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ベース⚾ガール!!~HIGHER~  作者: ドラらん
第六章 争奪戦!
72/223

71st BASE

お読みいただきありがとうございます。


緊急事態宣言が多くの県で解除されました。

しかしまだまだ油断はできません。

解除されたからこそ今一度気を引き締めて、県を跨ぐ移動や密集をできるだけ避けるようにしましょう!


 楽師館の先発は二年生の竹内(たけうち)。苑田とは対照的な右の本格派だ。


 最初のサインが決まり、竹内がオーバーハンドから一球目を投じる。低めのストレート。昴は打ちに出たが空振りを喫する。


(球速はそんなにあるわけじゃないのに、球筋が全然追えてない。なんで……だなんて思っちゃ駄目だ。それが緊張というものなんだから。受け入れるしかない)


 二球目は内角から曲がるスライダー。昴は反応してしまい、またもやバットが空を切る。


(追い込まれたけど焦るな。ヒットが打てなくても、粘って次に繋げるのも私の役目だ)


 三球目、アウトローの際どいコースに直球が来る。昴は手が出ず見逃したが、球審はボールと判定する。


(ひとまず助かった。次は決め球が来るかもしれない。落ちる球とか持ってるのかな?)


 ワンボールツーストライクからの四球目。竹内の投球は低めのストライクゾーン目掛けて進み、ベース手前で落下する。フォークだ。昴は予見できていたとはいえ、初めての軌道についバットが出てしまう。


「くっ……」

「バッターアウト」


 空振り三振。昴は結局粘ることもできず、四球でアウトとなった。


(くそ……。切り替えろ)


 昴は奥歯を噛みしめながら打席を後にする。目覚ましい活躍を見せてきた彼女だが、今日はそう簡単には打てそうにない。後続の二人も打ち取られ、三者凡退で攻撃は終了した。


 二回、三回も両投手が好投。無得点で進み、四回表に入る。ワンナウト後、万里香に二打席目が回ってきた。


(流石期待の新人さん。ここまで順調な出来だね。でもこのまま気分良く投げさせるわけにはいかないし、私が流れを変えますか!)


 万里香は血気盛んにバットを構える。対する春歌は静かに活力を漲らせていた。


(円川さんの二打席目。初回は良い感じに抑えられた。ここも私のスタイルを貫く!)


 初球、春歌は内角にツーシームを投じる。ところがやや打者側に食い込み過ぎ、万里香が足を引いて見逃す。


(お、ここもインコースから入ってきたか。キャッチャーのリードもあるんだろうけど、それに応えて投げ切ってるわけだから凄いよ。だったら私は、その内角攻めを打ち砕く)


 二球目は外のカットボール。ストライクとなり、春歌はカウントを整える。


(次がストライクなら円川さんはきっと打ってくる。それを逆手に取って詰まらせたい)


 三球目、春歌は再びインコースに戻り、ストレートを投じる。万里香は体が開かないように意識しつつ、腕を畳んで強振。バットの芯から快い音を響かせる。


「ショ、ショート!」


 鋭いライナーがショートの頭上を襲う。昴がグラブを掲げてジャンプするも届かず、打球はあっという間に左中間を割っていく。


「ボールサード!」


 外野からの返球が来るまでに万里香は二塁へと到達。鮮やかなツーベースを放った。


(インコースを攻めるのは良いけど、力でねじ伏せるほどの球威は無いから、狙っていればそんなに打つのは難しくないね。その弱点を乗り越える術はこれからってところか)


 万里香はベース上で得意気な顔を見せる。打たれた春歌は内野に戻ってきたボールを受け取り、悔しさを滲ませた。


(コースは悪くなかったし腕も振れていた。円川さんの技術が上だったってことだ。球威で押し込めれば良いんだろうけど、私の球にそこまでの力は無い。もどかしいけど、ここで向きになってたらこれまでと同じ。私にできる方法で抑えるんだ)


 春歌は自分を見失わないよう、騒ぐ心を静めてから次の打者に臨む。打席に入るのは四番の日生。一試合目では七番打者として出場していた。


 その初球、春歌はアウトコースにカーブを投じる。速い球に絞っていた日生だったが、我慢できず手を出してしまった。マウンドの前方に弱いゴロが転がる。


「オーライ」


 春歌は落ち着いて打球を処理し、一塁でアウトを取る。その間に万里香は三塁へと進塁する。


《五番センター、堀内(ほりうち)さん》


 ツーアウトランナー三塁となり、五番の堀内が右打席に入る。一球目、春歌は外角にカットボールを投じる。堀内は引っ張って大きな打球を飛ばそうとフルスイングしたものの、体の開きが早くバットは空を切る。


 二球目。春歌はカーブでアウトローの際どいコースを突く。タイミングを外された堀内は手を出せない。


「ストライクツー」


 早くも追い込んだ。まだ外角しか使っていないため、次で内角を攻められれば非常に効果的だろう。


(良い感じに外で追い込みましたし、最後はインコースで決めたいです。菜々花先輩、良いですよね?)


 春歌はバッテリーを組む菜々花に念を送る。菜々花もその思いを汲み取り、内角低めにミットを構えた。


(春歌の奴、相変わらずインコースに投げたがってる。まあ前みたいに意固地になることはなくなったし、そこに関しては成長したよね。真裕が手解きしてくれたおかげだ。私もこの子の負けん気は、上手に操縦できれば大きな武器になると思う)

(やった、インコースに投げられる。三球勝負で決めてやる!)

 三球目、春歌は堀内の膝元に狙いを定め、右腕を振る。勢いのある速球が菜々花のミットに吸い込まれ、堀内は腰を引いて見送る。


「ストライクスリー。バッターアウト!」


 球審が力強くコールする。春歌の直球は見事にストライクゾーン一杯に決まり、見逃し三振を奪った。


「ふう……。よし」


 春歌は深く息を吐き、仄かに安堵しながらマウンドを降りていく。強気と冷静さを掛け合わせた見事な投球でピンチ脱出。これには万里香も感心する。


(へえ、やるじゃん。ピンチでも全然動じてるようには見えなかった。これならそうは点を取られないね。なら次の打席は、チャンスで対戦したいな)


 攻守が入れ替わり、四回裏の亀ヶ崎の攻撃に移る。ツーアウトながらランナーを一塁に置き、五番の栄輝に打順が回る。


《五番レフト、野極さん》


 亀ヶ崎打線はここまで二人のランナーを出しているが、内訳は四球とエラーが一つずつ。先発の竹内にノーヒットに抑えこまれている。そろそろ何かしらの打開策が欲しい。栄輝はその足掛かりとなれるか。



See you next base……

竹内’s DATA


ストレート(最高球速103km:常時球速90~100km)

スライダー(球速90~95km)

カーブ(球速80~85km)

★フォーク(球速90km~95km)

チェンジアップ(球速85km~90km)

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