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ベース⚾ガール!!~HIGHER~  作者: ドラらん
第二章 女子vs男子!
12/223

11th BASE

お読みいただきありがとうございます。


昔から傘を持っていくことを面倒臭がるところがあり、帰り道で雨に降られることがしばしばあります。

まだそれが原因で風邪をひいたことはないのですが、いい加減その習慣を直さなければと思います……。


 二回裏の女子野球部の攻撃は三者凡退で終了。三回も両チームは得点を奪えず、三対〇のまま四回表に入る。


 真裕は先頭の山尾から三振を奪うも、次の三番の羽嶋にレフト前ヒットを打たれる。ワンナウトランナー一塁となり、四番の水田に回った。


「よろしくお願いします」


 水田は打席に立つと、地面に向けたバットを自分の体の前で揺らして何往復かさせる。まるで足元に線を引いているかのようだ。それからゆっくりとバットを持ち上げ、構えに入る。


(今の動きはこの子のルーティンか。体のバランスを整える意図でもあるのかな。さっきの内角攻めでも崩されなかったし、そういう点にはかなり気を配っているのかもしれない。だとしたら厄介ね)


 優築は水田の仕草をつぶさに観察するが、中々隙を見出せない。この打席でも苦心のリードになりそうだ。


(とりあえず今回はアウトコースを中心に組み立てて、どう反応をするのか見てみよう)


 初球、優築は外角のカーブを要求する。真裕がその通りに投げたのに対し、水田は打って出る。


「ファール」


 打球は一塁側ベンチ上のネットに当たる。タイミングこそ悪くなかったが、水田は捉えきることができなかった。


 二球目は直球がボールとなる。続く三球目、真裕はもう一度カーブを投じる。水田はこれにも手を出していった。


「ファール」


 今度はバットの下っ面で引っ掛け、三塁のファールゾーンに打球は転がる。バッテリーは緩急を効かせて追い込めた。しかし問題はここから。優築はどのように仕留めるか策を講じる。


(カーブみたいな緩い球は苦手なのか? いや、単純に打ち損じという可能性もある。カウントに余裕はあるし、次はボールになるカーブを投げさせてみようか)


 四球目。真裕の投じたカーブが、ストライクゾーンから低めに沈んでいく。水田は一瞬打ちにいきかけたが、すぐにバットを止めた。カウントはツーボールツーストライクとなる。


(今の球はキレもあったし、コースも並の打者なら振ってもおかしくなかった。これを見極められるということは、緩い球が苦手ということではないみたいね。しかし選球眼も良いとなると本当に打つ手が限られてくる。スライダーはここぞという時まで取っておきたいし、それ以外で打ち取りにいかないと)


 優築はインコースに寄った。二打席目では初めて使うことになる。


(困った時はセオリー通りに行ってみよう。真裕、膝元に真っ直ぐをお願い。これで詰まらせる)

(分かりました)


 五球目。真裕は内角低めに力強いストレートを投げ込む。ところが水田は器用に腕を畳み、バットの芯で打ち返した。


「え!? サ、サード!」


 火の出るようなライナーが杏玖の左を抜け、レフト線上に弾む。勢いが衰えぬまま打球はあっという間にネットまで到達。逢依が急いで処理をするも、山尾は三塁へ、水田は二塁へとそれぞれ進んだ。


(嘘でしょ。今のもあんなにあっさり打ってくるの? これでいよいよ、スライダーを使うしか打つ手はなくなった)


 二塁ベース上に立つ水田を見つめ、優築は(ほぞ)を噛む。バッテリーの攻め方は決して間違っていなかった。寧ろ一番打ち取れる選択をしたと言える。だが水田はそれを上回ったのだ。これでまだ一年生であることを考えると末恐ろしい。


「タイム」


 この試合で初めてのピンチを迎え、亀ヶ崎バッテリーは一旦間を置くことにする。優築がマウンドへと向かい、真裕と話し合う。


「正直びっくりしてるけど、打たれたものはどうしようもない。あの子のことは後で考えるとして、まずはここをどう切り抜けるか。といっても三点リードしてるし、三塁ランナーは還しても問題無い。それよりも二点目をやらないようにしましょう」

「そうですね。低めに集めることを意識して、ゴロを打たせにいきます」

「うん。それで良い。今日はどの球種も安定してるし、自信持って投げてきて」

「はい」


 タイムが解けて試合が再開される。女子野球部の内野陣は定位置で守り、一点は止む無しという態勢だ。


「よろしくお願いします」


 五番の橋本(はしもと)が右打席に入る。第一打席はストレートに押し負けて平凡なレフトフライに倒れており、優築はそのことも踏まえてリードする。


(基本的には直球に標準を定めて待っているはず。だったらそれを外して、変化球を軸にカウントを整える)


 一球目。優築のサインに従い、真裕は外角にカーブを投じる。橋本はタイミングを合わせられずバットを出せない。


「ストライク」


 二球目は低めへのツーシーム。今度はスイングしていった橋本だが、沈む変化に付いていけず空振りを喫する。あっけなくツーストライクとなった。


(やっぱり速い球に合わせにきていた。できれば三振が欲しいところだけど、無理は禁物。確実にアウトを取ることを優先する)


 三球目。優築は中腰に構え、真裕に高めのボールゾーンへストレートを投げさせる。橋本は僅かにバットを動かしかけるも、スイングせずに堪える。


(振ってこなかった。まあここまで外れてたら普通に見逃せるか。でも目先は変えられたし、低めの球はより打ちにくくなってるはず。真裕、もう一度カーブを使って、引っ掛けさせましょう)

(承知しました)


 ワンボールツーストライクからの四球目。真裕は橋本に対して二球目のカーブを投げる。投球はアウトローの際どいコースへ。橋本は打ちにいくしかない。


「くっ……。こんにゃろ!」


 橋本は辛くもバットの先にボールを当て、セカンドに弱いゴロを打つ。愛は素早く前に出て打球を処理し、一塁をアウトにする。この間に三塁ランナーがホームイン。男子野球部が一点を返す。


「真裕、これでオッケーだから。ナイスピッチ。ツーアウトね」

「はい」


 優築は納得した様子で真裕に声を掛ける。失点をしても、その傷口を最小限に留めておく。試合の流れを相手に渡さないためにはとても重要なことだ。


「サード」

「オッケー」


 真裕は次の打者の大崎(おおさき)をサードゴロに打ち取る。ピンチこそ招いたが、一点で食い止めることができた。



See you next base……

真裕’s DATA


ストレート(最高球速115km:常時球速107~112km)

ツーシーム(球速105km~110km)

カーブ(球速88~93km)

スライダー(球速103km~108km:ウイニングショット)

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