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ベース⚾ガール!!~HIGHER~  作者: ドラらん
第六章 争奪戦!
64/223

63rd BASE

お読みいただきありがとうございます。


自宅待機中にできる良い遊びを募集してます!


《二番セカンド、平野(ひらの)さん》


 楽師館はどのような作戦を取ってくるのか。右打席に入った二番の平野だが、送りバントの構えはしていない。


 亀ヶ崎バッテリーは一度牽制を入れて様子を見る。万里香は悠々と一塁へ戻り、珠音がタッチするタイミングにもならない。


(一回表は京子ちゃんが盗塁を決めてチャンスを作った。万里香ちゃんも対抗して走ってくるのかな? それならピッチアウトして刺しにいってみたい)

(うーん……。それはどうなんだろうか。円川は確かに足が速いけど、京子ほどじゃない。だから単独スチールの可能性は低いと思う。ここはかき乱されず、どっしりと構えて守りましょう)


 盗塁を警戒する真裕に、優築は気にし過ぎるなとジェスチャーで促す。真裕は素直に納得して指示に従った。


(分かりました。一点リードもありますし、バタバタしても仕方ないですもんね。焦らずじっくりアウトを増やします)


 平野への初球、真裕と優築はカーブを使う。万里香に動きは無し。平野もバットを立てたまま見送る。


「ストライク」


 二球目。真裕はインコースにストレートを投げ、平野に腰を引かせる。


「おわっと……」


 判定はボール。平野の様子を見る限り、この一球も普通に打ちにきているようだった。投球を受けた優築は、万里香と平野に一瞬だけ目を配ってから真裕に返球する。


(エンドランをやってくるなら次の一球辺りだろうけど、二人の間にその雰囲気は感じられない。ビハインドだから仕掛け辛いんだろうか。まあそんなに深く考えず、さっさと追い込んでこちらのペースに持っていこう)


 優築はアウトローに直球のサインを出す。真裕は首を縦に動かしてセットポジションに入ると、背中越しで万里香を瞥見してから三球目を投げる。

 投球は要求通りのコースへ。平野は反応して打ってきた。シャープなスイングでバットの芯に当て、快音を響かせる。


「ピッチャー!」


 痛烈な打球がマウンドの左を越え、二遊間を襲う。二者連続ヒットとなりそうだ。


「ショート!」

「オーライ」


 ところが外野へと抜ける寸前で京子が追い付いた。彼女は低い姿勢で滑り込んでバウンドを合わせ、打球を抑える。そのまま勢い余って一回転するも、すかさずボールを右手に持ち替えて二塁にトス。だが万里香の足も速い。ベースカバーに入っていた愛は懸命に体を伸ばして捕球する。


「アウト!」


 二塁塁審が右拳を突き上げる。紙一重の差でアウトとなり、マウンドの真裕は思わず大喜びでグラブを叩く。


「ナイス京子ちゃん!」

「ふう……、良かった」


 京子は一息ついて相好を僅かに崩し、軽やかに立ち上がる。ヒットになっていれば大きなピンチを迎えるところだったが、彼女の好プレーで食い止めることができた。


(ショートは内野の要。ウチがこうやってしっかりしていれば、真裕をたくさん助けられる。もちろん昴にだって負けられない。夏大もウチがこの場所を守るんだ)


 レギュラーは譲らない。京子の並々ならぬ想いが、一つ一つのプレーに表れている。これには真裕も燃えないわけがない。


(京子ちゃん、完全復活だね! 良かった。やっぱり京子ちゃんが後ろに守ってた方が、私も投げていて気持ち良いよ)

 ランナー一塁というのは変わらないままアウトカウントが一つ増える。クリーンナップの前にチャンスを広げさせなかった。


《三番センター、錦野(にしきの)さん》


 右打席に三番の錦野が入る。初球のストレートが低めに外れた後、真裕はアウトコースにツーシームを投じる。錦野はやや強引に引っ張り込んだ。


「サード!」


 三遊間に平凡なゴロが転がる。サードの杏玖は半身の体勢で打球を掴んで二塁に送球。難なくアウトにする。だが一塁はセーフとなり、併殺は取れなかった。


《四番サード、宇野(うの)さん》


 ツーアウトとなり、真裕は主砲の宇野と対峙する。一球目は外角低めへの直球でストライクを取った。宇野はほとんど反応せず。優築は全く打つ気配が見られなかったことを怪しみ、宇野の狙いを探る。


(外の球には目もくれないって感じだった。長打を打ちたいからインコースに張っているのか? 試しに内を突いてみたいけれど、まだそこまで冒険する場面じゃない。ここはセオリー通り攻めよう)

(低めのカーブか。正直真っ向勝負したいけど、今はまだその時じゃないってことなんだろうな。京子ちゃんに感化されたからと言って、熱くなり過ぎるのは良くないよね)


 真裕は腹の底から湧き上がる熱を一旦蒸発させ、冷静に投球を行う。二球目、彼女はカーブをきっちり低めのコースに投げ込む。


「ストライクツー」


 あっさりと宇野を追い込んだ。三球目こそ同じような球がボールと判定されたものの、これは次の一球への布石となる。


(カーブ二球で見逃す姿勢が前のめりになってきてる。最後は速球で締める)


 優築は再び外角低めに構える。真裕は微かに口角を持ち上げてセットポジションに入る。


(ストレートでビシッと決めるよ。余計なことは考えない。優築さんのミット目掛けて腕を振るだけだ)


 真裕が足を上げて四球目を投げる。彼女の右腕から放たれた白球は真っ直ぐ進むと、優築のミットに吸い込まれていった。あまりのナイスボールに、宇野はまるで金縛りにあったかの如くスイングできない。


「ストライク、バッターアウト!」

「おし!」


 宇野から見逃し三振を奪い、真裕は小さく拳を握る。これでスリーアウト。先頭の万里香にヒットを打たれたものの、京子のファインプレーと気合の籠った自らの投球で無失点に抑えた。



See you next base……


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