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ベース⚾ガール!!~HIGHER~  作者: ドラらん
第八章 怖くても
106/223

104th BASE

お読みいただきありがとうございます。


コロナウイルスの第二波が少しずつ収まってきていますね。

とはいえ油断はできません。

まずは今の波をしっかり鎮めること、そして第三波に繋がらないようにこれからも皆で注意していきましょう。


《九番ピッチャー、鎌倉さん》


 ツーアウトから八番の由比が四球で出塁し、右打席にラストバッターの鎌倉が入る。その初球、祥はストレートを外角のストライクゾーンに投げ込んだ。


(幸い右バッター相手にはしっかりストライクが取れてる。じゃあ次は……)


 二球目、菜々花はカーブを要求する。祥の投球は外のボールゾーンから中に入ってきた。


「ストライクツー」


 バッテリーは二球でテンポ良く鎌倉を追い込む。祥もランナーを気にせず投げられているみたいだ。


(鎌倉はそんなに打撃が得意なタイプじゃないと思う。なら一気に勝負を決めよう)


 菜々花はストレートのサインを出し、内角に寄る。祥は一度ランナーに目をやった後、三球目を投げた。


「ストライク、バッターアウト!」


 白球が鎌倉の膝元を貫いた。鎌倉は手を出さなかったのか出せなかったのか見逃し、三振に倒れてベンチに引き揚げていく。


 二回表が終了。祥は四球を一つ出したものの、ホームは踏ませなかった。


「ナイスピッチ。フォアボール出しても後ろ抑えれば良いんだから、この調子で行こう。ウチらももっと点を取るね」

「うん、ありがとう」


 ショートの京子と軽く言葉を交わし、祥はマウンドを降りていく。その姿を眺めながら、腰越はグラブを持ってレフトの守備位置に向かう。


(やっぱりあのピッチャー、左打者をかなり嫌がってる。次の回は柳や私に回っていくし、もっとしつこく攻めよう。そうすれば自滅してくれるかもしれない)


 祥の弱点を見抜かれた。三回からの投球は、彼女にとって試練の場となりそうだ。


《二回裏、亀ヶ崎高校の攻撃は、七番セカンド、江岬さん》


 その前に二回裏の亀ヶ崎の攻撃。七番の愛から始まる。先ほど守備でファインプレーをした勢いに乗って、打席でも魅せたい。


 鎌倉が一球目を投げる。外角へのストレートを、愛が見送ってストライクとなる。


(真っ直ぐかなり速いな。初回より良くなってないか?)


 愛は渋い顔をして一度打席を外す。外から見ていた時よりも明らかに鎌倉の球の質は上がっていた。


 いきなりノーアウト満塁の大ピンチを招いた鎌倉だったが、結果的には二点で終わらせている。物は考えようで、ここから立て直せば十分及第点に達せるだろう。それが彼女を楽にさせたのかもしれない。


 二球目、鎌倉は直球を続ける。愛は打ちにいくも、振り遅れてバットが空を切る。


(この感じなら真っ直ぐを続けてくるか? だとしたらカットしてこっちの体勢を整えないと)


 三球目。愛の予想通り、鎌倉が投じたのはストレートだった。高めのボール球だが、愛は見極められず手を出してしまう。

 投球はバットを掠めたものの、石上のミットに収まった。球審が左拳を右手で擦り、ファールチップでの三振を宣告する。


「ストライク、バッターアウト」

「むう……」


 愛は悔しそうに打席を後にする。鎌倉はこの試合初めての奪三振となった。


《八番キャッチャー、北本さん》


 代わって菜々花が右打席に入る。一球目、鎌倉が投げたストレートに対し、果敢にスイングしていった。


「ストライク」


 しかしバットは空を切った。菜々花の後ろ髪が空振りの反動で大きく靡く。


(打者視点だからかもしれないけど、真裕よりも球速があるように感じられる。何とか当てられるようにしないと)


 打ち返すためにはもう少しタイミングを早くしなければならない。菜々花は若干バットの握りを余した。


 二球目も鎌倉はストレートを投じる。菜々花もバットを振っていったが、これまた当てられず追い込まれる。


(私がこの調子じゃ、きっと次も真っ直ぐで押してくる。でも一球でも粘れれば流れは変わるはずだ)


 三球目、鎌倉はまたもやストレートを投げてきた。外角低めにボール一個分外れているものの、追い込まれている菜々花としては手を出さざるを得ない。ただこのコースをバットに当てるのは至難の業。タイミングの合っていない菜々花であれば尚更難しい。


「スイング、バッターアウト」


 結局投球はバットの上を通過。菜々花は空振り三振に倒れる。


(くそっ……。手も足も出なかった)


 鎌倉は完全に調子を取り戻した。キレもスピードもある直球がストライクに決まってくれば、亀ヶ崎打線も苦戦は必至だ。


《九番ピッチャー、笠ヶ原さん》


 ツーアウトとなり、左打席に祥が立つ。一球目、鎌倉は内角にストレートを投げてきた。


「うわっ」


 祥は腰を引きながら見逃す。しかし球審はストライクを宣告する。


(今の入ってるのか……。あんなの打てるとは思えないよ)


 真裕とは違い、祥はあまり打撃が得意ではない。そもそも彼女は高校から野球を始めているわけなので、打つ方の練習が間に合っていないのだ。


「ストライクツー」


 二球目は外角への直球だったものの、これにも祥は手が出ない。忽ち追い込まれた。


 そして三球目、鎌倉はストレートを続けてきた。これで九球連続となる。


(これもきっとストライクだ。打ちにいかなきゃ)


 祥は必死に食らいつこうとする。だが虚しくも、彼女のバットは空を切った。


「バッターアウト。チェンジ」

「よし」


 鎌倉は小さく右の拳を握ってマウンドを降りていく。自慢のストレートで亀ヶ崎の下位打線を牛耳り、三者連続三球三振に退けた。


 あっさりと終わった二回裏。三回表の江ノ藤の攻撃へ追い風が吹きそうだ。


《三回表、江ノ藤高校の攻撃は、一番センター、石上さん》


 三回は両校とも二巡目に入り、一番からの好打順となる。まず打席に入るのは石上。先ほどはプレイボール直後の初球を打ち上げ、センターフライに倒れている。


(流石に初回と同じように、初球のボール球は打ってこないと思う。どんどんストライクを取ってこっち有利に進めよう)


 初球、菜々花はストレートのサインを出し、内角にミットを構える。祥の投球はやや甘くなったが、石上は見逃した。


「ストライク」


 二球目はカーブ。これもインコースへと食い込んでいく。石上は打って出る。


「サード」


 バットの下で引っ掛けた打球は、平凡なゴロとなって杏玖の元に転がる。杏玖が軽やかに捌いてワンナウトを取った。


(石上は出られなかったか。右打者にはほんとにしっかり投げられてるな。でもここからはどうかな?)


 祥の投球をベンチから凝視していた腰越。石上がサードゴロに倒れたのを見届けると、小さく口角を持ち上げながら自らの打席のために準備を進める。左打者が連なる打順で、祥をどう攻略するのか。



See you next base……

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