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戦姫ラプンツェル 後

 騎士リュウマは言葉もなく、ただラプンツェル姫の次の言葉を待った。ラプンツェル姫の素足を持ち、片手にガラスの靴を持ったままだった。

「私には、その靴は履けないようだ。もとの通りに、私の靴を履かせてくれ。ブーツを履くのにも、一人では大変なんだ」

 まるで何事もなかったかのように、ラプンツェル姫はリュウマに命じた。リュウマはどう聞き返したらいいのかわからず、ラプンツェル姫の足にソックスを履かせた。ブーツを手に取る。シンデレラ姫の足に口づけしたのを、つい最近の出来事のように思いだした。相手が違う。足が違う。足の白さも、質感も違う。

 ブーツをはかせる。ラプンツェル姫は立ち上がった。

「その大事な靴はしまっておけ。続けるぞ」

「……よろしいのですか?」

「なんのことだ?」

「……私は……」

 言葉が出なかった。アンネローゼ姫(白雪姫)は、ラプンツェル姫とリーゼロッテ姫にとって、リーダーともいえる存在だ。そのアンネローゼ姫を、リュウマは殺そうとしている。ただで済むはずがない。

「はじめに言ったはずだよ。私は、駆け引きとか苦手なんだ。アンネローゼの姐御は、あんたを殺さずにつれて来いと言った。それに、私には魔物退治を手伝ってくれる奴が必要だ。あんたがシンデレラの騎士っていうのは気に入らないが、手伝わせてやるよ。弱みも握ったしね。だから、続けるぞ」

 ラプンツェル姫は両手の指を鳴らした。ラプンツェル姫は、単に戦いが好きなのだ。気が済むまで相手をするしかない。リュウマは考えるのを止めた。盾を捨て、騎士の鎧を脱いだ。

「どうした? 降伏か?」

 実に不服そうに、ラプンツェル姫が問う。リュウマは首を振った。

「いえ……ラプンツェル姫の気が済むまでお相手します。ラプンツェル姫は、武器など持たないほうがお強いでしょう。ならば、鎧は私にとっても重りにしかなりません」

「つまり、本気を出すということか?」

「ええ。そのつもりです」

「面白い。後悔させてやるぞ」

 三度目の戦いが始まった。

 互いに武器を持たず、防具もなく、ただ殴り合い、組み合い、ぶつかり合う。肉と肉が激突し、汗が混ざる。

 日が落ちるまで勝負は続き、二人は同時に床に寝ころんだものの、どちらが先かはわからなかった。


「ふん……強いではないか。私を相手に、最後まで弱音を吐かなかったことは誉めてやる」

「ラプンツェル姫がお強いとは聞いていましたが、これほどとは。これなら、騎士など不要かもしれませんね」

 騎士リュウマとラプンツェル姫は、床の上で天井を見上げたまま口だけを動かしていた。少なくとも騎士リュウマは、動く気にはなれなかった。体が重く、だるく、何より痛かった。

「いや、そうでもない。強い騎士であれば、歓迎だ」

「ならば、なぜ騎士ではなく騎士の志願者を探していたのですか?」

「当たり前だろう。すでに騎士であれば、誰かほかの姫に仕えているに決まっている。他の姫の騎士の力を借りて、このピラカミオンを守ったとは言われたくなかったのだ」

「なるほど、では、私を協力させていただけることになったのは、どうしてですか?」

「魔物を退治しても、手柄を欲しがらない。そう、リーゼロッテ(赤ずきん)の手紙にあった。わざわざそんなことを書いてよこしたのも……リーゼロッテの奴が、私が困っていることを知っていたからだろうな」

「いい、お友達ですね」

「まあ、そうだな。私とは、気が合うとは言えないが、あまり心配させるのも気の毒だ」

 ラプンツェル姫とリーゼロッテ姫では、あまりにもタイプが違う。それだけに、理解しがたいのだろうが、嫌っているとは思えなかった。ラプンツェル姫は笑っていた。リュウマも、おかしくなった。

「このピラカミオンに向かっている騎士カイエンも、私と同じです。魔物を退治したからと言って、手柄を吹聴するような男ではありません」

 ラプンツェル姫は上半身を起こした。長い髪はほぼ全身にまとわりついていたが、不思議と絡まりはしなかった。まるで、髪が体を守っているかのように見える。

「それは、リュウマに気を使ってのことだろう? もし私がそのカイエンに依頼したりすれば、自慢げに話して回るのではないか?」

 カイエンはたくましく、ラプンツェル姫の気にいるだろうとリュウマは思っていたが、そうとも言い切れないかもしれない。何より、ラプンツェル姫は自身の強さを誇っている。カイエンとは、相容れないかもしれない。

「ならば、私に考えがあります」

「……ほう。どうする?」

「私にしたのと、同じことをすればいいでしょう」

「私がその騎士と戦えばいいのか? どうしてだ?」

 リュウマも体を起こした。背中も腹筋も痛んだが、痛いとは言いたくなかった。

「ラプンツェル姫の方が強いことを示して、言うことを聞かせることです。カイエンも力に従う奴ですから、まず力で従わせるべきでしょう」

「力に従うというなら、どうしてそいつはアンネローゼの姐御に仕えているんだ?」

 ラプンツェル姫に取って、『力』と言えば戦うための武力であり、個々の戦闘力以外には考えられないのだろう。ラプンツェル姫は言いながら、中途半端な体勢が辛いのか、横座りをした。太ももがたくましいが、可愛らしい女の子に見える。ラプンツェル姫はそう思われるのが何より嫌いなはずだ。リュウマは顔を背けた。リュウマが直視を避けたことに不思議そうにラプンツェル姫は首を傾げたが、その仕草すら、リュウマには耐えられなかった。つまり、可愛いと思ってしまったのだ。

「私もこの間知ったことですが……カイエンはアンネローゼ様の美しさに惹かれたようです」

「……美しさが……力ということか?」

 リュウマの肩に、重しがかかった。ラプンツェル姫が寄りかかっているのだと知った。ラプンツェル姫も限界なのだとわかり、心底安心したが、リュウマの鼓動は早まった。散々ぶつかり合い、組み合い、殴りあったばかりなのに、ただ体重をかけられただけで、鼓動が早まった。

「いえ……男のさがでしょう」

「なるほど……単純な奴だ」

 ラプンツェル姫は可笑しそうに声を上げて笑った。リュウマも笑いたくなった。だが、リュウマは表情を崩さなかった。油断してはいけないと、気を引き締めた。ラプンツェル姫にとり、リュウマは敵だと思われて当然なのだ。

「しかし、カイエンという騎士はリュウマより強いのだろう? 楽しみではあるが、私が勝てると思うか?」

「ラプンツェル様なら、勝てると思います」

「理由は?」

「カイエンは力に優れた騎士ですが、素早い相手には苦戦することが多いのです。ラプンツェル様がハンマーに頼らず、カイエンの動きを観察すれば負けることはないと思います。カイエンは優れた騎士ですが、私も直接戦えば負けるとは思いません。それは、カイエンの動きのパターンを知っているからですが……ご心配なら、お教えしますが?」

 ラプンツェル姫が動いたのがわかった。リュウマは不覚にも振り向いた。頬を膨らめたラプンツェル姫の顔がまじかにあった。

「まじめに答えてどうする。そこは、カイエンとやらは『美しい姫には弱い』から、とか言えないのか?」

「……気が利きませんでした。申し訳ありません」

 リュウマは、豊かに表情が変わるラプンツェル姫に見惚れた。ラプンツェル姫は破顔し、リュウマの体を支えに立ち上がった。

「飯を食いに行こう。リュウマも付き合え。ローラントを使いに出してしまったからな。人手が必要だ」

「……はい」

 何のための人手なのか、リュウマは理解しないままに返事をしていた。


 ラプンツェル姫は汗をぬぐって服を着替えたが、リュウマは鎧の下に身に着ける肌着ぐらいしか着替えを持っていなかった。さすがに着替えを手伝えとは言われなかったものの、リュウマはほぼ下着だけの状態で一階に降りることになった。

 一階ではシビリーが待っていた。ローラントは騎士カイエンを迎えにいっているので、数日は会うこともないだろう。リュウマの姿に、シビリーが少し笑ったような気がした。一階でシビリーと待っていると、足音よりも髪を引きずる音で、ラプンツェル姫が降りてきたことを知った。ごく普通の村娘のような普段着に着替えたラプンツェル姫は、純粋に美しかった。長い髪を引きずり、階段の上まで髪が続いているのは相変わらずだが、気の強そうな鋭い目つきさえ、ラプンツェル姫の魅力の一つなのだと、思い知らされた。

「私を育てた魔女がいてくれることもあるが、今日は一人なのだ。そういうときは、シビリーが街を回ると食べ物をくれるが、やはり直接街に出むいた方が面白い」

「私は、何をするんですか?」

「決まっているだろう。街の中を一人で歩くと、街中のゴミを集めてしまう」

 つまり、ラプンツェル姫の髪が汚れないように持って歩く係なのだ。異存はなかった。ラプンツェル姫は自分の髪をまとめ、束にしてリュウマに渡した。

 シビリーは命じられるまでもなく足を折り、ラプンツェル姫の騎乗を待った。シビリーはラプンツェル姫が乗っても、なお立ち上がろうとはしなかった。

「よほど気にいられたのだろうな。いまはリュウマも鎧を来ていないし、街まで歩くだけなら、シビリーの負担にもならない」

「よろしいのですか?」

「ああ。シビリーがそう望んでいる」

 騎士リュウマはラプンツェル姫の髪を抱えたまま、名馬シビリーの背に騎乗した。前にラプンツェル姫がおり、姫が手綱をリュウマに渡そうとしなかったため、リュウマは姫の腰に片腕を回した。


 街に出て、リュウマはラプンツェル姫の人気を目の当たりにした。人々が会釈し、手を振ってよこす。あまりにも無防備に大衆の前に出ることにも驚いたが、民衆の誰もが笑顔で姫を見送った。意外にも、その姫にぴったりと体を寄せていた騎士リュウマにすら、厳しい視線は向けられず、好意的に受け入れられた。ラプンツェル姫に対する信頼の表れだろうか。シビリーはまっすぐに、リュウマがローラントと遭遇した居酒屋に向かった。街では一番美味い料理を出すところなのだと、道中でラプンツェル姫が語った。この時は、シビリーは店の前で待機した。きちんと時と場合を心得ているのである。

 店に入り、ラプンツェル姫は歓喜で迎えられた。集まっていたほとんどの者が、鉱山での仕事にあぶれた酔っ払いであることを考えると、奇蹟に近いのではないかと思われた。

「ラプンツェル様、お久しぶりです」「長く塔にこもられていたから、心配しておりました」「魔物を退治する算段がついたのでしょうか」

 店の男達が次々と口にする言葉に、ラプンツェル姫への信頼があらわれ、同時に姫自身のつらい立場を物語っていた。

「ローラントの奴が街を出るのを見ました」「そっちの男が、ローラントの代わりですか?」「ようやく、騎士になれそうな男が見つかりましたね」

 色々と事情があるようだ。リュウマは深く聞く前に、人々の期待のほどを理解した。

 店を横切り、最奥のテーブルにいたる。ラプンツェル姫の専用席として開けられているようだ。ラプンツェル姫は席につき、リュウマも付き従う。命じられるままに、壁に備え付けられていた突起に姫の髪を束ねてかけた。ラプンツェル姫の専用席である理由がわかった。髪をかけるための突起を用意してある席など、ほかにない。

 給仕が注文を取りに来て、ラプンツェル姫は『いつものを二人分』と注文した。給仕の女性は驚いて聞き返したが、姫はただ笑っただけだった。

「いい街だろう?」

 向かい合い、ラプンツェル姫が話しかけた。店で飲み食いしている男達が聞き耳を立てているのは解っていたが、表立っては何も言ってこなかった。

「はい。ラプンツェル様の人気の凄さと、ローラントの人気の無さがよくわかります」

「そう言ってやるな。あいつも、あれで頑張っている。それに、エルフ族は貴重だ。どこかに生き残りの勢力が残っているなら、いずれ役に立つこともあるだろう」

 ラプンツェル姫は笑いながら言った。なるほど、とリュウマは思った。エルフ族は人間にない力を持っていると言われている。深い森のどこかに一族として残っているのなら、いずれ戦力として利用できるかもしれない。その可能性を見越して、ラプンツェル姫はあえてローラントを身近に置いているのだ。

「無理な注文をしたからな。食い物が出てくるまで、少し時間があるだろう。鉱山と、魔物のことを少し話しておこう。おい、あんたらも情報をくれ」

 ラプンツェル姫が声をかけると、まるで待ち構えていたかのように、テーブルの周りに男達が集まった。男達をしり目に、リュウマは尋ねた。

「『無理な注文』? 『いつもの』がですか?」

「すぐに解る。気にするな。ほら、それより先に、魔物の対策を立てよう」

 ラプンツェル姫は、テーブルの周りに視線を向けた。むさくるしい、といって申し分のない男達の顔が並んでいた。リュウマはまず、実際の目撃者を求めた。

 巨大な火トカゲというのが、鉱山夫たちの表現だった。

 いつものように順調に鉱山を掘り進めるうちに、地中のマグマ溜まりを掘りあててしまったらしい。もちろんマグマには敵わない。その場所は封鎖して、別の方向に採掘を進めるはずだった。マグマは顔を出しただけで大人しく、獰猛に暴れたりもしなかったからだ。だが、その中から一匹の魔物が這いだした。マグマの中で生きていたのだろう。通常の生物ではありえない。全身をマグマに浸したまま、ずっと出口を探していたのだ。

 自ら高熱を発する魔物に、鉱夫だけでは対応できなかった。触れられただけで骨まで燃えつくされる高熱を発する相手に、手も足も出なく撤退した。ツルハシもハンマーもスコップも、魔物を倒すための道具ではない。魔物の足元でトロッコのレールが融解したのを見て、鉱夫たちは逃げだした。

「どうして地上に出て来ないんだろうな。鉱山の中で、一匹で暴れまわっているのかな」

 リュウマが呟くと、別の鉱夫が身を乗り出した。鉱夫もリュウマも、この街の主人であり、当然この場の主役であるラプンツェル姫の顔を見た。姫は料理の前に運ばれてきたグラスを傾け、鷹揚おうようにうなずいた。『気にせず続けよ』という意味だろう。男達の様子を見ているのが、楽しげでさえある。鉱夫は話した。

 鉱山の中は、複雑に通路が入り組んでおり、迷路のようになっているのだ。迷路のようになっている鉱山の奥で魔物が迷っている間に、鉱山の入口部分を崩し、埋めてしまったのだ。つまり、袋の口を縛ったというわけである。

 魔物が出てこられなければ、人々に被害はない。しかし、ピラカミオンは鉱山の街である。鉱山を閉鎖したままでは、産業は成り立たず、生活ができなくなれば、いずれ人々はいなくなる。

「ピラカミオンは、世界の鋼鉄の九割以上を産出している。このまま封鎖ということはないだろう。アンネローゼの姐御の耳に入れば、強力な軍隊を送ってくるかもしれない。だけどね……」

 ラプンツェル姫は言葉を濁し、グラスをあおった。続けたのはラプンツェル姫ではなかった。

「そうなれば、仮に魔物を退治しても、姫様はただの飾り物になっちまう。俺たちには、我慢ができねぇ」

 鉱夫が断言した。ラプンツェル姫がピラカミオンに居続けることはできるだろう。だが、実際の権力を失い、ただの飾り物の統治者として命じられるだけになる。ラプンツェル姫には我慢ならないことなのだろうし、街の住民も望んではいない。実際にそうなるとは限らない。だが、アンネローゼ姫のことをリュウマは何も知らない。ピラカミオンで産出される鉱物には鉄も含む。武器を産出できるのだ。世が世であれば、もっとも重要な都市となり得る。ピラカミオンを意のままにしたいという者がいたとしても、不思議ではない。

ピラカミオンの政治的立場は置いておいて、リュウマは魔物の話に戻した。

「本物のマグマなら、冷えれば石になる。マグマの成分の大部分は、溶けた岩石だ。入口を封鎖して閉じ込められたということは、マグマと同じ高熱を持ち続けているということはないはずだ。マグマの中から出てきた直後だから、それほどの高熱に感じただけではないのかな」

「倒せると思うか?」

 ラプンツェル姫が尋ねた。男達が黙る。弱気ともいえる発言だった。全員の目が、リュウマに向いた。

「簡単ではないでしょう。ただ、条件さえそろえば……ラプンツェル様であれば、不可能ではないと思います」

「手助けがいる。リュウマ、頼むぞ」

「……はい」

 全くの予想外のことに、リュウマが答えた瞬間、男達が沸いた。何事か解らず腰を浮かしたリュウマの背中を、男達が叩いたのだ。

「ラプンツェル様の騎士に!」

 誰かが叫び、一斉にグラスが掲げられた。『ラプンツェル様の騎士』というのが、リュウマを指しているのは間違いなかった。

「ちょ、ちょっと待ってくれ……私は……」

 シンデレラ姫の騎士なのだ。否定しようとしたリュウマは、強い力で肩を抱かれた。背に、柔らかい感触もあった。ラプンツェル姫に違いない。

「みな、待ち望んでいたのだ。喜ばせてやれ」

 リュウマは椅子に尻を落とし、ただ祝杯を受けた。

「鍛冶屋はいるか?」

 ラプンツェル姫の大声に、男達の中からことさらに真っ黒な顔が付きだされた。

「私の騎士に、鎧を頼む。マグマにも負けない、強い鎧にしてくれ」

 鍛冶屋は嬉しそうに返事をすると、顔をひっこめた。すぐに仕事場に向かうのだろうか。突然にぎやかになった店内に、リュウマは戸惑って見回すことしかできなかった。

「……こうなることを解っていたのですか?」

 男達が散った後、リュウマはラプンツェル姫に尋ねた。姫は笑った。

「いや。ただ、久しぶりに明るい兆しが見えたのだ。みなの気持ちもわかる。ずっとふさぎ込んでいた。実際に、街を出ることを計画していた者も少なくないと聞いている。失敗はできないぞ、私の騎士なのだからな」

 失敗すれば、後がないということなのだろう。リュウマは首を振った。

「ラプンツェル様が、『駆け引きが苦手』というのは嘘ではありませんか? 私には、アリス姫よりも策士に感じられます」

「狙ってやったことなど一つもない。それより、そろそろ来るぞ」

 ラプンツェル姫は快活に笑い、手招かれた給仕が料理を運んできた。『いつもの』と注文されたのが、『無理』だというのは、『二つ』という部分だった。十分に広かったはずのラプンツェル姫専用のテーブルが、瞬く間に料理に埋め尽くされたのだ。

「食べ比べといくか?」

「また、勝負ですか?」

「望むところだ」

 騎士リュウマとラプンツェル姫の、四度目の勝負が始まった。


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