけど……)


 真裕は小さく首を傾げる。自分としては勝利を意識していないつもりだが、どうしても頭には()ぎっている。すると体は正直なもので、自然と余計な力が入ってしまうものだ。


(ツーボールになったからって焦ることはない。普通に投げようとしてるのは分かってるし、真裕は気にしないで大丈夫)

(は、はい。分かりました)


 優築とのサイン交換を済ませ、真裕は一つ息を吐いてから三球目を投じる。指に掛かった力強い直球が低めに決まった。


(よし。良い感触で投げられたぞ)


 真裕は少しだけ口角を持ち上げる。こうして気になった点をいち早く修正できるからこそ、安定した投球ができるのだ。


(フォアボールも期待してみたけど、それは無理か。なら打って出るしかないよね)


 正岡は一旦打席を外し、バッティンググラブを付け直す。これで気持ちもリセットされたか。再びバットを構えた彼女の目は鋭さを増している。


 マウンドの真裕が四球目を投じる。インハイへのストレート。正岡は思い切ってバットを振り抜いた。


「サード!」


 詰まった飛球が杏玖の頭上に上がる。これをキャッチすればゲームセット。杏玖はグラブを掲げてジャンプする。


「くっ……」


 しかし届かない。ボールは杏玖の後方に落ち、レフトの玲雄が掴む。正岡は一塁を回ったところで止まり、軽く手を叩いた。


「よっしゃ」


 これでツーアウトランナー一塁。正岡のヒットで伊予坂が望みを繋ぐ。


《二番ショート、夏目さん》


 続く打者は夏目。そしてネクストバッターズサークルには、翼が姿を現す。


「夏目さん、打ってください! 私に繋いでください!」


 翼の声を背に受けながら、夏目が打席に立つ。得点圏にランナーを置いて翼に回れば、何かが起きそうな雰囲気は漂っている。


(この人を出せば翼ちゃんに回る。さっき打たれた借りを返したいけど、何よりもチームが勝つことが最優先。そのためには絶対にここで切らなきゃ)

(正岡のヒットは飛んだところが良かったと考えて良い。きっちり投げていればそんなまぐれは続かない。それに形振り構う意味も無い。全力且つ確実にこの夏目を打ち取る)


 初球、優築はなんとスライダーを要求した。真裕もそれに従って投球を行う。


(え?)


 打ちにいこうと踏み込んだ夏目だったが、まさかの球種に思わずスイングを止める。スライダーが外角低めに決まり、バッテリーはストライクから入ることができた。


(いきなりスライダー? そんなのあり? もしや全部スライダーで来るなんてことないよね……)


 夏目が戸惑う中での二球目。真裕は再びスライダーを投じていった。


「うわっ……」


 今度はバットを振っていった夏目だが、鋭い変化に対応できない。空振りを喫し、二球でツーストライクと追い込まれた。


(夏目さん、お願いします。私にチャンスで回してください。必ず打ってみせますから)


 翼は口を真一文字に結んで夏目に念を送る。もう一度自分に打席が来ることを、ただただ信じて待っている。


(次の零原には絶対に繋がせない。遊び球は要らない。一気に終わらせる)


 優築は三球連続でスライダーを要求する。真裕も彼女に同調し、サインを確認したとほぼ同時に頷いた。


(伊予坂がここまで強いとは思わなかった。特に翼ちゃんはほんとに凄かった。けど最後に勝つのは私たち。この一球で決める!)


 真裕がセットポジションから三球目を投じる。彼女の右腕から放たれたスライダーはアウトローへ。ストライクかどうかは微妙のため、夏目はスイングせざるを得ない。


(むう……。これで終わりになんてさせてたまるか!)


 夏目は腕を一杯に伸ばして何とかバットを届かせる。短い金属音を残し、白球は高く打ち上がった。



See you next base……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ