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ベース⚾ガール!!~HIGHER~  作者: ドラらん
第十一章 私がやるんだ
174/223

172nd BASE

お読みいただきありがとうございます。


真裕の好投もあり、試合は静かに立ち上がりました。

ここらで先制点が欲しいですね。

 ワンナウトランナー無しとなり、二番のゆりが打席に入る。一球目、外へ逃げるスライダーにバットを止める。


「ボール」


 前の打席に初球を打たれているため、教知バッテリーは慎重な入りをしてきた。それはゆりも察知しており、容易に見極める。


(まあ相手もそれなりに警戒はしてくるよね。でもボールになった以上は続けるわけにはいかないだろうし、次の球を狙っていくよ)


 二球目、低めにカーブが来る。ゆりは打ちに出るも、当たり損ないのゴロが一塁側のファールゾーンを転々とする。


(カーブは結構曲がりが大きいな。甘くならない限りちょっと捉えにくそう)


 ゆりは今の一球の残像を思い返しながら、二度三度素振りをする。続く三球目、池下は二球連続でカーブを使ってきた。


「ストライクツー」


 アウトローへの投球に対しゆりは見送るも、判定はストライク。これで追い込まれる。


(ここまで変化球しか投げてないし、次は真っ直ぐを挟んでくるかな? ただスライダーとかで空振り奪いにくる可能性もあるから、どっちも備えておかないと)


 四球目、池下から投じられたのは内角低めのストレート。ゆりはタイミングを合わせられずカットしようとするも、打球はフェアゾーンに入ってしまう。力の無いゴロをファーストの矢田が掴み、自らベースを踏んだ。


「アウト」

「あーん……。ファールにできなかった」


 ゆりは難しい球をファールにする技術はそれほど高くない。そのためツーストライクになると、良くも悪くもあっさりと結果が出てしまう。二番打者を務めるならば、もう少し相手投手の球数を稼ぎたいところだ。


 ツーアウトとなり、打席には三番の京子が入る。今回はランナーがいないため、チャンスメイクの役割が求められる。


(ここは前までやっていたように打てるから楽だな。とにかく塁に出て、紗愛蘭に繋げば良いんだ)


 京子はワンボールワンストライクからの三球目、真ん中やや内寄りのスライダーを捉えた。センター返しとなった打球が二遊間をゴロで破っていく。


(やっぱりランナーいないと気楽に打てるよ。ウチで得点しないといけないと思うと何か窮屈に感じちゃう)


 打順は四番の紗愛蘭に回る。彼女が丁寧にお辞儀をして打席に入る傍ら、京子は池下がセットポジションに就いたのを見て素早くリードする。ベンチのサインはグリーンライトなので、走れる機会があれば走りたい。


 初球はアウトコースへのストレートが外れ、紗愛蘭はバットを動かすことなく見送る。京子もスタートのタイミングを見計らうだけに留まった。


(クイックは普通かな。キャッチャーの肩が強いのかは分かんないし、チャレンジしてみるか)


 一度池下から牽制が投じられる。京子はヘッドスライディングで帰塁。余裕を持ってセーフになれたため、その後のリードを半歩大きくする。


 改めて池下がセットポジションに入り、足を上げて二球目の投球モーションを起こす。それに合わせて京子は盗塁を仕掛けた。


「走った!」


 キャッチャーの東山(ひがしやま)が低めのストレートを捕った流れで二塁へ送球する。しかし高めに浮いてしまい、ショートの久屋はジャンプして捕球せざるを得ない。その隙に京子の右足がベースに触れる。


「セーフ」


 盗塁成功。京子は両膝に付いた土を払いながら相好を崩す。これで紗愛蘭の一打席目と同じ局面となり、教知の外野陣はそれぞれの守備位置をやや前に出す。


 打席の紗愛蘭はバッティンググラブを外し、手の汗を拭う。盗塁間の投球はボールと判定されたため、次はストライクを取りにくるかもしれない。


(ランナーは京子だし、さっきみたいな浅いヒットでも還れる可能性はある。ただコース次第では引っ張って、外野の間を抜いていきたい)


 三球目、池下の投じたカーブがワンバウンドとなった。東山は両手で抱え込むようにして捕り、ワイルドピッチを防ぐ。だがこれでボールが三つ先行する。


(甘い球は来なかったか。これはもう私とは勝負しないかも)


 紗愛蘭の予感は半ば的中する。四球目、池下の投球は内角へのボールになるスライダー。振ってくれれば儲け物という一球だったが、紗愛蘭が反応するわけがない。


(これはこれでしょうがない。菜々花に打ってもらおう)


 四球となり、紗愛蘭が一塁へと歩く。次打者は五番の菜々花。第一打席に続いてチャンスでの打席を迎える。


(一打席目もバッティングの形は悪くなかった。あんな感じで打てれば良い)


 初球はアウトコースに逃げるスライダー。菜々花は見送ってストライクとなる。


(心做しかこの回は変化球が増えてるな。元々そういうタイプのピッチャーなのかも。それならその変化球を狙わないとね)


 二球目。膝元にストレートが来る。こちらは外れた。


(やっぱり真っ直ぐは見せ球にして、変化球を軸にする配球か。けどそれをするにはスライダーとカーブだけじゃ足りないと思う。もう一個球種があるんじゃないか?)


 三球目、菜々花はインコースに来たカーブを打って出る。ただバットを出すタイミングが早過ぎ、打球はレフトのファールゾーンに切れていく。


(これで今まで見せた球種は全部使った。ほんとにまだ出てない変化球があるのかも。来るとしたら次だ)


 ワンボールツーストライクからの四球目。池下は二塁への牽制を挟んでから投球動作に入る。一体何を投げてくるのか。


「え……?」


 刹那、菜々花は自分の目を疑う。池下の右腕から放たれたのは、とんでもない山なりのスローボールだった。その高さはとある駅前に設置されている、大きな女の子のマネキンを彷彿とさせる。


(嘘でしょ……。しかもストライクっぽいコースに来てるじゃん)


 菜々花は溜めに溜めて打ちに出るも、泳がされて腰砕けのスイングになる。弱いゴロがセカンドの前方を転がった。


「オーライ」


 本山は素早く前に出てくると、最後はランニングスローで一塁へ送球。菜々花の全力疾走も虚しくアウトとなる。


「やった! 上手くいった!」


 池下は会心の笑みを浮かべ、グラブを叩く。驚愕のスローボールが決まり、ピンチを切り抜けた。


「いやあ……。あれは打てないよ」


 一方の菜々花はヘルメットを脱いで項垂れ、為す術が無いと言いたげに首を横に振る。自身二度目の好機も活かせず。紗愛蘭の後を打つ重要な立場ながら、苦しい結果となっている。



See you next base……


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