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ベース⚾ガール!!~HIGHER~  作者: ドラらん
第二章 女子vs男子!
13/223

12th BASE

お読みいただきありがとうございます。


時折唐突に甘酸っぱい恋愛シーンを書きたくなることがあります。

もしもこの作品でそうした場面が出てきたら、作者は衝動に抗えなかったんだなと思っておいてください(笑)

 四回裏からは両チーム無得点の攻防が続く。そのままグラウンド整備を挟み、六回表に入った。予定ではこの回までで真裕は降板する。


「六回、〇点で抑えるぞ!」

「おー!」


 男子野球部の攻撃は一番の曽根から始まり、一人でも出れば四番の水田に回る。本来なら三人で終わりたいところだが、真裕の中にはもう一度彼と対戦したい気持ちもあった。


(あのまま水田君に打たれて終わるのは嫌だなあ。といってもそんな舐めたこと言って抑えられるほど甘いわけないし、きっちり投げないとね)


 真裕はひとまず水田のことを頭から消し、曽根への投球に向かう。初球、アウトコースに直球を投じる。


「ストライク」


 二球目はカーブ。曽根は打ちに出たが、バットの上っ面に擦らせてしまった。


「オーライ」


 力の無いフライが一二塁間に上がる。セカンドの愛が難なくキャッチし、真裕は順当に一つ目のアウトを取った。


 続いては二番の山尾。初球こそボールとなったものの、二球目と三球目でファールを打たせてストライクを稼ぐ。


(おしおし。こうなったら投げる球は一つだよね。頼みますよ優築さん)


 真裕は期待を膨らませながら本塁を覗う。その視線の先では、優築から望んだ通りのサインが出ていた。


(えへへ、やった。これでツーアウトをいただきますか)


 山尾への四球目。真裕は大きく振りかぶって反動を付けてから、鋭く右腕を振る。

 コースは真ん中低め。追い込まれている状態の山尾はスイングを強いられる。ボールが打者の手元で切れ味良く曲がり、バットを避けるように傾斜して沈んでいく。


「よっしゃ……え?」


 空振り三振……かと思われたが、ここでアクシデントが起こった。ベースの角でワンバウンドしたボールは不規則な跳ね方をし、優築が受け止めきれずに後ろへ逸らしてしまう。


「しまった……」

「お、マジ?」


 山尾はバットを放り捨てて一目散に走り出す。優築が急いでカバーしようとするも間に合わず、振り逃げが成功。ワンナウトランナー一塁となる。


「真裕、ごめんなさい。せっかく空振りさせていたのに」

「いえいえ、気にしないでください。いつもしっかり止めてもらってますし、偶にはこういうことだってありますよ」


 真裕は優築を気遣って悠長に振舞う。ランナーを出してしまったものの、これで併殺がなければ水田に回ることになった。


(ふふっ。水田君ともう一度勝負できる。公式戦なら大変なことだけど、あくまでも練習試合だし、力試しって意味合いでは前向きに捉えても良いはずだよね)


 優築が引き返した後、真裕は誰にも見えないようにうっすらと笑みを浮かべる。だが水田にばかり気を取られてはいけない。前の打者の羽嶋を抑えることが先決である。


(アウトを増やさないことには話にならないけど、理想を言うと得点圏で水田君を相手にしたい。羽嶋君、ボテボテのゴロでも打ってくれないかな)


 羽嶋が打席に入り、真裕は一球目を投げる。内角低めのストレート。若干球威は弱まっており、それを感じ取った羽嶋は思い切って引っ張っていく。快音を発したライナーが三塁線へと飛ぶ。


「サ、サード」

「おいしょ!」


 打球は三塁線を破ろうとする勢いだったが、杏玖がダイビングして止めた。ボールは彼女の手元に零れる。


「杏玖、セカンドは間に合わない! 一個を丁寧に!」

「了解!」


 優築の声掛けに反応してすぐさま起き上がった杏玖は、ボールを拾って一塁に送球し、アウトを取る。その間に山尾は二塁へと駆け込んだ。


「ナイサード! ありがとうございます」


 杏玖に拍手を送る真裕。抜けていれば大ピンチになっていただけに、投手としては感謝してもしきれないファインプレーだった。


(危ない危ない。油断しちゃってたよ。けど兎にも角にも一番良い形で水田君に回った。やられたままで終わるなんて気が済まない。やり返してやる)


 真裕は心のボルテージを最高潮に引き上げる。ただし自我を忘れてはならない。彼女は目を瞑って腹から息を吐き、脈打つ速度を調整する。体と頭の波長がバランス良く結びついたところで目を開け、打席に入った水田と正対する。


(うん、これは良い緊張感だ。さてさて、水田君を捻じ伏せてやりますか)


 初球、真裕は外角低めにツーシームを投じる。打ちにいこうとした水田だったが、変化が掛かっていることに気付いたところでバットを引く。


「ストライク」


 まずはバッテリーがストライクを一つ先行させた。第一打席ではインコース中心、第二打席ではアウトコース中心と全く正反対の攻め方をしているため、この打席ではそれらを総括しつつも毛色の異なる配球になる。そのことはもちろん水田も理解している。


(ツーシームから入ってきたのか。確実にストライクを一つ取っておきたかったんだろうな。このピッチャーにコントロールミスは望めない。球種を絞って一発で仕留めないと。キャッチャーの方はストレートを軸にすることの大切さが分かってるみたいだし、だからこそどこかでカーブを織り交ぜてくるはず。ストライクなら左中間目掛けて打ち返す)


 二球目。バッテリーはインローの直球を使って水田の足元を突く。


「おっと……」


 水田は咄嗟に足を引いて避け、体が反対側の打席に入る。それを見た優築は、彼の魂胆に何となく勘付く。


(逃げる反応がやや鈍かったように見える。これは緩い球を待ってるってことかもしれない。ならそれを利用させてもらう)


 三球目。真裕の右腕から放たれたのはカーブ。水田が狙っている変化球だ。


(カーブ来た! けど待て。これは……)


 水田はバットを出す。ところが打つ寸前で低いと判断し、慌ててスイングを止める。


「ボ―ル」


 ストライクゾーンからは僅かに外れており、水田の見立ては当たった。優築がハースイングをアピールするも、一塁塁審はバットが回っていないという判定を下す。


(スイング取られるかと思ったけどラッキー。でもカーブに張ってるのはばれただろうな。このバッテリーなら敢えて投げてくる可能性もあるけど、ツーボールだし、素直にストレートを打っていこう)

(よく止まったな。これで狙い球を変えてくるかも。かといってもう四球も見せてるカーブを続けるのは得策とは言えない)


 水田と優築の駆け引き。カウント的には打者有利だが、バッテリーはまだ切り札を残していた。


(良い答えが見つからない時は、自分たちで作り出すしかない。今の私たちはそれができる武器を持ってる。だから真裕、次はこれで行くよ)

(え、ここでスライダー? ……なるほど。そういうことか)


 優築はスライダーを要求する。少々懐疑的になる真裕だったが、すぐに意図を理解し、納得した顔で頷いた。強敵水田を打ち取るべく、バッテリーは伝家の宝刀を抜く。



See you next base……

真裕VS水田 ここまでの配球


第一打席

①内角 ストレート 空振り

②内角 ツーシーム ボール

③内角高め ストレート ボール

④内角 ストレート ストライク

⑤低め ストレート ボール

⑥外角低め ツーシーム ★セカンドゴロ


第二打席

①外角 カーブ ファール

②外角 ストレート ボール

③低め カーブ ファール

④外角低め カーブ ボール

⑤内角低め ストレート ★レフトへのツーベース


第三打席

①外角低め ツーシーム ストライク

②内角低め ストレート ボール

③外角低め カーブ ボール

④~ ???


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