表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベース⚾ガール!!~HIGHER~  作者: ドラらん
第二章 女子vs男子!
18/223

17th BASE

お読みいただきありがとうございます。


最近腰が痛くて困っております。

そのせいでどうしても集中力が散漫になり、色々な作業が思うように進みません……。

早く治って(切実)。


 打席には三番の羽嶋が入る。水田には及ばないものの彼も好打者であり、侮ることはできない。


(羽嶋君は真裕からもヒットを放ってる。ツーアウトになったからって安心せず、細心の注意を払わないと。まずはアウトローのカーブで入ろう)

(ここも外角から……。得点圏にランナーがいるから尚更慎重になるんだろうし、ひとまずは仕方無いか)


 一球目。春歌は配球に不満を抱きつつも、その通りに投げる。


「ボ―ル」


 羽嶋はバットを振らずに見逃した。投球は外角低めをきっちりと突いていたが、ボールと宣告される。


「ボ―ルツー」


 二球目はストレート。こちらも低めの良いコースに行きながら、球審は微妙に外れているという判定を下す。それに対して春歌は僅かに顔を顰める。


(ちっ……。どっちも入ってないのか。中々インコースに投げさせてもらえないから、リズムが狂ってきてる)


 自分の思い描いているピッチングができていないことに煩わしさは増すばかり。マウンドに上がった時の晴れやかな心は影を潜め、表情からも憂いが読み取れる。


(どちらにせよ次の球でストライクを取らないと。でも私の球威じゃ、甘く入ったら確実に打たれる……)


 三球目。春歌は低めのストレートを続ける。二球目と同様にストライクでもおかしくない投球であったが、最後の一伸びが足りず、球審の手は上がらない。これで一つもストライクが入らないまま、スリーボールとなる。


「ボ―ル、フォア」 


 最終的に四球目こそストライクを取れたものの、五球目はボール半個分外れた。際どいコースを(ことごと)く見極められ、春歌は羽嶋に四球を与えてしまう。


 こうして塁が全て埋まり、四番の水田に打席が回る。女子野球部の内野陣は一呼吸を置くためにマウンドに集合する。


「相手は四番だけど、その辺は気にしなくて良い。腕は振れてるし良い球も来てるから、持ち味を見失わずに自分のピッチングをすれば自ずと良い結果は出る。そのことを肝に銘じて投げてきて」

「はい……」


 菜々花がほんの僅かに語気を強め、春歌に言い聞かせる。傍からだと少し叱っているようにも見えなくもないが、このような言い方をするのは春歌の能力を買っているからこそ。昴を含めその場にいた人間は皆それを察していたため、誰も横槍を入れることはなかった。

 その後二人の話が終わったところを見計らい、杏玖が守備の留意点を確認する。


「満塁だからどこでアウトを取っても良い。少しファンブルしたり取り損ねたりしても焦らず、アウトが取れるところを冷静に見極めてプレーしよう。もしも打球が外野に抜けて、中継に入ることになった人は、周りの指示をよく聞いて動くように」

「はい!」

「おし。バッテリーも野手も、リードしてるからって雑になったら駄目だよ。一個一個のプレーが自分のためになるんだから、丁寧にやっていこう!」

「おー!」


 マウンドの輪が解けていく。ただし昴だけは残り、春歌に一言掛ける。


「ねえ春歌、緊張しているわけじゃないんだよね?」

「え? まあそんなには。単に自分のピッチングをさせてもらえてないだけ。それさえできれば、こんなのピンチでも何でもないよ」


 春歌はそれほど乱れていない足場を均しながら言う。同級生の昴が相手だからか話し方は素っ気無く、心なしか苛立ちをぶつけているようにも見える。


「そっか。せっかくだから瞑想の時みたいに手を握るのやってみようと思ったんだけど、どうかな?」

「別に要らない。それをやったからって抑えられるもんでもないだろうし」


 昴が右手を差し出そうとするも、春歌はこれを拒む。誰かに助けてもらわなくても自分は落ち着いて投げられている。そう春歌自身は思っていた。


「分かった。まあ無理にやっても意味は無いからね。私のところに来た打球は全部アウトにするから、安心して打たせて」

「はいはい。まあ私は私のやるべきことをするだけだけど」

「それもそうだね。頼んだよ」


 春歌の背中を軽く叩いて鼓舞し、昴は定位置に戻る。春歌は見送ることはせず、そそくさと打者の水田に目を向ける。


(私は自分の持ち味を見失ってなんかいない。出せるような投球をさせてもらえてないだけだ。でももう形振(なりふ)り構っていられない。強引にでも私のスタイルでやらせてもらう)


 試合再開。春歌は険しい目つきでサインを覗く。アウトコースへのカットボール。セットポジションに入った春歌はゆったりと足を上げ、水田に初球を投じる。


「ストライク」


 水田はバットを動かすことなく見送った。それから片足だけ打席を外し、口を窄めて何度か首を縦に揺らす。


(一球目から良いところに投げてくるなあ。狙って投げてるんだったら凄いよ。しかも途中まで真っ直ぐに見えたし、変化球のキレもある。良い投手なのは確かだね)


 二球目はカーブ。これも外角一杯に決まった。水田は打ちにいく気はあったものの手を出せず、思わず顔を伏せて苦笑いを浮かべる。


(まじかよ。何もできずにツーストライクになっちゃった。でもこれ以上良いコースには来ないって考えたら、気は楽になるかな)


 投手が追い込むよりも前に際どいコースでストライクを取った時、勝負球に取っておきたかったと嘆くことがよくある。何故ならその後どれほど良い球を投げようと、打者にとっては相対的に打ちやすい球に感じられてしまうからだ。水田ともなればほんの僅かに甘くなっただけでも絶好球が来たと捉えるだろう。バッテリーが圧倒的優位に立ったのは間違いないが、ここからの配球は少しばかり頭を悩ませることになりそうだ。



See you next base……


春歌のここまでの投球内容


①岡部 空振り三振 ワンナウト

②中山 ライト前ヒット ワンナウトランナー一塁

③曽根 センター前ヒット ワンナウトランナー一、二塁

④木下 ショートゴロ(昴ファインプレー) ツーアウトランナー一、三塁

⑤羽嶋 四球 ツーアウトランナー満塁

⑥水田 ???


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ