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ベース⚾ガール!!~HIGHER~  作者: ドラらん
第六章 争奪戦!
66/223

65th BASE

お読みいただきありがとうございます。


最近寝る前にストレッチをやっているのですが、少し伸ばしただけで腰に筋肉痛が出ます(笑)

気持ち良い感覚もあるので効いているのだと思いますが、それ故に擽ったい感じがして何だか変な心地で眠りに就いております。


 優築が痛烈なライナーを三遊間に飛ばす。一塁と二塁にいた二人の“あい”は、一斉にスタートを切った。


(レフトの守備位置はそこまで浅くなかった。これなら行ける!)


 逢依はホームに突入する気満々。二点目を狙う。だがその目論見(もくろみ)は、あの選手によって阻まれた。


「オーライ!」


 ショートの万里香が追い付いたのだ。彼女はワンバウンドしたところを逆シングルで捕球すると、華麗なジャンピングスローで二塁にボールを送る。


「アウト」


 更にベースカバーに入った平野も、流れに乗って素早い動きで一塁に送球。際どいタイミングだったが、塁審はアウトの判定を下す。


「ああ……」


 亀ヶ崎ベンチから溜息が零れる。彼女たちにとっては痛恨の、楽師館にとっては会心のダブルプレー。追加点のチャンスは、一瞬にしてチェンジとなってしまった。


「ナイスショート! 助かったよ」

「いえいえ、苑田さんがこっちに打たせてくれたおかげですよ」


 万里香は苑田とハイタッチを交わしてベンチに引き揚げていく。謙遜していたが、今のプレーは彼女の巧妙な技術に裏打ちされたものであり、打った優築はそれに勘づいていた。


(完全にヒットだと思ったのに……。あれを捕ってしまうなんて、きっと円川は投球前から動いてたんだ)


 優築が引っ張ろうとしていることを万里香は読んでいたのだ。その上で予め三遊間を締めておき、そちらに飛んできた時に素早く反応できるように準備していた。こうして優築のヒット性の打球は、結果的に併殺打へと変わった。


(やるなあ万里香ちゃん。流れを引き戻されちゃったね。それなら、もう一度こっちに持ってこられるよう私が頑張らないと)


 ネクストバッターズサークルで待機していた真裕も、万里香のプレーに驚嘆する。これを機に試合は膠着状態に入る。


「サード」

「オーライ」


 二回裏、ツーアウトから七番の日生(ひなせ)が放った飛球を、杏玖がファールゾーンで捕る。この試合初めて、三者凡退のイニングとなった。


 更に三回、四回も両チーム無得点。京子の二打席目はショートゴロ、万里香の方もライトフライに倒れた。


《五回表、亀ヶ崎高校の攻撃は、六番レフト、琉垣さん》


 一対〇のまま試合は後半に突入。五回表は逢依の二打席目から始まる。


(初回に先制はできたけど、二回のチャンスを潰してからは追加点を奪える気配が全くない。このままじゃ駄目だ。私が打破する!)


 マウンド上では苑田が続投。逢依への初球、彼女は膝元にストレートを投じる。一打席目で打たれた一球よりも厳しいコースに決まった。逢依は手を出せず、見送るしかない。


(五回に入っても球威は衰えていないし、指に掛かった時はほんとに前に飛ばせる気がしない。でもきっと打てる球は来る。それを確実に仕留めるんだ)


 二球目はスライダー。外からストライクゾーンに捻じ込もうとしたが、僅かに外れる。


 三球目、再びクロスファイヤーが来る。初球と同じようにコースと球威共に質が高く、逢依にバットを振ることすら許さない。これでツーストライクとなった。


(追い込まれてしまった……。けど二球とも打つべきボールではなかったし、そこは自分の判断が正しいと思って割り切ろう。ここから粘っていけば良いんだから)


 逢依はそう言い聞かせて自らを鼓舞する。こうして自分のプレー一つ一つを前向きに捉えられるようになったことは、この一年間で成長した部分である。打席の中で余裕を持てている証拠だ。


 四球目。苑田は低めのスクリューで空振りを奪いにきた。しかし逢依は惑わされず、バットを止めて見極める。その後小さく頷いた。


(よしよし。大丈夫。ボールはしっかり選べてる。これなら打てる球が来るまで冷静に対処できるはずだ)


 五球目はカーブが来た。逢依はタイミングを狂わされつつも懸命にバットに当て、三塁側へのファールで逃げる。


 続く六球目はアウトローへのストレート。これも逢依はカットした。ツーストライクツーボールの並行カウントのまま、次が七球目となる。


(そろそろ甘くなっても良い頃合いじゃないだろうか。もしも来たら絶対に逃さない!)


 一旦深呼吸をし、集中力を高める逢依。一方の苑田もサインが決まったようで、投球を開始する。


 その左腕から放たれたのは、インコースへの直球だった。苑田は得意のクロスファイヤーで打ち取りに掛かる。しかしボールにしたくないという意識の表れか、コースも高さも中途半端になってしまった。


(来た!)


 逢依は待っていましたと言わんばかりに力強いスイングで打ち返す。バットの芯から快音が鳴る。


「レフト、センター!」


 苑田の叫びが轟く中、大飛球が空に舞う。そのまま左中間を真っ二つに裂いた。


「走れルーあい!」


 ネクストバッターズサークルから愛が声を飛ばす。それに乗せられるように逢依は加速して一塁を蹴る。外野が送球体勢に入る時点で既に二塁へ到達。三塁も狙おうと大きくオーバーランしたところでストップする。ツーベースヒットとなった。


「ナイバッチ!」

「や、やった」


 逢依は軽く拳を掲げ、ベンチのメンバーに応える。亀ヶ崎にとっては二回以来のランナーが出塁する。逢依のバットが重苦しい雰囲気を切り裂いた。


(最後の最後にクロスファイヤーが甘くなった。しっかり捉えられて良かったよ)


 追い込まれるまでは早かったものの、そこからの逢依の粘りは見事だった。これでノーアウトランナー二塁。亀ヶ崎は追加点の絶好のチャンスを迎え、打席にはもう一人の“あい”が立つ。



See you next base……


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