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ベース⚾ガール!!~HIGHER~  作者: ドラらん
第十一章 私がやるんだ
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167th BASE

お読みいただきありがとうございます。


もうすぐGWですが、今年も外出は控えることになりそうです。

仕方が無いので料理修行でもしようかな(その前に書いてストック溜めろ)。

 新チームが始まって一週間が経った。最上級生という立場にはまだ慣れないが、杏玖さんや優築さんの三年生がいなくなった状況は何となく受け入れられるようになっている。当初チーム内に流れていた慌ただしい雰囲気も、いつの間にか消えたように思える。


「菜々花ちゃん、ブルペン入るから受けてもらって良い?」

「もちろん。すぐに防具付けるね」


 夏の暑さが猛威を振るう中、私たちは今日も練習に励む。今はフリーバッティングで自分の番が終わり、これからピッチングを行うところだ。


「準備おっけー。行こうか」


 新チームとなってからは菜々花ちゃんに受けてもらうことが多くなった。優築さんの後は彼女が正捕手の第一候補になるので、自然な流れではある。同級生ということもあり、優築さんとはまた違った意味でやりやすさを感じる。


「今日も真っ直ぐ中心で良き?」

「うん。そのつもり」


 夏大後の私は、直球の質を上げることを課題として取り組んでいる。直球で空振りを取れるようになればファールで逃げられることも減り、投球数を抑えられる。更には決め球のスライダーもより活かせるはずと考えたからだ。


「次、高めに行くよ!」


 直球で空振りを取るためにはスピード以上に制球力が重要となる。変化球ならば狙いから少し外れたところに投げても、変化の大きさや鋭さで空振りさせられる。しかし直球にそうした変化は無く、基本的に投球は真っ直ぐ進む。そのため打者が打ち辛いとされるインローやアウトロー、もしくは球威で押す高めのボールゾーンにしっかりと投げ切れなければ、バットに当てられてしまう。


「ナイスボール! 今のは空振り間違い無しだね!」

「ほんと? やったね!」


 高めのボールゾーンに会心の一球が行き、私は無意識にしたり顔をする。インロー、アウトローはこれまでも力を入れて練習してきたが、高めのボールゾーンへ投げるのはほとんどやってこなかった。いくらコントロールが大事と言っても小手先で投げていたのでは打者はバットを振ってくれず、体全体を使ってキレを出さねばならない。これが中々難しく、現状は狙いよりも高くなったり低くなったりしてしまうことが多い。


「じゃあツーボールツーストライクから。前のスライダーが見送られたよ」


 加えてどんな状態でも実行できるよう、私は様々なカウントを設定して投げ込んでいる。菜々花ちゃんも協力的で、今のように配球などを絡めて詳細な場面設定をしてくれる。おかけでより緊張感を持った練習ができている。早く実戦で試したいな。


「次はスライダー行くね」

「了解。どんなとこに来ても止めるから、安心して投げてこい!」


 当たり前だがスライダーを磨くことも忘れていない。菜々花ちゃんもキャッチングの練習になると言うし、球筋を把握してもらうためにもどんどん受けてもらいたい。


「おっと……」


 私の投じたスライダーが、真ん中低めから変化してワンバウンドする。それを菜々花ちゃんはプロテクターに当て、打席の前へと弾いた。


「ナイスストップ!」

「いやー、優築さんと比べたら弾き過ぎだよ。それにこれじゃ、ランナーに走られちゃうからね」


 菜々花ちゃんは悔しそうに転がったボールを拾う。確かに優築さんならもっと手元に弾いていたかもしれない。菜々花ちゃんとしても、やっぱり優築さんを意識している部分があるのだろう。


「ラスト、ストレート行きます!」

「はいよ」


 最後は直球を右打者のアウトローに決め、投球練習を終了。今日は百球近く投げ込んだ。髪や肩周りがびしょ濡れになったが、やりたいことはやれたし、気分的には気持ち良く汗を流せた。


「お疲れ。今日はかなり良かったんじゃない? 真っ直ぐも良いとこ決まってたし、肘の位置も高かったよ」

「うん。自分でも手応えがあった。菜々花ちゃんもお疲れ様。毎回付き合ってくれてありがとうね」

「これぐらいは正捕手になるためには当然のことだよ。どんな調子でもエースが良いピッチングをできるよう導くのが、私の役割だからね」


 私は菜々花ちゃんに右腕を軽くマッサージしてもらいつつ、今日の出来を話し合う。こうしてバッテリー間でコミュニケーションを取り、信頼関係を築いていくのもこの時期には必要な作業だ。




「集合!」

「はい!」


 今日の全体練習が終わった。締めの挨拶の前に、監督から練習試合の予定が伝えられる。


「来週の金曜日、教知(きょうち)大学と練習試合を組んだ。こちらが教知に出向いて、ダブルヘッダーでやるぞ」


 教知大学はここから一時間くらい車を走らせたところにある大学で、亀高からも毎年何人か進学している。野球部間での関わりも深く、去年の夏大前にも練習試合を行った。


「新チームとしては最初の試合となるな。試合だから当然スタメンを選出することになるが、ここでスタメンになった人間がレギュラーということではない。ここを一つのスタートラインとして、競争に勝った者がレギュラーになるんだからな」


 最早お決まりになっているが、監督は勝利を最優先にして采配を振るう。スタメンで起用されていても、結果や内容如何ではすぐに代えられることも有り得る。一方、交代で出てきた選手が活躍すれば、そのままレギュラーに定着する可能性も十分ある。


「人間誰しもに失敗はある。この時期なら特に上手くいかないこともたくさんあるだろうし、それは今後の練習で改善していけば良い。だから失敗を恐れず、勝ちに繋がると考えたプレーにどんどん挑んでいってほしい。俺はそういう選手をたくさん試合に出したいと思ってる」


 監督はミスに対して咎めることはあまりしない。寧ろ果敢に挑戦する姿勢は評価してくれる。誰にでもレギュラーのチャンスがあるこの状況下で試合に出るには、勝利に向けて自分のできることをどれだけ実行しようとするかが鍵となる。


 私も真のエースとなるため、チームを勝たせる投球をしなくてはならない。目指すは完投。完封できたら尚良い。私は自分に「やるんだ!」と強く言い聞かせ、気持ちを昂らせるのだった。



See you next base……


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