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ベース⚾ガール!!~HIGHER~  作者: ドラらん
第五章 友よ
51/223

50th BASE

お読みいただきありがとうございます。


新章は紅白戦回から。

普段の試合とはまた違った描き方になると思うので、その辺りをお楽しみください。


 五月も下旬に差し掛かり、来週からは六月に突入する。ここ数日で気温は一気に上昇。教室で授業を受けているだけで汗ばむ日もあり、校内では早くクーラーを使えるようにしてくれという声が日に日に増えてきた。今日も強い陽射しが照り付ける中、私たちは紅白戦を行う。


「紅組のピッチャーは春歌、キャッチャーは優築、打順は一番ショート、昴」

「はい!」

「……白組のピッチャーは真裕、キャッチャーは菜々花、打順は一番ショート、京子」

「はい……」


 監督から続々とメンバーが発表されていく。京子ちゃんと昴ちゃんをどちらも一番ショートで起用している辺り、監督としても二人に何か無言のメッセージを送っているのかもしれない。


「それでは両チーム支度に掛かれ! 二〇分後に試合を始めるぞ」

「はい」


 チーム毎にベンチを分かれ、作戦が練られる。並行して私と春歌ちゃんはブルペンでの投球練習に入った。


「こうやって春歌ちゃんと投げ合うのは初めてだよね。お互い楽しもうね」

「はい? この試合は夏大のメンバー選考に関わってくるんですよ。楽しむとか悠長なこと言ってられないですよ。ほんと、そういうところ嫌いです」


 春歌ちゃんはもう戦闘モードに入っているみたいだ。まあ普通の時でもこんな返し方をされそうだが。


「集合!」


 監督の言った通り、オーダーが発表されてからぴったり二〇分後に試合が始められる。私たちは球審を務めるコーチの森繁和先生を介して本塁に整列する。


「それではただいまより、紅白戦を開始する。もちろん全力で戦ってほしいが、怪我だけはしないように。では礼!」

「よろしくお願いします!」


 私たち白組は後攻。そのため私は挨拶が終わるとその足でマウンドに登る。


「一回、締まっていくぞ!」

「おー!」


 菜々花ちゃんの叫びがグラウンドに木霊す。それから紅組の先頭打者である昴ちゃんが、丁重にお辞儀をしながら左打席に入った。


 初球のサインは外角低めへのストレート。私は大きく振りかぶり、この試合の第一球目投じる。

 投球は狙いよりもやや内に入った。昴ちゃんは果敢にバットを出し、快音を鳴らす。


「セカン!」


 打球は私の顔の横を掠め、セカンドの頭上を越えていく。センター前へのヒットとなり、いきなり昴ちゃんが出塁した。


「まじかあ……。ナイスバッティング」


 私は思わず唇を噛む。少し甘くなったとはいえ、初球から打たれるとは。決して手加減しているわけではないが、紅白戦という考えは捨てて普通の対外試合の一つとして臨んだ方が良さそうだ。


 二番は愛さん。一球目のアウトローへの直球は、バットを立てた体勢で見送られる。


「ボール」


 見逃し方を見る限り、送りバントという選択肢は無いみたいだ。この紅白戦では監督はバックネット裏で観戦しているだけなので、作戦はそれぞれのチームが自分たちで考える。中心となって指揮を執るのは紅組が杏玖さん、白組は洋子さんとなっている。


 二球目は低めのカーブでストライクを取る。エンドランなどがあるとすればこの辺で動いてきそうだが、どうするだろうか。

 菜々花ちゃんのサインはアウトコースのツーシーム。安易に引っ張らせない狙いだろう。私はすんなりと頷き、セットポジションから三球目を投じる。


 ランナーの昴ちゃんに動く気配は無い。愛さんは無理に引っ張ることはせず、逆方向に鋭いゴロを打った。


「ショート」


 打球はショートの定位置から二塁ベース寄りに少しずれたところへ転がる。京子ちゃんが正面に回り込んで捕球する。このまま併殺に仕留めたい。


「ゲッツー取れるよ! あっ……」


 ところが京子ちゃんはボールを握り替える時にジャックルしてしまった。すかさず拾い上げるも二塁は間に合わず、一塁へと送球する。こちらではアウトを取ることができた。


「ああ……。ごめん、真裕」

「気にしないで。切り替えていこう」

「うん、ありがとう……」


 私が元気付けると、京子ちゃんは僅かにほっとした表情を見せる。あの程度の打球であればゲッツーを取ってもらいたかったが、できなかったことを引きずっても仕方が無い。


 結果的にランナーが得点圏に進み、紅組のクリーンナップを迎える。打席では三番に入っている紗愛蘭ちゃんがバットを構えていた。二人の目と目が合った瞬間、互いの口角が小さく上がり、それと同時に私は急激に体内の血流が増進していくのを感じる。


 その初球、私は内角低めに直球を投げ込む。ストライクゾーン一杯に決め、紗愛蘭ちゃんにバットを振る気すら起こさせない。


 二球目、私たちは厳しい攻めを続け、紗愛蘭ちゃんの膝元を突く。紗愛蘭ちゃんはお尻を後ろに引きながら見送る。


「ボール」


 これでひとまず体に近いコースを意識させられただろう。ただだからといって紗愛蘭ちゃんは簡単にはアウトになってくれない。ここはこの後の対戦のことも見越して、紗愛蘭ちゃんの嫌がる配球をしていきたい。


 三球目、菜々花ちゃんはインローへのカーブを要求してきた。紗愛蘭ちゃんは速球を流して強い打球を放つのが得意な一方で、緩い球への対応は若干苦手としている。私は首を縦に動かし、ランナーを一瞥してから投球モーションに入る。

 私の腕から放たれたカーブが、真ん中付近から山なりに曲がっていく。紗愛蘭ちゃんは背筋を伸び上がらせるようなバッティングでセンターに返そうとする。


「ピッチ!」


 良い当たりではあったが、打球は私の真正面に飛ぶ。私は膝の前で捕球すると、振り返って二塁ランナーの動きを確認。ベースに戻るのを見てから一塁に投じ、紗愛蘭ちゃんをアウトにした。


「バッターアウト、チェンジ」


 続く四番の杏玖さんはツーボールツーストライクからスライダーを振らせて三振を奪う。初っ端から背負ったピンチだったが、何とか切り抜けることができた。


See you next base……


紅白戦の主な出場選手


紅組


ピッチャー:春歌

キャッチャー:優築

セカンド:愛

サード:杏玖

ショート:昴

レフト:逢依

センター:ゆり

ライト:紗愛蘭


白組

ピッチャー:真裕

キャッチャー:菜々花

ファースト:珠音

サード:きさら

ショート:京子

レフト:栄輝

センター:洋子

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