八百万【やおよろず】の神!!」
三蔵の目の前で繰り広げられる怪しげな二人組と暴走族との戦い
見入っていた三蔵は、突如みぞ打ちをくらい気絶させられたのだ。
目覚めた先で三蔵が目にしたのは、ヤヲヨローズと名乗る暴走族連中のアジトだった。
俺は…三蔵…
俺は…どうやら何か変な連中と関わってしまったようなんだ。
そいつ達は、暴走族…
じゃなくて…
『ヤオヨローズ』と呼ばれる連中らしい。
そいつ達は俺が戦った神の力が無効化されちまうこれまた意味不明な二人組…
えっと、コイツ達が言うには?『カミシニ』と呼ばれる連中らしい…
と、敵対関係にあると言うのだ。
で、俺の目の前の男は名乗った。
『俺の名前は、スサノオ!この組織のリーダーだ!』
三蔵「スサノオ?」
スサノオ「俺は…いや、ここにいる連中は皆、転生者だ…」
三蔵「…転生者」
スサノオ「それも、古の神の転生者のな!」
三蔵「なっ!神の転生者だと!?」
…聞いた事がある。
転生者には晴明のような過去の霊能者だけでなく…
『神』の転生者も存在すると小角が言っていたのを!
しかし…神とは…
たまげたぜぇ…
正直、初めて出くわしたぜ…
えっ?本当かどうか解らないんじゃないのかって?
あのな~
こいつ達の霊圧…いや?神圧と言うのか?
特にリーダーのスサノオの神圧は半端ないんだよ!
『神』と言われても疑い無いくらいにな?
そう…俺の『不動明王』と初めて対峙した時みたいな異なる力を感じる!
そこに、一人の女が俺に向かって来たのだ。
あの娘は、確か…?
そうだ…カミシニって奴達に追われていた女だ!
娘「私の名前はクシナダと言います…先程は助けて戴きありがとうございました…」
クシナダ?
確か…昔話の神話で聞いた事あるような?
ん?待てよ…
月読…アマテラス…
スサノオ…
そうか!こいつ達…
『八百万の神!』
八百万の神とは、日本には神道と呼ばれる宗教があり、その代表格が天津神と国津神である。国津神は日本にもともと住んでいた神々。天津神は後からやって来た神らしい…
俺も気紛れで古事記や日本書紀なんかで読んだ記憶だけなんで、それ程詳しくないのだが…
こいつ達はその中の、天津神と呼ばれる連中に違いない!
俺は怯む事なく…
三蔵「俺は三蔵だ!宜しく頼むぜ?」
その後、俺はスサノオやヤオヨローズの連中と酒を飲み、飯を喰らい、ドンチャン騒ぎを始めたのだった。
クシナダ「あのぉ…」
三蔵「なんだ?」
するとクシナダは俺を引っ張り外に連れ出したのだ?
まさか!?
まさかぁー!!
この状況はーー??
これは恋愛ドラマでありがちな…
助けた娘との恋愛展開からの~
クシナダは俺を引っ張り連れて来た場所は人目の付かない場所!(…おっ?)
そして振り向き立ち止まると、俺を見つめたのだ…
(おっ?おっ?おっ?)
クシナダ…
やはり美人だ!
まるで女神…
ん?神様の転生者ならマジに女神じゃん?
その女神様が俺に一目惚れてか?
しかも人目の付かない場所に連れ出して、俺にナニを?いや…何を??
まさか…今から告白タイムか!
その後は勿論…て…展開早くないか?神様大胆だぜ!
俺は唾を飲み込むと、鼓動が異常に速くなるのを感じた。
俺はこのまま…
クシナダと…
アッ!!
そこで俺はコンドーさんを買い忘れてしまった事に気付いたが、なるようになるか?と心を決めたのだ!
クシナダ「お願いします!私に貴方の…」
三蔵「おっ…俺の!?」
クシナダ「…力を貸してくれませんか!」
そうかぁ!力を貸して…
って…
あれ?この展開は何だ?
恋愛ドラマは何処に行ったぁ~!夜中のお楽しみは何処に消えたぁ~??
ゴホン…取り乱してすまん…話を戻そう。
三蔵「はっ?力を貸す?」
神が俺に力を貸せだって?
三蔵「どういう事だ?」
クシナダ「私達は貴方も出会ったあのカミシニの者達と長きにわたる因縁があるのです。そして、これから起きるあの者達の恐ろしい陰謀を私達は食い止めなければなりません!その力を…私達に貸して戴きたいのです!」
三蔵「陰謀だと?何だか意味解らんが、奴達が何をしようとしているんだ?」
クシナダ「あの者達は…」
クシナダは青ざめた顔付きになって説明したのだ。
『あの者達は、赤い雨を東京に降らそうとしているのです!』
三蔵「赤い雨だって?何だそりゃ?」
するとクシナダは、懐から小さな瓶を出したのである。
三蔵「?」
クシナダ「これは…
『錬魂の雫』
と、言います…」
錬魂の雫だと?
ん?
あれ?
何か…何処かで…
クシナダ「これは人を化け物に変える魔性の液体…」
人を、化け物に…
ん?
おろ?
その時、俺の脳裏にガキの頃の記憶が蘇る…
ガキの頃の俺が目にしたもの…
半魚人との戦いの最中…
俺達の目の前で、人が化け物の姿へと変わっていく姿だったのだ!
三蔵「…………」
俺は変な縁を感じつつ、クシナダの話を聞いていた。
クシナダ「人を化け物に変えるなんて、信じがたいと思いますが…」
三蔵「大丈夫だ…で、奴達はその液体を使って何をするつもりなんだよ?さっき雨を降らせるとか言っていたが?」
クシナダ「それは…」
『あの者達は、この人を化け物に変える液体を、東京一帯に降らせようとしているのです!』
三蔵「ハッ!?」
一瞬、俺は自分の耳を疑った。
三蔵「おいおい!馬鹿言うなよな?その液体が本物で、奴達がそれを使って何かしようとしているのは解る!が、東京に降らせる程の液体が何処にあるんだ?運ぶにもどうするんだ?先ず現実味がない!どうやって降らせるんだよ?無理な話だぜ!」
クシナダ「既に計画は進んでいます…」
三蔵「!!」
クシナダ「大量の液体も決行日も…すべて確かな情報の上で話しています…」
三蔵「どういう事だ?やけに詳しいな?まるで…」
クシナダ「はい…私はカミシニとして…、あの者達と長く同行していましたから…」
三蔵「何だと!?スパイでもしていたのか?そう言えば追われていたよな?」
だが、クシナダは首を振り答えたのだ。
クシナダ「私には…あの者達と同じ能力があるのです…あの者達と同じ…」
『神の魂を殺す、忌まわしき力が…』
三蔵「な?な?な?」
そしてクシナダはカミシニ連中の謎の力の秘密を俺に説明し始めたのだ。
クシナダ「あの者達の力の秘密は『血』にあります」
三蔵「血?」
クシナダ「はい…カミシニと呼ばれる者達は、その血に特殊な能力を秘めているのです。その能力とは・・・」
三蔵「神の力を消し去るのだろ?」
クシナダ「違います!そんな甘い能力ではありません!あの血の能力は神を殺すのです!そして、その血は感染する…」
三蔵「感染だと?」
クシナダ「はい…ただ、血に選ばれた者にだけですが…この血に選ばれなかった者は、その姿を異形な化け物へと変貌してしまうのです!」
それって…まるで…
クシナダは俺が察したのを見抜き頷く。
クシナダ「この錬魂の雫の原料こそが、あの者達の血なのです!あの血は神の一切の力を無効化し、神の魂を死滅させる力があるのです!」
そんな馬鹿な話…
だが、クシナダの真剣な目と、奴等と直でやり合った今なら納得しない訳にいかなかった。
クシナダ「私はあの者達から情報を手に入れ、仲間達に連絡を取っている所を見付かり、逃げて追われている所を貴方に助けられたのです」
三蔵「にわかに信じ難いが…奴達に俺の神の力が通用しなかった理由がそれなら多少なり信用出来る…だが、やはり東京一帯にあの赤い液体を降らせるなんて無理があるだろ?」
クシナダ「出来るのです…現に…あの者達は過去に…」
『一度降らせたのだから…』
ふ…降らせただと??
三蔵「何だと?どういう事だ!」
ドォン!
『つまらない話は、そこまでにしておくんだな!』
そこに現れたのは、スサノオであった。
スサノオ「クシナダ!部外者につまらない話なんかするんじゃねぇぞ!」
クシナダ「スサノオ!」
スサノオ「この戦いは俺達のものだ!部外者が関わって、巻き添いで死なせる必要なんてないだろ?」
クシナダ「………」
スサノオは俺とクシナダの間に入り、この件はここまでだと引き裂いたのだ。
俺はと言うと…
何かムカつく!
三蔵「おぃ!スサノオ!その言い方じゃ、俺が使い物にならないみたいじゃねぇかよ?」
スサノオ「ん?使えるのか?お前は?」
カツン!
頭キタァ~!
三蔵「てめぇ…そこを動くんじゃねぇ!」
俺は拳に不動明王の業火を集中させて、スサノオに向かって殴り掛かったのだ。
『うおおおおおお!』
スサノオ「少し、格の違いって奴を教えてやろう…ニャッ」
俺は…俺は…
あれ?
次回予告
三蔵「俺・・・どうなっちまったんだ?
さて、次話!物語はヤヲヨローズとカミシニとの因縁が語られるのだ!
ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!
俺はどうする?」