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ベース⚾ガール!!~HIGHER~  作者: ドラらん
第六章 争奪戦!
77/223

EXTRA BASE

お読みいただきありがとうございます。


背番号も配布され、いざ夏大へ!


……と言いたいところですが、今回は番外編をお送りさせていただきます。

初めに言っておくと今回のお話は物語とはほとんど関係ありません。

完全に作者の見切り発車で描かれておりますのでご容赦ください。


また今回は第一部の夏大で登場した真裕のライバル、小山(こやま)舞泉(まみ)が出てきます。

今年の夏大でも登場しますが、その前に詳しく知りたい方は第一部へGO!(唐突な宣伝)


《……目覚めなさい、剣士マ・ヒーロよ》


「ん、んん……」


 誰かの声に導かれ、私は目を覚ます。辺りを見渡すと、広大な草原が広がっていた。


「こ、ここは……? ていうか、何で私こんなところにいるの?」

「やっと起きたか。待っていたぞ」


 私の目の前で喋っていたのは、とんがり帽子を被った一人の女性。顔や背丈は京子ちゃんに似ている。というか京子ちゃんだ。


「ウチの名前はキヨウ・ヒナ。召喚魔法を得意とする魔導士だ。ヒナと呼んでくれ」

「は、はあ……」


 一体何がどうなっているのか。私はさっきまで自分の部屋で寝ていたはずだ。


「さあ、一緒に最低最悪の魔王を倒すべく旅に出るぞ!」

「旅? 最低最悪の魔王?」

「そうだ。ウチらの世界は現在、最低最悪の魔王コヤ・マミーによって支配されている。その支配を終わらせるために、剣の達人であるお前が魔王討伐に任命されたのだ」


 コヤ・マミーとはこれまた聞き馴染みのある名前である。だが私が剣の達人とは……。自分の姿を確認してみると、私はオレンジの鎧を身に纏い、腰には剣を突き刺している。


「こ、この姿は……?」

「何をふざけたことを言っているんだ。それがお前の正装ではないか。さっきまで気の抜けたように眠っていたし、寝ぼけてるのか? まあ良い、さっさと行くぞ」


 ヒナさんは左手に持っていた杖で行く先を示し、悠然と歩き出す。仕方が無いので私も付いていこうとしたが、ふと他の誰かの視線を感じる。その方向に振り向いてみると、近くの茂みから私たちを見つめている一人の女の子を発見した。


「あ……」


 女の子は私と目が合った瞬間、咄嗟に茂みの中に隠れる。その顔立ちは紗愛蘭ちゃんそっくりであった。私は女の子の元に駆け寄る。


「ねえねえ、貴方も一緒に来る?」

「え? い、行って良いの……?」

「もちろん。一緒に魔王を討伐しよ」

「あ、ありがとう!」


 私の差し出した手を女の子が掴む。そのまま女の子は茂みから出ると、頬を紅潮させながら自己紹介をする。


「私の名前は弓使いのアクリ・サクラ。サクラって呼んでね」


 この子の名前は踽々莉紗愛蘭のアナグラムになっているようだ。元々紗愛蘭ちゃんはとあるキャラクターのアナグラムで名づけられているし、ここでもそれを用いてきたということか。なるほど。……って、どうして私はそれで納得できてるんだ?


「私は柳瀬……じゃなくて、マ・ヒーロ。よろくね、サクラちゃん」


 サクラちゃんに倣って私も名乗る。危うく本名を言いそうになったが、何とか凌いだ。


「ほら、何ぼさっとしてるの! 二人とも早く行くよ!」

「は、はい!」


 私とサクラちゃんは揃って駆け出す。こうして魔王を倒す旅が始まった。




「……ということで魔王の部屋の前に辿り着いた。この扉の向こうに最低最悪の魔王、そしてウチらが倒すべきコヤ・マミーがいる」


 気が付くと私たちは魔王の城に潜入し、禍々(まがまが)しいオーラを放つ扉の前に立っていた。今まさにその扉をヒナさんが開こうとしている。


「ん? ちょっと待って。いきなり時間が飛んだような気がするんですけど……」


 私は不思議に思い尋ねてみる。するとヒナさんは突如血相を変えて答えた。


「何を言ってるの!? ここに来るまでの過程なんて描いてたらめちゃめちゃ長くなるでしょ! ただでさえ『ベスガル』は三部まではやる予定なんだから、こんなところに時間を割いている暇は無いの! 分かった?」

「は、はい!」


 あまりの圧力に私は反射的に返事をしてしまう。ただよくよく考えてみると何を言っているのかさっぱり分からない……。


 ともあれ扉が開かれ、私たちは部屋の中に入る。いよいよ?最低最悪の魔王、コヤ・マミーとの対面だ。


「あ、ヒーロちゃんだ! 久しぶり」

「え? ま、舞泉ちゃん?」

「舞泉? 私はコヤ・マミーだよ」


 現れたのは舞泉ちゃんそっくりの女性だった。コヤ・マミーというくらいだから当然と言えば当然なのだが、私への声の掛け方や雰囲気まで舞泉ちゃんそのもの。しかも学校の制服を着用している。なので私には舞泉ちゃんにしか見えない。


「ところで皆、今日は何しに来たの?」


 マミーちゃんは普段の舞泉ちゃんの如くほんわかとした口調で聞いてくる。自分が狙われているという自覚が無いのか。


「え? そ、それはね……」

「貴様が最低最悪の魔王だな! 今ここで倒してやる!」


 ヒナさんが戦闘態勢に入る。慌てて私も剣を取ろうとすると、マミーちゃんは混乱したように目を丸くした。


「え? え? どういうこと?」

「え、えっと……。何かマミーちゃんが最低最悪の魔王になってるらしくて、それで私たちが倒さなくちゃいけないってなって……」

「私が最低最悪の魔王? そもそも私王様になんかなった覚えないんだけど」

「へ?」


 この場にいた全員が首を傾げる。確かに玉座も無ければ家臣もいない。王様というにはあまりに普通過ぎる一人の高校生の部屋だ。


「で、でもじゃあこの世界が支配されてるって話は?」

「何それ? 私が支配なんかするわけないじゃん。どっかで間違った情報が流れちゃったのかもね。一体どこの誰が流したんだか」


 マミーちゃんは参ったという感じで首を振りながら、手を横に広げる。私たちは完全に戦意喪失して武器を仕舞った。


「ま、せっかく来てくれたんだし、ここで遊んでいきなよ。お菓子も用意するからさ。ささ、座って座って」

「ああ……、うん」


 促されるままに私たちは三人とも腰を下ろす。どういうことなのか全く理解できないが、ひとまず何事も無くて良かった。


「ああ、でも……。これから支配するつもりだけどね。グラウンドを」

「へ? マミーちゃん?」


 私は咄嗟にマミーちゃんを見る。マミーちゃんはいつの間にか制服からユニフォームに着替えており、グラブとボールを持っていた。


「ふふっ、待ってるからね。真裕ちゃん」


 マミーちゃんは、いや、もう舞泉ちゃんと言っても良いだろう。彼女は不敵に笑ってモーションを起こし、右腕を振る。勢いのあるストレートが私に向かって飛んできた。


「……はっ!」


 再び覚ました私の目に移ったのは、自分の部屋の天井だった。どうやら夢を見ていたみたいだ。


「はあ……」


 私は思わず大きく息を吐く。おかしな夢だった。けれど舞泉ちゃんの最後の一言だけは、正直夢の中と言えど体が震えた。


『これから支配するつもりだけどね。グラウンドを』


 初めて見た時の衝撃から約一年。どれだけレベルアップをしているのだろうか。舞泉ちゃんを倒さない限り、私たちの優勝は無い。


 そして、暑くて熱い夏がやってくる――。



See you next adventure……?

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