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HOME BASE
大粒の汗が頬を伝う。背中にはとてつもない疲労感がのしかかってくる。呼吸は荒く、意識を保っているのも辛い。それでも投げなければ。私は無我夢中で腕を振った。
私の投げたボールはキャッチャーのミットに向かって直進した後、ベースの手前で鋭く曲がる。打者は懸命に腕を伸ばして食らいつく。
「セカン! セカン!」
一体どこを目指しているのか。行く当ての定まらない打球が、前進守備のセカンドの後方に上がる。私は捕ってくれと願いつつ何度もマウンドから声を張り上げるも、白球は無情にも地面に弾んだ――。