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ベース⚾ガール!!~HIGHER~  作者: ドラらん
第三章 先輩として
32/223

31th BASE

お読みいただきありがとうございます。


今日で仕事納めという方も多いのではないでしょうか。

明日からの年末年始休暇、思う存分楽しみたいと思います。


 試合は五回表に入る。打順は八番の丸尾から。三回表に浜静が二点目を奪った時と同じ巡りとなる。


(八、九番はさっきもすんなり抑えられた。さっさとツーアウトまで取っちゃおう)


 春歌はロジンバックを指先に付け、優築からのサインを受け取る。外角へのストレート。春歌はゆったりと足を上げ、一球目を投じた。


 これに対して丸尾は打って出た。素直なバッティングでマウンドに弾き返す。


「え?」


 咄嗟に春歌がグラブを出すも、打球はその下を抜けていく。センターへのヒットとなり、ノーアウトから丸尾が出塁する。


(しまった。油断しちゃった……)


 外野から返されたボールを貰いながら、春歌は頬を歪めて悔やむ。前の打席で軽々打ち取っていたが故に、やや気の緩んだ投球をしてしまった。


「ファースト! セカンドは無理。一つ大事にね」

「分かった」


 この後の桜は一球で送りバントを決める。アウト一個と引き換えにランナーが二塁へ進み、一番に戻って濱地が三回目の打席に立つ。


(こっちがチャンスを活かせなかったすぐ後に浜静がチャンスを迎えた。これで点が入ったら一気に向こうのペースになる。そうなるのは避けないと)


 濱地への一球目、優築はアウトローへのカーブを要求する。春歌の投球はやや中に入ったが、濱地が見逃してストライクとなる。


 二球目もカーブ。こちらは低めに外れた。


(球種構わずどんどん振ってくるかと思ったけど、違うみたいね。ならもう一球カーブを続けてみるか)

(わ、分かりました……)


 三球目。バッテリーは外角低めへのカーブを続ける。濱地は打ちにいったが、打球はバックネットに当たってファールとなる。


「ちっ、またカーブかよ……」


 打ち終わった濱地は打席の中で舌を打つ。カーブしか来ないことに苛立ちを覚え始めていた。その様子を目にした優築は、ホームベースに付いた土を手で払いながら二度三度小さく頷く。


(なるほど。速い球を真っ向から打っていきたいってことね。でも残念。その願いには応えられないから)


 優築は再度カーブのサインを出す。どうやらこの打席はカーブを貫くつもりのようだ。こうした相手の嫌がることが分かると徹底してそれを続けるしつこさは、打者からすればもはや脅威と言えよう。


 ところがその他にもこのカーブ攻めを快く思っていない者がいた。マウンド上の春歌だ。


(四球連続でカーブ? 追い込んだんだから、一球くらいインコースを見せるべきでしょ。まあ良いや。ここは低めに外すんだし、バッターには振らないでおいてもらおう)


 四球目。春歌は渋々カーブを投じる。ワンバウンドの投球となるも、濱地は辛抱できずにバットを振ってしまった。


「え!?」


 春歌は目を丸くする。ボールは優築のレガースに弾かれ、ベースの前へと転がる。それを見た二塁ランナーの丸尾はスタートを切った。優築は急いで三塁へ送球しようとする。


「ファール、ファール!」


 しかしそんな一連のプレーを制止するかのように、球審が両手を広げて声を張り上げる。どうやら空振りではなく、ボールは濱地のバットの先端に当たっていたみたいだ。


「何だ、ファールか。春歌、ナイスボール。良い低さだった。もう一球行きましょう」

「は、はい」


 優築は拾ったボールを春歌に投げ返すと、手を叩いて彼女を鼓舞する。だが返球を捕る春歌は僅かに頬を引き攣らせていた。


(もう一球行こうって、まさかまたカーブを投げさせる気?)


 春歌はもう一度ロジンバックを触ってからサインを覗き込む。出されたのは案の定カーブ。これには春歌も思わず首を振る。


(まさかのカーブじゃん! 流石にそれはできないです。あれだけ続けたんだから十分でしょ。ストレートを投げさせてください)

(あら、拒否されてしまった。ピッチャーとしては緩い球を投げるのは勇気がいるし、これ以上続けさせるのは酷な話か。どうしましょう。緩急を活かすなら真っ直ぐが一番だけど、正直にストライクゾーンに行くのは危険。ならこのコースでどうだ)


 改めてのサイン交換。優築は直球を要求すると、中腰にミットを構えた。


(高めのボールゾーン? なるほど、打者の打ち気を煽って、振らせにいこうってわけか。良いでしょう。でもせっかく投げるんだから、厳しくいかないとね)


 春歌は少しだけ口角を持ち上げて(うべな)い、セットポジションに就く。それから二塁ランナーを一瞥しつつ足を上げ、躊躇なく右腕を振って五球目を投げた。


「うわ!」


 投球は打者の胸元へと一直線に進んでいく。打ちにいくつもりで踏み込んでいた濱地は始動が遅れ、避けることもスイングすることも両方が中途半端になってしまう。


「振った振った!」


 ボールが優築のミットに収まるや否や、春歌はハーフスイングを主張する。球審が速やかに問いかけたところ、一塁塁審は左拳を突き上げてアウトのポーズを作った。


「スイング。バッターアウト」

「まじ? 最悪……」


 濱地は不服そうな顔をして打席を後にする。彼女にとってはアンラッキー、バッテリーにとってはラッキーな形で三振となり、ランナーが進むことなくアウトカウントが増えた。


(よっしゃ。どんなもんだい。こうやってやればピンチだって抑えられるんだ)


 春歌は小さく右の拳を握る。怖れることなく高めに投げ込んだことが功を奏した。けれどもキャッチャーの優築は、この一球に関してあまり納得できていなかった。


(結果的には空振りを奪えたけど、もう少し中にずれていれば顔面へのデッドボールになっていたかもしれない。それに春歌の投げっぷりを見るに、端からあのコースを狙ったように思われるのは気のせいだろうか。いずれにせよ、あまり危ないことにならないように注意しておかないと)


 バッテリー間に仄かな不協和音が漂い出す。ただ何はともあれ、あとアウト一つを取れば亀ヶ崎はピンチを切り抜けられる。


 打席に入るのは二番の穂波。三回には二点目を叩き出すタイムリーを放っている。その後ろには花輪と大野が控えており、彼女たちに回ればビッグイニングになる可能性も否めない。この穂波を春歌が打ち取れるかどうかは、試合のターニングポイントとなりそうだ。



See you next base……



PLAYERFILE.16:濱地憲江(はまじ・のりえ)

学年:一年生

誕生日:8/20

投/打:右/右

守備位置:右翼手

身長/体重:155/53


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