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神を導きし救世主!  作者: 河童王子
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大威徳明王・大徳力也!!


愛する者を全て失った大徳力也の前に現れたのは、


あの老人であった。



俺は大徳力也…


俺の愚かな行為から…


俺は全てを…


失ってしまったのだった。




俺は一人、廃墟と化した寺で蹲っていたのだ。


そこに現れた一人の老人…


老人「…だらし無い男じゃ!自分の仕出かした過ちを放たらかしとはのう…」



俺はその老人の言葉を無視していた。


怒る気力も…


資格もないからだ。


俺は…


一体、俺は…


そんな俺に追いうちをかけるように、老人は言葉を続けた。



老人「まったく…死んだ奴らが浮かばれんのう~まだ生きたかっただろうに…生きていれば、まだまだ楽しい事も幸せな事もあったと言うのに…無駄死にじゃのう?」



力也「!!」



俺は…図星をつかれて!いや、俺を中傷するのは構わない…だが、父や兄貴、子供達の死を無駄と言い切るこの老人に俺は怒りを感じたのだった。



力也「いい加減にしろよ!じじぃ!口が過ぎると、あんたの寿命も縮めるぞ?」


俺は老人に威嚇し脅しをかけたのだ。


これで黙ってくれたらそれで良い…


放っておいてくれ…


だが、老人は怯む事なく軽口を続けたのである。



老人「おや?口だけは達者のようじゃのう?しかし図体ばかりデカイだけでなく、態度もデカイのう?」



ピクッ…


俺は立ち上がった。



力也「いい加減にしろ!」


俺は大人気なく、老人に向かって拳を振るってしまったのだ。



やべえ…


そう思った時…


俺は目の前の老人に対して目を丸くした。


俺の拳は、老人の持っていた錫杖で止められたのだ!


ありえねぇ…



俺の拳は百キロで走って来るトラックをも殴り止める威力があるんだぜぇ??



それを…こんな老人の錫杖なんかで止められるはずないだろ?


俺は頭に来て、老人に向かって幾度と拳を振るったが、老人に軽々と躱されたのである。


そして、あろう事に老人は俺の拳を掴むと、そのまま俺の巨体を放り投げたのだ!?



こんな細腕の老人が、倍以上ある俺の身体を??



一体全体何がどうなってやがるんだ??



すると老人は言った。



力也「少しは元気が出て来たようじゃのう!どうする?戦うか否か!儂ならオヌシに戦う術を与える事が出来るのじゃがのう?」



何故だ?初めて会った名も素性も解らぬこの老人の言葉が俺の心を揺さぶった?


俺にまだ出来る事があるのか?


だが、不思議とこの老人の言葉には死を願っていたはずの俺を突き動かすほどの力があったのだ。




老人のこの言葉が俺に生きる術を…


道を与えてくれた。



俺は涙を流しながら、藁をも掴む気持ちで、この老人に縋ったのだった!




力也「老人…俺に…


力を貸してください…


償うための力を…


俺に…ください…」



俺は初めて会ったこの老人に頭を下げ、涙を流しながら懇願したのだった。


この老人は俺に力を与えてくれる…


俺の本能がそう訴える。


そして、俺はこの役行者…小角老人と行動をともにする事になったのだ。



目的は、この地に放たれ逃げ出し俺の大切な者全てを奪った後に消えた魔神を追う事!


魔神を追う旅が始まったのだった…



その間、俺は死に物狂いで小角老人の教えを学んだ。


小角老人の教えは俺をみるみるうちに成長させた。


俺自身が実感出来る程に!


そして、三年の月日が経ったのである。



俺と小角老人は、あの日以来行方をくらませていた魔神を探し当て追い詰めたのだった。


魔神はまるで冬眠でもするかの如く山奥の洞窟に眠っていたのである。



小角殿曰く…



魔神は人間との契約に失敗すると、自我としての魔の意識に支配され、名前の通り『魔』の『神』として再び蘇るのだそうだ。


『明王』は本来、十二の封印を施すために使われた膨大なる神の意志の塊…


その意志は封印の中の凄まじい魔物達の悪意の中で、次第に汚れを帯びてしまっているのだと言う。



明王との契約は、先にその浄化が肝心だったのだ…



俺はそうとも知らずに、明王の姿をした悪意の塊と契約しようとしたのである。


その悪意の塊は、そんな馬鹿な俺の意識に入り込み、


記憶を読み取り…


俺の大切な者達を探り…


手当たり次第に殺しまくったのだ!



俺は…


馬鹿だ…



先にそれを知っていれば…


いや?知っていたからどうなる?それに、全ては手遅れなのだ!


だから、今度こそ俺は負けられない!



俺の前には、あの日、俺から全てを奪い去った魔神が立っていた。


圧倒的な力で俺を恐怖させ、何も出来なかったあの日・・・



だが、不思議と今の俺は魔神を前にして心が穏やかでいた?


やっと・・・


やっと!あの日をやり直せる!!



「ウオオオオオオオオ!」



俺の身体から凄まじい気が高まると同時に魔神に向かって行く!




そして、





俺と小角殿は…


魔神との激闘の末…




辛うじて再び魔神を封じる事に成功したのだった。




俺は立ちすくむ。




終わった…


いや、まだ…




俺は手刀に気を籠める。



もう思い残す事はねぇな…


俺は自分の胸に目掛け、手刀を突き刺したのだ!



小角殿が気付き、叱咤する声が聞こえた…



『馬鹿者ぉー!』



だが、手遅れだった。



俺の手刀は…



なっ?



俺の手刀は胸の手前で、金縛りにあったかのように止まっていたのである。


馬鹿な…無意識に死ぬ事に対して躊躇したのか?


いや、違う…!


俺の手には光が集まっていたのだ??



暖かい温もりのある光…



この感じ…



覚えている…



この温もりは…



忘れるはずがねぇ…



あっ…あああ…!



この温もり!光は!あの子供達の手の温もりだぁ…


光は次第に分かれ…


俺の目の前に形を現わしていく。



それは間違いなく…



『お…お前…たち…なのか?』



それは、死んだ子供達の魂であった。



『お前達は…俺を憎んでいるんじゃないのか?』



子供達は首を振る。



『こんな俺に生きろと?生きろと言うのか?こんな俺に?』



子供達は涙する俺に頷き笑顔を向けた。



それは、


「ずっと見てた…


力也兄ちゃん…


ずっと…苦しんでた…


もう、苦しまないで?」




と、訴えているようだった。



『そうか…』



俺は立ち上がり、



『なら、俺は誓う!


俺の命ある限り!俺は弱き者達…力のなき者達のために…我が力を奮おう!我が命は!未来ある者達のために使うと…お前達に誓う!


それが、力ある者の定め!それが幼くして死んだお前達への償いだと、我が魂に刻もう!』






その時…


俺の前に光りに包まれた神が現れたのだ!!


光り輝く神…


『明王!』



その悪鬼をも震え上がらせる容貌からは信じられぬ程の…暖かな光りの主!


すると明王は俺の中に溶け込むように、消えていったのだった。





小角「どうやら神がお主を認めたようじゃのう…」




子供達の魂は天に召されるかのように昇天していく。


その子供達を先導する魂が、俺に軽く頷いた…



その者は俺に「それで良い」と、言ってるように思えた。



力也「あ…兄貴…?」



俺は…


もう迷わないぞ…




その後、俺は菜々子さんの入院している病室に行ったのだった。



小角「本当に…良いのか?」


力也「あぁ…これから俺の進む道は、険しく危険が伴う…彼女とはどちらにせよ…」



そう言って俺は術札を眠っている菜々子さんの額に貼付け、念を籠めたのだった。



力也「目覚めた時には悪夢は全て忘れていよう…子供達の事も…俺の事も…菜々子さん…貴女は新しい人生を送ってください。お幸せに…」



そして、俺と小角殿は病室を出て行った。




後に、目覚めた菜々子さんは、ここ数年間の記憶が消えていたと言う。


廃人のままよりマシだ…


そして、その時に親身になってくれていた担当医と結婚したと言う事を噂で聞いたのだった。



そして、俺は…



『オン・シュチリ・キャラロハ・ウン・ケン・ソワカ!』




俺の背後に現れる神…


大威徳明王を守護神に…


俺は戦い…


今を生きると誓ったのだ!







俺は三蔵だ。


大徳から聞いた過去の話は、俺の胸を締め付けた。



確かに似ている…



俺も…


大切な者達の死に支えられ、生きているのだから…


幼少に死んだ両親…


そして小角…


俺に力があれば?



そんな俺に大徳は言った。


大徳「強くなれ!三蔵!


お前はまだまだ強くなれる!俺なんかが太刀打ち出来ぬ程の素質を!


お前の中に感じる!


お前は強くなれるのだ!



この世界を!


いや?大切な者を失わずに守れる力があるのだ!」



三蔵「!!」



俺は…強くなれる?


もっと…もっと…


俺の中で、昔の記憶が蘇って来る。


カミシニとの戦い…


スサノオとヒノガの一騎打ち…


どれを取っても、人間の領域を遥かに超えた戦いだった。


人間の俺には踏み込められなく、何も出来なかった戦いばかり…


だが、目の前のこいつは人間でありながら、その領域に達しているのが解る!



俺に力があれば…


もっと死ななくても良かった者達もいたんじゃないか?


ヤオヨローズの戦いでは犠牲が多過ぎた…


俺にもっと力があれば…


小角も死なずにすんだんじゃないのか…?


それに、晴明も助けられるはずだ!



三蔵「俺を…俺を…」



ダメだ…


言えねぇ…



その時、俺は大徳を見上げたのである。



三蔵「!!」




その時、俺は見たのだ。


見た目も全然違う大徳の姿が、その大徳に俺は…


小角の姿が…


重なって見えたのである。



お…小角…!



その時、


俺の口から発っせられた言葉は…



三蔵「お願いだ!俺を…俺を強くさせてくれ!誰にも負けない力を!晴明を助けに行ける力を!」



そんな俺に…


大徳は静かに頷いたのだった。



次回予告


三蔵「次の話は俺の修業の話だぜ?


お前達も俺のやる修業に挑戦して、一緒に強くなろうぜ!


ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!


俺はもっと強くなる!!」

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