新たな物語の始まりを告げる仁王立ちの少女?
三蔵が消えて、神々が動き出す。
世界の終幕到来?
だが、この世界にはまだ・・・
そして、時は流れる…
直ぐにでも動き出すかに思えた神々も主だった動きもなく、既に三蔵がこの世界から消えて五年の月日が過ぎようとしていた。
ここは、総本山…
いや?新たな総本山本部と言おう。
あの蚩尤の襲撃より壊滅したかに思われた総本山も、その頂点である神を導きし救世主である座主・三蔵が存命であったため再建する事が出来たのだ。
だが、その損失は大きく…
座主の側近であった明王の守護者達と参謀であった三千院氏が戦死したため、新たに安倍晴明氏を側近として迎えたのだ。
晴明「座主様、例の件ですが…」
座主「新たな特種体の能力者の事だな?」
特種体の能力者とは、ここ数年の間に発生した問題であった。
突如、人間達の間に異種能力を使う者が数多く現れたのである。
その異種能力を手に入れた人間達は、必ずとして罪に手を染める…
座主「今だ蚩尤の縛りより解き放たれた残党討伐もままならぬと言うのに…」
晴明「蚩尤鬼ですね」
蚩尤鬼とは、蚩尤より生み出された魔物の残党…蚩尤鬼は人知れず人間界に潜んでいるのだ。
座主「晴明よ!例の計画は進んでいるのだろうな?」
晴明「はい。百輝夜光計画は着実に進んでおります。今も、例の彼が渋谷に向かっております」
座主「そうか?なら安心と言えよう」
晴明「………」
場所は変わり、渋谷…
この数ヶ月の間、渋谷にて怪事件が頻繁していた。
それは…
『きゃああああ!』
突然の女の悲鳴に、突如一緒に歩いていた男の身体が炎に包まれた。
そう。この数ヶ月に同じような事件が頻繁に起きていたのだ…
人体発火事件!?
そこに唾を吐く男がいた。
(ケッ!いちゃついてるからだ!)
その不審な男は、人混みに紛れるように消えて行く?
『待て!今のはお前か?』
「なっ??」
不審者は突然呼び止められて急ぎ足で逃げたのだ。
人目のない建物の影に隠れた男は息を整えながら、
「ハァハァ…びっくりしたぜ…まさか、俺がやったのが、ばれた?そんな馬鹿な!?」
この不審者こそ、先程通りすがりのカップルの男を、火だるまにした張本人であり、晴明が言っていた能力者であった。
すると、その背後から…
「逃げても無駄だ!観念するのだな?お前がここ最近の人間発火事件の犯人なのは解っている!」
警察?いや、違う…
その追って来た人物は、その瞳に強い意志を持った学ラン姿の少年だった。
不審者は、「何を言っているか……」
『わからねーよ!』
そう叫ぶと同時に不審な男の掌から炎が発火し、学ランの少年に炎が纏わり付いて火だるまにした。
不審者「ケッ!追って来なきゃ死ぬ事なかったのによ?馬鹿な野郎だぜ!俺は炎が自由に使えるんだよ!バーカ!」
が、炎は更に渦を巻くように強くなっていく…
(あれ?こんなに炎が強くなっていくなんて?あんまり酷くなると人が来やがるじゃんか!)
だが、炎は弱まるどころか強まっていく?
不審者「何だよ?こりゃー?」
すると…
『炎を自由にだと?笑止!炎はこう使うのだ!』
今度は炎が不審者の男の周りを囲んだのだ!
不審者「なっ?何だ?これ?消えろ!炎!エィ!エィ!」
が、炎は更に強く激しくなっていく…
不審者「どうなっちまったんだよ!?」
その時、パニくる不審者の耳に何やら聞こえて来たのだ。
それは…
『ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!』
不審者が声のする方向を見ると、学ランの少年の背後から炎の魔神が出現する!
不審者「何だよ!これ?化け物か?ふざけるなよ!この化け物!燃えて消えろぉーー!!」
男は再び炎を発生させて学ランの少年に放つが、逆に炎が魔神の中へと飲み込まれていく。
『貴様のような汚れた炎では俺の不動明王の炎はびくともしないぞ!』
すると、学ラン少年の掌から炎の剣が出現したのだ。そして怯え逃げようとする不審者の身体を一刀両断にしたのだ。
いや、その剣が斬ったのは男の持つ能力のみ?
学ランの少年は倒れた男を見下ろしつつ…
「俺の剣によりお前の能力を消し去った。二度とその力は使えやしない!後はお前が犯した罪を人間達の法で償うがよい!」
そう言って、その場から消えて立ち去ったのだ。
遅れて警察官が入って来て不審者を捕らえていた。
再び、場所は総本山へと変わる。
晴明「彼は度がつく正義感と、真っ直ぐな少年です」
座主「あの者には期待しているよ。私が今、一番心配しているのは…」
晴明「ですね…」
再び、場所は変わる。
ここでもまた、奇妙な事件が起きていた。
一本道…この先にあんまり使われていないトンネルがあった。このトンネルは幾度と事件が起きていた。衝突事故はもちろん、トンネルに入ったはずの車がいつになっても出て来ないような神隠しが多発していたのである。
さすがに通行止めになったものの、まだ事件は続いていた。
夜中になると、まるで徘徊するかのように少年少女がトンネルの中へと消えて行き、そのまま消息不明となっているのである。
そして、今も…
制服を着た少女がそのトンネルの中へと、暗闇の中へ誘われるかのように入って行く。
トンネルの中は照明も無く真っ暗だった。既に光が見えなくなった時、トンネルの中がぼんやりと光出したのだ?
「!!」
少女はそこで気付いたのだ。目の前に見上げるほどの怨霊の顔が浮かび上がり、自分自身を見下ろしているのを!
少女はただ無言で、その怨霊の姿を見上げていた。
すると、怨霊が語りかけて来たのである。
《ムスメヨ…オソレルコトハナイ…イマニ、オワル…イマニ、オレガ…オマエノ…ハラワタヲ、クラッテヤル…ソシテ、オワルカラ!》
そう言うと、怨霊は顔を俯かせ何も言葉を発しない少女に向かって近付くと、
怨霊《キョウフデ、ヒメイ…スラ…デナ…イカ?ガァー!!》
口を広げて襲い掛かって来たのだ!
少女は身動きせずに…
ただ、一言…
『却下ぁーーー!!』
怨霊《ヘェーー???》
予想外の少女のリアクションに対して、怨霊はずっこけて地面に落下したのである。
怨霊《ナニヲ??恐怖で気が動転してとち狂ったのか?》
地面に転げ落ちた器用な怨霊が再び少女を見上げた時、怨霊はその目を見開き驚いた?
何故なら、その少女は…
仁王立ちだったからだ!!
腰に手を置き怨霊を見下ろす少女は、いかにもエラそうであった。
怨霊《ナッ?ナッ?ナッ?人間の娘が調子こいて!怨霊を甘く見てると、ションベン垂らして泣くはめになるぞぉー!コラァー!》
スパァーーン!
怨霊《ハギャア!》
今度は怨霊は頭部に衝撃を受けた?それは少女がいつの間にか手にしていたハリセンによって??
怨霊《ハリセンで怨霊の頭を打ちやがった??この娘!!ありえね~!マジにありえね~!昔の娘と言えば、怨霊見たら恐怖でチビり泣き叫ぶのが当然でしょ??ねぇ?ねぇ?》
少女は「恐怖してください」と、訴える怨霊を見下ろしつつ指を振りながら得意気に言った。
『チッチッチッ!アンタ!時代に遅れてない?今の女子高生は時代の最先端を歩いてるのよ?どんどん前を向いて突き進んでるのよ?だ・か・ら!怨霊なんて時代錯誤に構ってる暇なんてないんだから!なにせ受験勉強ってもっと怖いもんを知っているのだからね!』
怨霊《時代錯誤って…受験勉強って…そういう問題じゃ…》
少女『つべこべ言わない!』
怨霊《(ビクッ)ハイ!》
少女「そもそも、私の許可なく悪い事したらダメでしょ?許可なんか最初からする訳ないけどさ?それをあんたって怨霊は!クドクド…」
と、意味不明な説教をし始めたのである。
余りの勢いに飲み込まれ素直に聞いていた怨霊も我に返り…
《フザケルナァーー!》
ぶちギレたのだった…
「あ、やっぱし無理?」
少女はあっけらかんとした表情で、目の前にまで迫って来た怨霊に対し…
対し?
その顔面目掛けて、飛び膝蹴りを食らわしたのだ!
って、おぃ!
顔を抑えて悶える怨霊は再び少女を見上げると…
その少女は!?
凛として、仁王立ちだったのである!
少女『いい加減にしないと、ぶん殴るよ!』
いや、飛び膝蹴りした後にぶん殴る言われても…
怨霊は、その時気付いたのである。
怨霊《何故、人間のお前が霊に触れられるのだ?何故平然としているのだ?何故……??お前は一体何者なんだぁーーー!!!》
『エッ?来月から女子高生になる普通の女の子ですが、ナニカ?』
少女は平然と当たり前のように言い切り…
『ただ、ちょっとおマセな女の子だけどね?』
お茶目な少女は手にしたハリセンを両手に掴むと、身体全体で振り回し…
目の前の怨霊にツッコミ…しゃなくて、再び殴り飛ばしたのだった。
怨霊はトンネルの天井壁に直撃し弱々しく落下した。
怨霊《な…何なんだ~この娘は?何なんだよぉーー??》
取り乱す怨霊の落下の先には…
《!!》
少女は指先を幾度と交差させながら何やら唱えていたのである。
『臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!』
それは九字護身法!
少女は懐から取り出した札に念を籠めて叫ぶ。
『浄紙・光清!』
※ジョシコウセイ
いつの間にか少女の足元に散らばっていた札が魔法陣と化して光り輝き、トンネルの中を清浄な光が照らし始めたのだ!
《フギャアアアア!》
その光に巻き込まれた怨霊は、光に飲み込まれて跡形もなく消え去ったのだった。
「ふぅ~これにて一件落着かな?いや?まだかな…」
すると今度は再び印を結び直し念仏を唱え始める。
「さぁ、このトンネルに住み着いた邪悪な怨霊はいなくなったわ!後は皆さんが天に召される番よ?」
見るとトンネルのひび割れた隙間から、幾つもの光が浮き出して来たのだ?
これは、魂…
先程の怨霊の仕業により事故に遭い、命を亡くした者達がトンネルの中に魂を縛られ、怨霊の慰み物とされていたのだ。
『さぁ!お帰りなさい!そして、来世こそは…』
(その命を全う出来ますように…)
全ての縛られし魂を見届けた後、少女は身体を翻しトンネルから出て行く。
その足取りは軽く、
トンネルを抜けた途端に眩しい太陽の光に照らされたのだった。
「う~ん!今日も良い天気~!何か、面白い事が始まりそうな予感!」
そう言って走って行ったのだった。
彼女が一体、何者なのか?
これから始まる物語にどう関わってくるのか?
それは、蟹の味噌汁…
いや、神のみぞ知る?
そんな物語…
まぁ~
そんなこんな。
神を導きし救世主 完
この物語は一度、これにて終幕である。
しかし、この物語はこれから始まる物語への序章なのである。
第一部・転生記
第二部・神を導きし救世主
そして物語は
第三部・唯我蓮華~破壊神と呼ばれた少年~
http://ncode.syosetu.com/n1872dg/
へと続くのだ。
※また、カミシニと神々の最終聖戦が繰り広げられる
神を導きし救世主Ⅱ~神を狩る者達~
が、追加物語で始まります。
ブックマークして待ってくれると光栄です。




