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神を導きし救世主!  作者: 河童王子
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雪に染まる赤!?


若き大徳力也は、その禁断の箱を開けてしまったのだ。


それが全てを狂わすとも知らずに・・・



俺は雪が降り荒れる中、一人号泣していた。



すべて…


俺の責任だ…


俺が馬鹿だった…




俺は大徳力也


俺の馬鹿な行為が俺の大切なモノを、全て消し去ったのだった。



俺はあの日…


一人、儀式が行われる道場に忍び込み、封印されていた『パンドラの箱』を開けてしまったのである。



箱から噴き出すように現れた魑魅魍魎を、たった一人で撃破したまでは良かった。


だが、最後に現れた魔物…


『明王』と呼ばれる魔神を目の当たりにした時、俺は身体が凍り付いたように動けなくなったのだ。



あああ…!


それは本能?


俺の中の野性の本能が『逃げろ!』と訴えてきやがるんだ!



冷たい汗が大量に流れ…


喉が異常に渇く!


足が震えて止まらねぇ…


俺の身体は、一体どうなっちまったんだ?



まさか認めたくないが…


これは恐怖?


この俺が…


鬼を素手で殺すこの俺が恐怖を感じていると言うのか??



目の前に現れた魔神が、その姿を現す。俺の倍以上ある巨大な存在!その凄まじき威圧感が更に俺の自由を奪う。


そして魔神の声が俺の脳に直接入って来たのだ。



魔神『お前にとっての力とは何だ?何のために力を欲するのだ!』



何だと?力とはだと?



俺は震える身体に鞭を打ち、魔神に向かって叫んだのだった!



力也「力とは…力とは俺が生きている証明!俺が俺であるがための手段だぁ!」


その時…


魔神の気が…


その圧力を増したのだ!



力也「グッ!」


硬直して動けない俺に向かって、声が響いた。



魔神『ふふふ…ならば…その証明する相手が…いなくなればどうだ?』



力也「な…何?どういう事だ!」



その時、凄まじい邪悪な気を感じて寺の僧侶達が道場に入って来たのだ。



僧侶「こ…これは一体何事ですか!」


力也「ば…馬鹿野郎!逃げろ!」



俺の言葉は意味をなくした。入って来た僧侶達は一瞬にして、肉塊へと変わり果てた姿になったのだ。


血が噴き出し、首(頭)が転がり、身体が潰れ、その原型を留めない程に…



力也「う…嘘だろ?」



それは一瞬だった。


それは魔神の振り払った腕から放たれた斬気だった。


更に斬気が俺に向けられようとした時…



「力也ぁー!」



突如、俺は何者かに弾き飛ばされ、転げるように今いた場所から弾かれたのだ。

俺が先程いた場所に、魔神より放たれた斬気が床板を抉り押し潰す。


その中に人影が?


それは俺を押し飛ばし庇った者であった。



力也「あ…あ…」



その者は胸を切り裂かれ、血塗れになりながら立っていた。



力也『あにきぃー!』



それは、次男の大徳高良であった。



高良「ふふ…嫌な予感がして来て見たら…やはりお前の仕業か…だが、運良く間に合ったようだな?」



力也「あ…兄貴…ど…どうして?」



高良兄貴は致命的な状態で俺に言った。



高良「馬鹿者!俺はお前の兄だ!兄が弟を守って何かおかしいか?ふふ…」


力也「あ…兄貴…」


高良『力也!生きろ!そして、お前の責任を果たすのだ!力也…俺は…お前を……信じているぞ!!』



その言葉を言い終える前に、兄貴は俺の目の前で…


新たに放たれた魔神の斬気で跡形もなく…


消えた!!


力也「がああああ!あにきぃー!!」


俺はその場に力なく座り込んでしまった。



もうダメだ…


そう思った時、魔神は俺の目の前から消えたのだ?



力也「助かったのか…俺は?」



俺は放心状態で兄貴の骸に近寄る。


兄貴…何故…兄貴が…?


兄貴…兄貴…兄貴…!


俺は…あんたを…尊敬していたんだ…



兄貴に助けて貰ったのは二度目だった。


かつて兄貴が取り逃がした魔物が仕返しに来た時、魔物が最初に狙ったのが俺だったのである。


俺は力を奪われ、成すすべもなかったのだ。


幼かった俺は恐怖に怯えていただけだったのである。


そんな俺を救ったのが高良兄貴だった!



魔物が忍び込んで来た事に気付き俺の部屋に飛び込んで来た兄貴は、その片目を犠牲にして俺を守ってくれたのだ!


その時、俺は恐怖で脅えた姿を見て、父上も俺の本質…魂の弱さを感じたのか。


そう。俺は自分自身の弱さを誤魔化すために荒くれた態度で、力を求めていたのかもしれない…



くそぉ…


そう言えば兄貴も、何のために強くなるかって言ってたよな?


俺は強くなって…


兄貴…あんたに認めて貰いたかったんだよぉ…



俺が唯一…


幼少より慕い…尊敬し…


憧れ…



あんたのように強く…強くなりたかった…


あんたに近付きたかったんだーー!!


これじゃあ…


何のために…俺は?


強くなれば?



その時、俺は魔神の言葉が頭に過ぎったのだった。



魔神『ならば…その証明する相手がいなければどうだ?』



あれはどういう意味だ?



まさか…??


俺は正気に戻り、道場から飛び出したのだった。



道場の外は…


炎に包まれていた。



寺が…山が…


そこにいた顔見知りの僧侶達が、親父や長男の兄貴が既に魔神の手にかかったのだ。


何をやってんだ…俺…



俺は再び疼くまり、両腕を握り締める。


爪が肉をえぐり…


血が垂れ流れ落ちる。



俺は額を幾度と地面に叩きつけた。額が割れ、血が噴き出し、血塗れになりながら俺は自分自身への怒りに震えていた。



このまま死んでしまいたかった…


が、



俺にもう一つ…


考えたくない嫌な予感が…


頭を過ぎったのだ!!



あの魔神は俺の認めてもらいたい者全てをって言ってたよな?



俺が認めて貰いたい?



兄貴…親…寺の奴ら…


いや、それだけじゃない…


俺は立ち上がり、駆け出したのだった!



まさか…!


まさか…!!



いや、そんなはず…


絶対に…


あっちゃ…


あっちゃ…ダメ…だ…



俺は駆け出していた。


気付くと空から雪が降っていた。


辺りは雪景色になっていたのである。



まるで俺の行く手を阻むように、吹雪の如く雪が降り荒れる中、俺がたどり着いた場所は…



あの孤児院だった。



白い雪が…


白い雪が…



赤く…染まっていた…



俺の目の前には孤児院が炎に包まれ、積もった白い雪が真っ赤に染まっていた。



俺の…俺の全てが…



赤く染まっていく…




崩れていく孤児院。その中央に、誰かがいた?



俺は静かにその人に近付いて行く。



間違いない…



な…菜々子…さん…!



菜々子さんは裸足で座り込んだ状態で、燃え盛る孤児院を見ていた…



俺は力なく、ゆっくりと菜々子さんに近付く。



菜々子さんは手触りで、何かを集めていた…



それは…



既に形を失い転がっている…転がっている…



うっ…うっ…ううう…



俺の目から涙が溢れ出す。


菜々子さんが集めていたのは、孤児院にいた…


子供達の…


子供達の変わり果てた…



残骸…だったのだ!!




力也「な…菜々子さん…」


俺が菜々子さんの肩に触れた時、



菜々子「ひゃっ…ひひひ…いひひ…みんな…みんな…し…死んじゃ…死んじゃた…いひひ…みんな…バラバラに…なっちゃった…みんな…アハハハハハ!」



力也「!!」



魔神は寺を襲った後、この孤児院に向かったのだ。


孤児院では、菜々子さんと子供達がクリスマスの用意をしていた。



明日を楽しみにして…



そこに天井を突き破り、人外のモノ…


魔神が現れたのだ!



その後…


菜々子さんは…


突然起きた惨劇に正気を失い、目の前で貪られるように引き契られ、食われる子供達を前にして…


自我を保てなくなった彼女は…


精神が…心が…


壊れた…のだった。



本当なら…


今日…


ここで、俺と…


菜々子さんと…


孤児院の子供達と…


楽しく…


クリスマスを…


祝うはずだったのに…



子供達に選びに選んだクリスマスプレゼントを渡して、喜ぶあいつ達の顔を見たかった。



菜々子さんに…


思いを…


告げたかった…



雪を見ながら、食事やケーキを囲んで…


皆で…皆で…



楽しく…


たの…し…く…



それを…それを…



俺が…


俺が…



俺の馬鹿な行為が…


兄貴や父親…


寺の仲間達…


そして…


大切な人(菜々子さん)をこんな目に合わせたあげく…

何も関係ない…


子供達の尊い命までも…






消してしまったんだぁー!





俺は菜々子さんを病院に運んだ後、一人…


死んでいった寺の皆の墓を一つ一つ作った…


そして崩壊した寺の真ん中で、蹲っていたのだ。



お願いだ…


だれか…



誰か俺を…


殺してくれ…




そんな俺の前にあの老人は現れた。




「オヌシがこの原因を作った大徳力也殿かのう?」



これが…


俺と…役行者[小角]殿との出会いであった…。


次回予告


三蔵「・・・・・・」











三蔵「え・・・?この展開で、俺に何を言えと?


空気読もうぜ?


いくら俺でも、この場で馬鹿な事を言えないだろ?


えっと、で、小角と出会ったのだな?


うん。続きが気になるが、これ以上聞いていて良いのか?


俺ーーー??」



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