表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベース⚾ガール!!~HIGHER~  作者: ドラらん
第十二章 金メッキの戦士
189/223

187th BASE

お読みいただきありがとうございます。


オレスと紗愛蘭の力で空から先制点を奪えました!

このまま追加点と行きたいですが、かつてのエースはそんなこと許してくれないでしょうね。

(真裕は大学生相手にも全く怯んでないな。前々から度胸のある子だったし、これはそんなに点を取れないかもね。なら私も締めていかなくちゃ!)


 二回表。空が気合を入れ直してマウンドへ登る。真裕の調子を見ると、もう一点もやれない。


「サード」

「オーライ」


 空は六番の菜々花をサードゴロに打ち取る。続く七番の栄輝はスライダー二球を空振りさせると、三球目は外角低めのボール気味のコースにストレートを投げ込む。


「バッターアウト!」


 栄輝は追い込まれていながら長打を狙ったスイングで応戦するも、バットは届かず。空がこの試合二つ目の三振を奪う。


(あれだけバットを振れるのは魅力的だけど、当たる気配が無さ過ぎるね。無茶振りになってる気もするし。相手投手に合わせてスイングするってのを覚えないと、レギュラーは厳しいかなあ)


 ツーアウトランナー無しで打席に入ったのは八番の嵐。今のところ下位の打順での起用が続いているものの、新チームになって一番結果を残しているのは彼女だろう。


(嵐がこうやって試合に出てるってことは、怪我は大分良くなったみたいだね。復帰した後は結構活躍してるらしいし、この子はこの子で投げるのが楽しみだ)

(空さんを打てればレギュラーがグッと近付く。一本でも良いからヒットが欲しい)


 一球目、空が投じたのはインコースへのストレート。嵐は見送り、ストライクが一つ先行する。


(右打者にはこのクロスファイヤーがあるんだよな。これで腰を引かせたところに、外のボールを効果的に使ってくる)


 二球目。アウトローにカーブが来る。予測していた嵐は打ちに出るが、捉えることはできない。ファーストへの弱いゴロが転がる。


「アウト」


 来るコースが分かっていても打てない。初球のクロスファイヤーによって嵐は内角を意識付けられ、外角に対して強いスイングができなくなっていた。


(やられたな……。けどまだ一打席目だ。次は打つ)


 嵐はリベンジを誓ってベンチに戻る。この回は空が一人のランナーも許さなかった。


 その後は三回裏までスコアが変動せず。一対〇と亀ヶ崎がリードを保つ。


 四回表。両チーム打順は二巡目に入っており、亀ヶ崎の攻撃は三番のオレスから始まる。


「ネイマートル、もう一本打って! 私も続くから、二人で追加点取ろう!」


 ネクストバッターズサークルから紗愛蘭がオレスに声援を送る。その声にオレスは振り返ることなく、バットを構えた。


(また何か言ってる。五月蝿いわね。……そうやって最初は誰しも、仲良くしようとする。けどどうせ後で追い出すんでしょ)


 初球、膝元にストレートが来る。オレスはタイミングを合わせるだけに留めて見逃し、ストライクとなる。


(中々良いボールを投げるわね。一打席目の初球は私の腕を試したってところか。もしもまだその気があるなら、今の球をもう一球投げてくる可能性は高い。打ち返してやるわ)

(初球は見てきたか。インコースをどれだけ捌けるかは、打者の技量を見極めるのに丁度良い。狙われるの承知で続けてみよう)


 二球目。空は再びクロスファイヤーのストレートを投じる。オレスは左足をやや開いて踏み込み、スイングするための間を作ってセンター返しを放つ。


「おお!?」


 勢いのあるライナーが空の顔面を襲う。空は瞬時にグラブを動かしてキャッチした。


「アウト」

「ふう……。危ねえ」


 一瞬肝を冷やした空だったが、最後は安寧の表情に変わる。打ちも打ったり捕りも捕ったり。オレスの二打席目はピッチャーライナーに終わる。


(インコースでもあっさり打ったねえ。これはまじもんの凄い打者だ。けどどうして引っ張らなかったんだろう。態とこっちに打ってきたように思えたけど)


 そう疑問を抱く空。一般的に内角はミートポイントを体の前に据え、引っ張ってレフト方面に打とうとするもの。その方が飛距離も出て長打になりやすい。

 しかし、オレスはミートポイントを下げてセンターから右方向に打ち返そうとしていた。ランナーがいる場面や追い込まれている状況なら理解できるが、今回は自由に打てる上、内角に来ることもほぼ察しが付いていた。如何に流すのが得意なオレスでも、引っ張るべきだったように思われる。


「ちっ……」


 そんなオレスは空が捕球したのを見届けると、軽く舌打ちをして打席を後にする。次打者の紗愛蘭がすれ違いざまに声を掛けた。


「惜しかったね。けどナイスバッティング。私も見習わなくちゃ」

「ふん。別に大したことじゃないわよ。それより何でどいつもこいつも気安く話しかけてくるのよ。気が散る」


 紗愛蘭の言葉をばっさり切り捨て、オレスはベンチに姿を消す。紗愛蘭は物哀し気に鼻息を漏らす。


「……何でって、仲間だからに決まってるじゃん」


 ワンナウトランナー無しで紗愛蘭が二打席目に臨む。一打席目はしぶといタイムリーで先制点を呼び込んだ。


(ヒットはヒットでも明らかに力負けしてたし、飛んだコースが良かっただけだ。今度は文句無しの打球を打つぞ)


 初球、空はカーブから入ってくる。外のボールゾーンに逃げていく投球に、紗愛蘭は手を出さない。


 二球目もカーブ。これも外角に外れた。ストライクの取れぬままツーボールとなる。


(空さんがカーブを続けるって珍しいな。次の真っ直ぐをより速く見せるためか?)


 三球目。紗愛蘭の予想に反し、またもやカーブが来た。紗愛蘭は全く反応せずに見送る。こちらはストライクとなった。


(まさかの三球連続か……。空さんならもう一球投げてくるかも。けどこのカウントでそれを狙うのはリスクが大きい。素直に真っ直ぐに張る)


 三球目、空は真ん中から曲がるスライダーを投じる。ストレート待ちの紗愛蘭はその変化に付いていけず、振ったバットは空を切る。


(やっぱり真っ直ぐに絞ってたか。紗愛蘭ならそうしてくると思ったよ)


 空は紗愛蘭の胸の内を読んでいた。あっさりと並行カウントまで持ち直し、紗愛蘭を追い込む。


(今のは自分で考えて打ちにいった結果だ。だから悪い空振りじゃない。まだストライク一つ分のチャンスがあるから、切り替える)


 一旦打席を外し、紗愛蘭は仕切り直しを図る。空は決め球に何を持ってくるだろうか。


(一打席目はチェンジアップを使わなかった。勝負所まで残しておきたいとするなら、ここはそれ以外で来ると思う。配球の流れとしては次こそ真っ直ぐなんじゃないかな)


 紗愛蘭はストレートをバットの芯で弾き返すことを念頭に置く。ただ一点張りはできず、他の球種にも備える。


 五球目、空のストレートがインローに向かって投じられた。紗愛蘭は右中間突破を目論んでスイングする。


「ピッチャー」


 ところが打球は空の前に弱々しく転がる。ピッチャーゴロとなってしまった。


(甘いよ紗愛蘭。真っ直ぐを打ちたいと思ってたんだろうけど、ツーストライクだからそれ以外も頭に入れておかなきゃいけない。それで打たれるほど私の真っ直ぐはやわじゃないよ)

(また捉えられなかった。あれだけ緩い球を見せられて、しかも追い込まれた後に真っ直ぐを投げられると相当厳しい)


 紗愛蘭と空の二度目の対戦は、先輩の意地を見せた空に軍配が上がる。空は更に五番のゆりもセカンドフライに仕留め、亀ヶ崎のクリーンナップを三人で退けた。



See you next base……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ