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ベース⚾ガール!!~HIGHER~  作者: ドラらん
第十一章 私がやるんだ
172/223

170th BASE

お読みいただきありがとうございます。


教知大学の選手たちの名前も、あるものに由来しています。

何かお分かりでしょうか?


※次回より更新日時を毎週月・金曜日の17時に変更いたします。171話の更新は5/14となります。


「ナイスピッチング。この調子なら、直球でガンガン押していけそうだね」

「ほんと? それなら良かった。じゃあどしどしサイン出してね」


 真裕と菜々花は愉快気に互いのグラブを重ねる。一回裏の内容が続けられれば、それほど点は取られないだろう。


 そうなれば亀ヶ崎としては早めに得点し、優位に立っておきたい。二回表の攻撃は六番の真裕から始まる。


「おし! 打つ方も頑張るぞ!」


 マウンドでの落ち着き具合とは打って変わって、真裕は意気揚々と打席に向かう。投げることと同じくらいに打つことも好きなため、打順が上がって嬉しい限りだ。


 初球は外角のストレート。真裕はバットに当てるも、一塁側へのファールとなる。


(前のチームではあんまり打てなかったから、新チームではバッティングでも貢献していかないとね。そのためにどんどんバットを振っていくよ!)


 二球目、池下の投球は再びアウトコースへ行く。真裕は当然の如くスイングしていったが、球種はスライダーだった。


「おっとっと……」


 まさに絵に描いたような空振り。反動で右足が打席の外に出る。真裕はあっさりと追い込まれた。


(スライダーもあるのか。スピード的にはカットボールに近いかな? ツーストライクになったし、ここからは思い切り振っていくだけじゃ駄目だ)


 真裕はバットの持ち方を一握り余した。三球目、池下はインローにストレートを投げてくる。


「ボール」


 際どいコースも僅かに外れる。真裕はそれなりに自信を持った上で手を出さなかった。


(この球速ならストライクボールの見極めは難しくないな。次はカーブで来る気がするけど、どうかな?)


 四球目。真裕はカーブを予測したが、池下から投じられたのは内角へのストレートだ。瞬時に反応して芯に近い部分で打ち返すも、打球は上がらず。セカンドに飛んだゴロを本山が危なげなく処理する。


「アウト」

「……打たされちゃった。残念」


 凡退した真裕は苦々しく笑いながらベンチへと引き返す。代わって打席には、七番の栄輝が入る。


「お願いします」


 落ち着きのある低い声で挨拶する栄輝。彼女は出番こそ無かったものの、夏大では春歌たちと同じように一年生にしてベンチ入りを果たした。壺に嵌ればどこまでも飛ばす力を持っており、その飛距離はチーム内で随一を誇る。


 栄輝は初球から持ち前のフルスイングを披露。ところが池下にボールになるカーブを投げられ、バットは空を切る。


(カーブかあ……。真っ直ぐ投げてきてくれないかな)


 ずれたヘルメットの位置を直しつつ、栄輝は構え直す。ストレートを待っているようだが、今の空振りを見て教知バッテリーが素直に投げてくれるとは思えない。


 二球目、やはり池下は変化球を投じてきた。今度は膝元に切れ込むスライダー。またもや栄輝のバットからは何の音も響かない。


(変化球ばっかりじゃん……。じゃあそっちを打つか。次はまたカーブとかかな?)


 栄輝は真裕と違い、追い込まれてもバットの握り方は変えない。どんなカウントになっても、あくまで長打を狙う。


 三球目。池下の投球はインローに来る。最初はボールゾーンを通っていた直球だが、シュート回転をして中に入ってきた。


「え?」


 栄輝は虚を衝かれる。思わず腰を引いて見逃してしまう。


「ストライク、バッターアウト!」


 球審が高らかと三振を宣告する。結果的に栄輝はバッテリー術中に嵌り、良いように弄ばれた。


「くう……」


 栄輝は奥歯を噛み締め、俯き加減で打席を後にする。それを横目に見ながら、ネクストバッターズサークルから次の打者が出てくる。


「ふう……」


 深い呼吸と共に右打席に立ち、静かに足元を均すのは、二年生の山科(やましな)(らん)である。項の辺りで結ばれた髪は肩甲骨まで真っ直ぐ伸び、毛先では汗の露が光る。


 初球は真ん中から外に曲がるスライダー。嵐はバットを出していくも、空振りを喫する。


(練習では何度も打ってるけど、実戦になるとやっぱり見え方が違うな。タイミングも合わせにくい)


 嵐にとっては、これが久々の試合での打席となる。彼女は五月頃に持病であった腰痛が悪化し、三ヶ月ほど療養していた。当然ながら夏大のメンバー入りもできていない。そのため新チームに馳せる思いは非常に強くなっている。


 二球目、ストレートが高めに外れた。嵐はやや差し込まれ気味に見送る。


(タイミングが遅れてるのは分かってる。なら真っ直ぐはおっつけて逆方向に打つ意識を持って対応しよう)


 三球目もストレートが続く。コースは外角高め。嵐はバットから快音を響かせ、ライト線へライナー性の打球を放つ。


「ファール」


 だが惜しくもファールゾーンへと切れていった。嵐は一塁ベースの手前で引き返し、打席に戻る。


(芯では打てたけど、振り遅れてるから捉えたとは言えない。もう少しミートポイントを前にしないと)


 嵐は広角に打ち分ける技術と、ここぞという場面では長打を狙えるパワーをバランス良く兼ね備えている。今日は八番の打順だが、本調子になればクリーンナップも担える可能性を秘めている。


(もちろんこの試合で全部の感覚が戻るとは思ってないから、焦っても仕方が無い。今日はしっかりとプレーをやり切ることが第一目標になる。けど悠長に構えていられる立場じゃないし、ちょっとでも監督の目に留まるものを見せておきたい)


 四球目。インコースのストレートを、嵐は窮屈なスイングでカットする。捉えるのには時間が掛かりそうだが、決して簡単にはアウトにならない。


(変化球はスライダーの他にカーブがあったな。どっちも追い掛けるのは厳しいけど、少なくともバットに当てられるようにはしておかないと)


 配球の流れを考えるとそろそろ変化球が来る頃だろう。ただ決め付けることはできない。嵐は打席での立ち位置を後ろにし、できるだけ長くボールを見られるようにする。


 五球目。池下から投じられたのはカーブだった。昴に対する勝負球の時のように、緩く大きく真ん中低めへ放物線を描く。


(思ったよりも遅い……。けど粘れ!)


 嵐は少々体勢を崩されながらも、両手からバットを離さずに打ち返す。掬い上げた打球は三塁ベースを越えて外野に飛んでいく。


「フェア!」


 今度はレフト線上に弾んだ。嵐は一塁を蹴り、滑り込むことなく二塁まで到達。それからほんの僅かに安堵の表情を浮かべる。


(ナイスバッティングとは言えないけど、まあ及第点かな。前に出されず我慢できたのは良かったよ)


 嵐は復帰後初打席を二塁打で飾った。初回に続き、亀ヶ崎は再びチャンスを迎える。



See you next base……

STARTING LINEUP


亀ヶ崎

1.木艮野 昴    右/左 セカンド

2.西江 ゆり     右/右 センター

3.陽田 京子    右/左 ショート

4.踽々莉 紗愛蘭 右/左 ライト

5.北本 菜々花   右/右 キャッチャー

6.柳瀬 真裕    右/右 ピッチャー

7.野極 栄輝    右/左 レフト

8.山科 嵐      右/右 ファースト

9.弦月 きさら    右/右 サード


教知

1.赤池    右/右 サード

2.本山    右/右 セカンド

3.矢田    右/右 ファースト

4.高畑    左/左 レフト

5.日比野  右/右 ライト

6.東山(ひがしやま)  右/左 キャッチャー

7.黒川(くろかわ)   右/右 センター

8.久屋(ひさや)   右/右 ショート

9.池下   右/左 ピッチャー

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