大徳の居場所!
若きし、大徳力也
その性格は荒々しく、暴れん坊!
だが、そんな彼にも癒しがあった。
俺は大徳力也!
俺は三蔵に自分の過去を語るのだった。
俺はその頃、今と違い荒々しい性格をしていた…
夜中は魔物退治に明け暮れ昼間は酒を飲み、手当たり次第に暴れまくる。
親も、兄弟も、他の僧侶達も俺を止める事は出来なかったのだ。
当然、そんな俺は…
一人の時間が続いていた。こんな俺に誰も絡まないし関わろうともしない。
俺も、それはそれで気楽だった。
そんな俺が…
幸せを感じる時間が出来たのである。
それは…
力也「ぉ前達~!コラァ!髪を掴むなぁ~!て、おぃ!」
孤児院の子供達が俺に群がり、しがみついて来る。
頭に乗り、抱き着き、無邪気に俺なんかに笑顔を見せやがる。
こんな俺にだ…
こんな俺に…
俺の唯一の『幸せ』を感じる時間…そして…
菜々子「あら?力也さん!また、いらしてくださっていたんですね?」
力也「菜々子さん!はっ…はい!いらしました!」
俺の前に現れたこの女性は沢田菜々子さん。
つまりだ…
彼女は俺の前に現れた天使だぁー!
じゃなくて…
ハハハ…
髪が背中まで長く、細身の身体付き。優しそうな瞳の小柄な女性。
そりゃあ~言い直すべきだよな?
ウム。
彼女は女神だぁーー!!
俺がこの孤児院に足を運ぶようになったのは、去年の冬だったかな?
クリスマスの夜に玩具店の前で、数人のガキ達が物欲しげにオモチャを眺めていたのを見かけた。俺は一度、その場を通り過ぎ飲みに向かったのだったが、数時間して再びその場所に戻って来た後も、そのガキ達はまだ…そこで眺めていたのだ。
俺はほんの好奇心で、そのガキ達の事を一緒に連れ回していた(荷物持ちに…)僧侶に尋ねた所…
近くに魔物に両親を殺された身寄りのないガキ達を集めた孤児院があり、多分そこのガキ達であろうと言う事だった。
「ふ~ん…」
その夜中に、孤児院に大量の玩具が運ばれた。
差し出し人は…
『通りすがりの足長タイガー兄さん』
と、書かれていた。
その正体だと?
空気読めよ?俺だよ?俺!
なぬ?俺らしくないだと?
確かに…
まぁ~俺は退魔行なんたらで普段金は酒にしか使わないし、寺もデカイから、金に不自由はなかった。
だから、ほんの気まぐれでクリスマスに孤児院にプレゼントを贈った訳だが…
何処からつきとめたのか?その孤児院の先生が俺に感謝したいと、寺にまでやって来たのだ。
俺は面倒臭いのは御免だと、寺の僧侶に追い返すように伝えたのだが…
その女先生は俺のいる部屋にまで、ずけずけと入って来たのである。
俺は仕方なく自分で追い返そうと部屋から顔を出した時、
力也「礼なんて…いら…いら…いらあ!?」
俺は硬直した…
女先生も硬直していた…
二人硬直した。
女先生は当然、俺の容貌だろう?見上げる程の大男が、突然現れたのだからな!
俺はと言うと?
俺は…俺は…
胸が締め付けられた。
何だこりゃ?
何かの呪いか!
しかし…嫌な痛みじゃねぇぞ??
その時、女先生の声で俺は我に返ったのだった。
『キャアアアアアア!』
俺は慌てふためきながら女先生をなだめたのだった。
それが、この先生…
菜々子さんとの出会いだったのだ。
その後…
俺は度々、孤児院に出向く事になった。
最初は俺に怯えていた子供達も、次第に俺になつき、
な…な…菜々子さんとも…お話出来…出来るように…なったのだった…
う…うむ。
で…!でだ!
そんなある日、俺はとうとう…な…菜々子さんに…
力也「な…菜々子さん!あの…あのですな?え~明日のクリスマスに…クリスマスに…ほんの…少しで良いのですがぁ!えっと…え~…俺!いや、私と…少し…ほんの少し…」
菜々子「えっ?」
力也「私にお時間いただけないでしょうかぁー??」
菜々子「………」
力也「いや!あの!迷惑でしたら…本当…すみません!です!あ…ハイ!」
俺は緊張でパニくり、もう何が何だか解らなくなっていた。そんな俺を察してくれた菜々子さんは、
力也「!!」
俺に軽く頷いてくれたのだった。
力也『いゃあほ~い!』
菜々子「クスッ」
俺はその場で飛び回り喜んだのだった。
今思うと恥ずかしい話だ。
そんな幸せな俺の一日をぶち壊す事が、帰宅した後に起きたのだった。
俺が寺に帰宅した後…
俺と兄貴の二人は突然父上に呼ばれ、寺の道場に集められたのである。それは、この寺で重大な儀式が始まるとの報告だった。
その儀式の内容とは?
俺と二人の兄貴達のみに言い下されたのである。
父親「明日の夜、零時!私達の奉る神…明王神の召喚儀式が行われる!そこでお前達三人の中から一人、その神を宿す契約者になってもらう事になったのだ!」
『!!』
父親「そこで、私は次男の高良に任せたいのだが…」
俺は察した。
長男の兄貴は表世界でも優秀で、顔も広まっている。明王をその身に宿せば、裏世界に身を置かなければならないのだ…
それに、この儀式は危険で失敗もありえる。死と隣り合わせの儀式なのだ。
父親は長男の兄貴以外は子供として見ていない節がある。
万が一、長男に何かあればと思ったんだろうな…
そこで次男の高良兄貴だ!
高良兄貴は、父上には絶対に逆らわない性格だった。
明王をその身に宿せば、表裏世界で絶対的な権力を手に入れる。私利私欲に走れば誰も逆らえないのだ。
だからこそ従順な高良兄貴は父上には好都合なのであろう。
儀式は明日の夜中の零時丁度。儀式には『パンドラの箱』と呼ばれる箱があり、その箱を開けると魑魅魍魎が噴き出して来るのだそうだ。その魑魅魍魎を退かせるために、腕のある僧侶達が明日集められるのである。俺もその一員として、魔物を退魔に参加するように命令された。
で、その魑魅魍魎を退かせた後に、『明王』が出現するのらしいが…
それを待ち、明王との契約の儀式が始まるのである。
しかし…
『明王』とはな?
マジに明王を…いや?神を我が身に宿せるのか?
圧倒的なる力…
力の象徴…
面白いじゃねぇか!
そこで、俺は父上に言い放ったのである。
力也「反対だ!その明王は俺が頂戴するぜ!俺にもその権利があるんだろ?」
父上「力也!確かにお前にも権利はある。だが、お前には明王をその身に宿す器ではないのだ!」
力也「あん?器だと?父上よ~俺をナメるなよ?悪いが俺は兄貴達より力は上だぜ!」
父上「力だけではないのだ!明王に相応しい器に必要なのは力だけではないのだ!」
力也「何だよ?」
父上「それは『魂の強さ』だ!」
力也「はぁ?はぁ?はぁ~?何を言ってるんだか!俺が相応しくないだと??魂の強さだと?俺に何か劣ってる物があるのかよ?」
父上「お前は…弱い!」
力也「何だとぉ!」
俺は父上の胸倉を掴んだのである。
解っている!『明王』を宿せば表裏関係なく、この寺院はその者が統べる事になるのだ…
だから、俺が契約する事に父親は面白くないのだ。
俺は頭にきて父上に殴りかかろうとした時、次男の高良兄貴が俺の振り上げた腕を掴む。
高良「止めろ!力也!」
長男と言えば、俺に恐怖して震えているだけ。
ふん!
軟弱な長男と違い、俺はこの高良兄貴には昔から逆らえないでいた。
俺はこの兄貴を…
いや?そんな事は今はどうでも良い…
俺は頭にきて、この場から出て行ったのだった。
力也「くそったれ!」
俺はその日も酒を飲み、我を忘れるくらいに酔ぱらっていた。
そこで俺は少し気持ちが大きくなり、馬鹿な事を考え始めたのだ。
『早い者勝ちだよな?やっぱし…それに、俺が無事に明王を手に入れたら誰も文句言えまい…』
『それに明日は菜々子さんとのお約束もあるし…』
そこで俺は一人、儀式の行われる道場に忍び込んだのである。
道場の至る所には結解が幾重にも張られていて、その中心には一つの箱が置かれていた。
俺は結解をくぐり抜け、道場の中心に置かれた箱を手に取る。
力也「へへへ…そんじゃあ~?明王様ってのを戴きましょうかぁ!」
俺は箱に気を籠めながら箱を開けた。
開けてはならかった…
この…
パンドラの箱を!
その瞬間、箱の中から妖気が噴き出し、その妖気は魔物の姿へと形を変えていく!
力也「他愛のない魔物だぜぇ!」
俺は道場中に現れた魔物達を、事もなげにぶっ倒していったのだ。
すると…転がっていたパンドラの箱がひとりでに動き出したのである。
力也「いよいよ本命のお出ましか?」
俺はニヤリと笑った。
その夜…
俺は…
俺の仕出かした馬鹿な行為から、俺の大切なもの…
全てを失ったのだった。
次回予告
三蔵「えっ?何が起きるんだよ?目茶苦茶気になるじゃねえか!」
大徳「・・・やはり、この話は終わりにしないか?ふむ」
三蔵「ふむ。じゃねえよ!」




