バトルロワイヤル再び?託された意志!!
お父様により命じられたのは、生き残り一人のバトルロワイヤルだった。
当時、№6と呼ばれていたバサラは戦場で心交わした仲間達を相手に生き残れるのだろうか?
俺はバサラ…
俺達は白い壁の部屋に集められ、お父様の命令で一人になるまで殺し合うように命じられた。
既に殺し合いが始まって一時間が経っていた…
暫くすると、お父様と銃を持ちマスク姿の部下達が部屋に入って来た。
そこで彼らが見たものは…
真っ白だったはずの壁が真っ赤に染まり、床には頭のない妖精達の死体が何体と転がっていた。
その中央に…
短刀を片手に少年が一人立っていたのだ。
そこで聞こえて来たのは、
『どうやらNo.6が生き残ったようですね?後は間違いなく即死です!』
と、言う…部下達の話し声であった。
そう…
生き残ったのは俺だった。
そして俺は休む暇なく、再び閉じ込められたのである。
その中央には先程までなかった箱が一つ置いてあった。すると部屋の外から箱に向かってレーザーが放たれたのだ?
箱は真っ二つに切断されその中から、どす黒い煙り(妖気)が噴き出して来たのである。
パンドラの箱!
魔神との契約…
それが新たに与えられたお父様からの命令だった。
No.6「…………」
箱は黒い闇に飲み込まれ、そこから見た事のないような人外のモノが現れる。その姿は悪魔?鬼?
そういった人間が触れてはならない存在が、そこに存在していた。
俺は恐怖を感じる事もなく黒光りする刃の短刀を手に、現れた人外の化け物に斬りかかる!
化け物か…
俺もまた化け物と変わりない。俺の刃は化け物達を斬り刻む!雑魚を全て蹴散らすのはそう時間はかからなかった。
そして、ついに俺の目の前に現れたのだ!
先程までの化け物とは比べ物にならない程の何かが?凶悪な姿の鬼をも悪魔をも凌駕する畏怖の対象!
これが、魔神明王!?
強固な防弾のガラス外から覗いていた者達が驚きで口を開いたままで止まっていたのが解る。
お父様は逆に歓喜の顔を見せていた。
俺は静かに、現れし魔神明王に恐怖する事なく近付いて行く…
恐怖?
そもそも、そんな感情は無い。恐怖とは生き延びたいと感じる未練から発生する感情なのだから。
その時、俺の脳に直接魔神の声が聞こえて来たのだ?
『我を得る見返りは何だ?』
俺は静かに答えた。
『………………!』
すると、その条件を受け入れた魔神は俺の身体の中に入り込み、俺と同化し、俺は魔神を…『力』を手に入れたのだ!
そこに部屋の扉が開き、武装した兵士達とお父様が入って来たのである。
お父様は腕を広げ、無言の俺を抱きしめたのだった。
お父様は言った。
『さぁ!その力を私に見せてみなさい!』
俺は…
ただ無言でその言葉に従い、手に入れたばかりの魔神を召喚したのだ!
俺の背後に出現する魔神?いや、明王の姿…
その恐ろしい形相に周りにいた者達は畏縮する。
ただ、お父様だけは…
その力を手に入れた事に歓喜し大笑いをしていた。
俺はゆっくりと腕を上げると、明王が俺と同じく腕を振り上げ…
俺は…
振り下ろしたのだ!
目の前のお父様を…!!
お父様から血しぶきが噴き出して、お父様は醜い悲鳴を上げた。
俺は…
もう一撃を食らわそうと片手を振り上げる。
が、そこまでだった。
俺は銃を持ったお父様の部下に蜂の巣にされたのだ。
俺は…ゆっくりと倒れていった。
すまん…
俺は…
お前達の命を無駄にした…
すまん…
俺は…薄れゆく記憶の中で、あの部屋で起きた最後の『時』を思い出していた。
そう…
俺の前にNo.2とNo.3を倒したNo.1が俺に近付いて来た。
『お前は死にたいのか?』
No.6「えっ?」
No.1『前に俺が言った言葉を覚えているか?強く生きたいと思っている者が生き残れると!』
No.6「ああ…覚えている。だけど…
俺はお前に生きて欲しい!俺はお前になら…
殺されても良いんだ!!」
No.1「そうか…」
するとNo.1は静かに短刀を振り上げる。
俺も瞳を綴じて覚悟した。
その時…
No.1は自らの短刀を床に突き刺したのだ?
な…何を?
No.1は周りの戦っていた妖精達に向かって叫ぶ!
『俺の話を聞けぇー!』
No.1「俺達がお互いに殺し合うなんて間違っている!
聞け!妖精の仲間達よ!
俺達の本当の敵は…
俺達を殺し合わせているあの男!
『お父様だ!』
何故だ!何故俺達が殺し合わねばならない?
俺達は同じ境遇の同じ星の下に集まった兄弟なんだぞ!」
そんなNo.1の叫びに戦っていた妖精達が一人一人戦う手を止め、No.1の言葉に耳を傾けたのだ。
そして、妖精の一人がNo.1に問う。
「じゃあ、どうするんだよ?お父様を殺すつもりか?無理だ!お前も知っているんだろ?俺達の身体にはお父様に逆らえないように体内に小型の爆弾が仕込まれている事を!」
No.1「ああ…知っているさ…だから俺達はお父様には逆らえない…逆らった瞬間にドカンだよ!
だから…
せめて、一矢報いる…」
するとNo.1は、妖精達に自分の考えた作戦を説明し始めたのである。
No.1「先ず…この中から誰か一人が生き残り、命令通りに魔神を手に入れる事!
そして魔神を手に入れた後、必ずお父様はその者に近付いて来るだろう?
そこを…
油断した所を!
殺すのだ!!
それはたった一度のチャンスに違いない…
何故なら、お父様は今まで一度足りとも俺達の前にその姿を現さなかっただから!
それが、何を血迷ったか自分の養子発言…
必ずチャンスは来るはずだ!」
妖精達はNo.1の話に戸惑っていた。
それはそうだ…
何故なら、それは…
この中の一人に全てを託して、他は死ななければならないのだから!
妖精達は再びNo.1に問いはじめたのだ。
「では、誰が生き残って、その作戦を実行するのだ?やはり実力ともに優秀なお前か?」
その問いにNo.1は…
No.1「ふふ…馬鹿を言うなよ?作戦を立てた自分が生き残るなんて虫が良すぎるだろ?俺は託す側に回らせてもらうよ!」
ざわめく妖精達。
No.1『そこで俺が推薦する者が一人…それは…
No.6!お前だ!』
注目が俺に向けられた。
No.6「なっ?何を言ってるんだよ?何故、俺なんだ!?お前が一番適役だろ!他にもNo.4やNo.5だって…」
No.1「残念だが、実力は№.4や№5のがあっても、この任務には適さない…」
すると話を聞いていたNo.4とNo.5がこちらに向かって来る。
No.6「!」
『…裏切り者のナンバー1…お父様を裏切る者は…殺す!殺す!殺す!』
No.4とNo.5がNo.1に向かって襲い掛かって来たのだ!
No.1はすかさず地面に突き刺した短刀を蹴り上げ手にすると、二人の突き刺す短刀の攻撃を躱し、一瞬で二人の首をはねたのだ!
まさに一瞬…
No.6「な…何が?」
No.1「残念だが…この二人はお父様により…このバトルロワイヤル前に洗脳され、身も心も支配されていたのだ…既にお父様の言い付けを守るだけの機械だった…」
洗脳だと??
No.1「…兄弟を道具として扱うお父様は絶対に許せない!許してはならない!お父様が何故俺達に殺し合わせるか知っているか?俺達の心を消し去るためだ!死ににくい身体の妖精を殺す訓練をさせて、的確に戦場で人殺しをさせるためだ!そんな事のために…そんな事のために…俺達が殺し合うなんて…絶対にあってはならないんだよ!」
すると…
No.28「…解ったわ…それにNo.6なら適役かもしれないわ…」
No.12「そうだなぁ~それに俺が残っても、No.13がいなきゃ、生きてらんないかも!」
No.13「俺もだよ!それに一人で任務果たせる自信ないしな!」
二人のふざけた台詞に、次第に妖精達に笑い声が聞こえて始める。
No.6「待て!俺にも無理だ!俺には皆の命を背負う器じゃない!俺にはそんな資格はない!俺に…皆の命を預けるなんて…」
俺には自信がなかった。
俺には荷が重すぎる。
任務を果たす事よりも、仲間の命を背負う事が!!
そこに…
「貴方だから預けられるんだよ?」
No.28が言った。
No.28「No.6!自信持って!」
No.6「自信…」
するとナンバー28はあの日の事と同じ事を俺にしたのだ。
『自信出るおまじないよ?』
No.28は俺の唇に自分の唇を重ねたのだ…
No.6「No.28…」
No.28「貴方は私達が信じられる…信じさせられる何かがある!私達が取り残された時だって、奇跡を起こしたんだから!」
No.6「奇跡…」
そこにNo.1が俺の肩を掴んだのである。
No.1「大丈夫だぁ!自分を信じろ!俺はお前をずっと見てきた!だから言えるのだ!お前なら必ず俺達の思いを託せられると信じている!」
No.6「なっ…!」
俺の周りに他の妖精達が囲み始める。
彼達も俺を見詰めていた。
彼達は…
感情がなかった訳じゃない。捨てた訳じゃなかったのだ!彼達は抑えていたのだ。胸に秘めた…苦しみを…怒りを…悲しみを…
俺はただ…
その思いを受け止めるしかなかった。
かつて死んでいった妖精達もまた、死に際は笑みを見せていたのだ。
やっと、自由になれると…
そして妖精達は俺の目の前で最後の思いを俺に告げながら、自らの手で己の首を切り落としていったのだ。
「後は頼む…」
「お願いね…」
「よろしくな…」
「俺達の分も…」
「負けるなよ…」
最後にNo.1も…
「辛いだろ?…ごめんな?こんな辛い思いをさせてしまって…ごめんな?ごめんな?だけど、俺には無理みたいなんだよ…俺は…強がっていても…技や技術があっても…心が弱い…泣きたくて…逃げ出したくて…自分を押し殺す事に…もう疲れたんだ…!そんな時に、俺はお前に会ったんだ?見付けたんだよ…俺の思いを…兄弟達の思いを託せられるお前を!だから…お願いだ!もし、俺達の事を憐れだと思うなら…兄弟だと思うなら…俺達の意志を…お前の手で叶えてほしい!」
その言葉を最期に…
No.1は俺の目の前で、自らの首を切り落としたのだった。
No.1の胴体から噴き出す血が俺の顔にかかった。
それはまるで…
血は俺の顔から目を通して流れ落ちる涙のように落ちていった。
俺は…誓った…
必ず…お前達兄弟の無念を晴らすと…
だが、俺は失敗した。
俺が再び意識を取り戻した時、俺はお父様の意のままに動く戦闘マシーンとしてその力を奮っていた。
そう…俺は、
『洗脳』されたのだ。
己の心を…
全て消し去られて…
次回予告
バサラ「全てを失った俺の前に現れたのが、
・・・あの方だった」




