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ベース⚾ガール!!~HIGHER~  作者: ドラらん
第八章 怖くても
102/223

100th BASE

お読みいただきありがとうございます。


これまであまり触れられてこなかった、祥と菜々花の活躍にご期待ください!


「何ともなくて良かった。打たれたっていうのはしっかりストライクを取れてるってことだし、この調子で行こう。四球が絡まなければそうは連打も生まれないからね。ランナーに関しては牽制は入れるけど、気にし過ぎないように。もし走ったら私が刺すから」

「分かった。ありがとう」


 ワンナウトランナー一塁で試合再開。打席には三番の鵠沼(くげぬま)が立つ。彼女は右打者なので、祥にとっては投げやすくなる。


(この後どれだけ左がいるか分からないし、右打者は確実に打ち取らないと。初球は必ずストライクを入れる)


 一球目。祥は内角に直球を投げ込む。鵠沼は打ち返していったが、打球は一塁側のスタンドに消えてファールとなった。


「よし」


 球審から新しいボールを貰い、祥は二球目に向けてセットポジションに就く。しかしその前に一度牽制を挟んだ。柳は頭から滑り込んで帰塁。クロスプレーになるにはランナーの方にまだ若干の余裕がある。


(あのランナー、足速そうだな。けど過剰に意識しちゃ駄目だ。細かいことは菜々花に任せよう)


 祥は改めてセットポジションに入り、二球目を投げる。直球が外角低めの際どいコースに行ったが、ボールと判定された。


(これでワンボールワンストライク。次で走ってくることは十分考えられる。もしそうなったとしたら、私の見せ場だね)


 菜々花は柳への警戒を強める。ただ怖くはなかった。何故ならランナーが走ってきた時こそ、彼女の真価が発揮されるからだ。


 再度一球牽制を入れた後、祥が三球目の投球を行う。その瞬間、柳が二塁に向かって走り出した。


(来たね。勝負だ!)


 カーブがアウトコースから低めに沈んでいく。鵠沼の援護の空振りに一切動じることなく、捕球した菜々花は素早くスローイングに移る。


 送球はあっという間に二塁ベースに到達。カバーに入った愛のグラブに収まる。


「チェスト! ……あれ?」


 愛は威勢良くタッチしようとする。しかし、そこに柳の足は無かった。


「おお……。危ねえ」


 柳の姿は一塁に戻っていた。アウトになると判断した彼女は塁間の真ん中辺りで折り返していたのだ。


(何だよ……。刺せると思ったのに)


 菜々花は口をへの字に曲げて柳を瞥見する。残念ながらアウトにできなかったものの、今のような鋭いスローイングは彼女の大きな武器である。肩の強さに関しては優築よりも上。チーム内でもトップクラスに位置する。


 江ノ藤側はこれで走りにくくなっただろう。ランナーの抑止力になるだけでも、投手にとってはかなりの助けになる。


(ほんとに菜々花の肩は凄いなあ。これがあればランナーを出しても大丈夫だ。バッターに集中できる)


 祥も気が楽になった。鵠沼への四球目、彼女は思い切り腕を振り、インローへストレートを投げ込む。

 鵠沼は引っ張って打ち返す。打球は三塁線上を転がっていった。


「オーライ」


 サードの杏玖が逆シングルで捕球。ただ反転する際、若干地面に足を取られる。


「おっと……」

 それでも何とか踏ん張って送球体勢を作った。二塁は微妙なタイミングになるため、杏玖は一塁で確実にアウトを取りにいく。


 これでツーアウトランナー二塁。江ノ藤にチャンスが訪れ、打順は四番に回る。


《四番レフト、腰越(こしごえ)さん》


 チームで一番背の高い三年生、腰越が左打席に立つ。身長の割には華奢な体付きだが、素振りを見る感じにパンチ力はありそうだ。


「祥、ランナー二塁はピンチじゃないよ。これまで通り普通に投げてきて」


 菜々花が祥を落ち着けようとする。ここを抑えればリズムに乗っていけるはずだ。祥も深呼吸して浮足立つ心を静め、ロジンバックに触れたから腰越と対峙する。


(四番も左か。祥にとっては嫌な相手だろうけど、ここは無理に勝負しなくても良い。歩かせることも視野に入れておこう)


 初球、菜々花はカーブを要求する。ストライクからボールに沈んでいくのが理想だったが、祥の投球は初めから低めのボールゾーンを通っていた。腰越はほとんど反応しない。


(真っ直ぐには勢いがあるし、サウスポーっていうのもあって差し込まれそう。序盤は今みたいな変化球が甘いところに来たら打つのが良いかもな)


 二球目は高めの直球。腰越はやや始動が遅れて見逃したが、こちらもボールになる。


(また外れちゃった。次でストライクを取らないと……)

(ツーボールになった。これで祥はストライクに入れたい気持ちが強くなる。それならもう割り切った方が良いか)


 三球目。菜々花は直球のサインを出すと、外のボールゾーンにミットを構えた。祥は思わず目と口を丸くする。


(え、歩かせるの?)


 菜々花が無言で頷く。カウントが悪くなった以上、確実に失点を防ぐためにはこの策も致し方ない。祥は菜々花に従い、残りの二球もボールを投じて腰越を敬遠する。


(ツーボールからは明らかに外してたな。そんなに私が嫌だったのか。悪い気はしないけど、初回から弱気過ぎない?)


 腰越はやや困惑気味に一塁へと歩いていく。この四球が、後々重要な意味を持つとは誰も知る由も無かった。


《五番ファースト、七里(しちり)さん》


 ひとまずこの場面がどうなるか。打席には右の七里が入る。祥は気を取り直して投球に向かう。


(この人は右だ。四番の人は歩かせちゃったけど、この人を抑えれば良いんだ)


 初球、祥はアウトローにスライダーを投じる。このボールは昨冬から今春にかけて覚えたもので、真裕のように決め球にはできないものの、変化が小さい分カウントを取るのにはちょうど良い。


「ストライク」


 コントロールもまずまず。ストライクが一つ先行する。


(スライダーがストライクになったのは大きい。これで二球目に強気の攻めができる)


 菜々花は七里の膝元にミットを構える。祥の投球はそこから少し真ん中に寄ったが、それでも詰まらせるには十分な威力があった。


「くっ……」


 七里がスイングしていったものの、ボールに力を伝えられない。平凡なゴロが祥の右を転がる。


「オーライ」


 打球は愛が祥の後方で処理。自ら二塁ベースを踏んでアウトを取った。


「ふう……。おし」


 これにて一回表が終了。祥は安堵の笑みを浮かべてベンチに引き揚げる。ピンチを招き少し慌ただしい初回だったが、無失点で切り抜けた。



See you next base……

STARTING LINE UP


亀ヶ崎

1.陽田 京子    右/左 ショート

2.増川 洋子    右/右 センター

3.踽々莉 紗愛蘭  右/左 ライト

4.紅峰 珠音    右/右 ファースト

5.外羽 杏玖    右/右 サード

6.琉垣 逢依    右/右 レフト

7.江岬 愛     右/左 セカンド

8.北本 菜々花   右/右 キャッチャー

9.笠ヶ原 祥    左/左 ピッチャー


江ノ藤

1.石上    右/右 センター

2.柳     右/左 ショート

3.鵠沼   右/右 サード

4.腰越    右/左 レフト

5.七里    右/右 ファースト

6.稲村(いなむら)    右/右 ライト

7.長谷(はせ)    右/左 セカンド

8.由比(ゆひ)    右/左 キャッチャー

9.鎌倉(かまくら)    右/右 ピッチャー

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