西遊記かよ!十二の使徒を探せ!三蔵伝説と転生記の幕開け?
長い悪夢の一日だった。
神々の救世主争奪戦に、三蔵は娘の持つ救世主の魂を手に異世界へとたどり着いたのだが、そこは魔物達が政権争いを競う戦乱の世界だった。
俺は、旅をしていた…
長い道のりを…
行ったり来たり…
中国とインドを歩き回って、お偉い大僧正さんから有り難いと思われる巻物を頂戴しているのだ。
貰ってどうするかって?
わからん…
コレクション?
いや、違うな?
そもそも何が有り難いのかすら俺が一番理解していないのだからな?
一度、野宿して寒かった時に、焚火に使った時には有り難いと感じたくらいか?
それ以前に、巻物集めても意味ないだろ?
俺の旅の目的は…
その前に自己紹介がまだだったな?
俺は三蔵…
遠き世界から舞い降りた救世主なのだが…多分。
正直、救世主として何をするべきなのか?
俺自身理解していないのが現状…
確か、俺がこの世界に来る時にテカテカ野郎が言ってたような?
俺は思い出す。
俺が総本山から光に包まれて、この地に来る時…
俺はまばゆい光に包まれながら宙に浮いていた。
(ここは?俺は一体?)
すると、何処からか何者かの声が聞こえて来たのである。
(テレパシーか?)
すると、俺の目の前に宙に浮いた『あの光り輝く者』が現れたのだ。
三蔵『お前か?どうやら法子の代わりに俺を連れて来てくれたのだな?とりあえず礼を言わせて貰うぞ!』
すると、声が響き渡るように聞こえて来たのである。
《私はお前に賭けてみたくなったのだ…お前の強き魂の力に…》
三蔵『………』
その存在感に俺は言葉が出ないでいた…
《三蔵よ!やってみるが良い!もし、お前が運命を変える力を持っているなら…》
三蔵『運命を変える力を持っているなら?』
《その力で、未来を!世界を救って見るが良い!》
三蔵『あたぼうよ!』
《だがその前に、お前にはやってもらう事がある…》
三蔵『?』
《救世主に付き従い、運命に導かれし十二人の使徒をこの世界より探し出すのだ!》
三蔵『使徒だと?そいつ達はどんな奴だ?』
すると、俺の脳に三匹の妖怪のイメージが入りこむ…
三蔵『はっ?猿?豚?河童?』
《手始めにその者達から探してみるが良い!その者達は必ず、お前の力になってくれるはずだ!》
三蔵『まるで西遊記だな?』
俺は呆然とする中、
《三蔵よ!心して聞くが良い?もし、お前が旅の途中で断念する事があれば、その時は解っているな?》
三蔵『あぁ!解ってるぜ!』
(代わりに法子に試練てやつを負わせるつもりなのだろ?)
三蔵『任せろ!やってやろうじゃないか!お前達の運命、未来の運命!すべて引き受けてやる!』
(それが、法子の未来を守るためになるのなら…)
すると、俺は再び光に包まれて消えて行ったのだ。
俺が消え去った後には…
残りし、光の者が?
《娘の代わりに、この世界へと導かれたのがお前とは…》
その光り輝く者は、物思いにふけていた…
《かつて、救世主の資格を持っていながら、先の未来よりも今の世の苦しみを救済すると言って私から救世主の資格を拒み、敢えて茨の道を選び地獄に堕ちた神がいた…》
《閻魔天…》
《いや、地蔵菩薩よ!》
《任せましょう!私に出来なかった事を貴方に託します…》
《私の愛する世界を…未来を…頼みますよ…》
そんな思いがあった等とはつゆ知らず…
俺が次にやって来た場所は、俺のいた世界とは違う過去の世界だった。
しかも今、俺が降り立った場所、目の前には?
鎧を纏った獣頭の魔物達が左右に分かれて、戦争の真っ最中だったのだ??
(オイオイ!ありえねーー!何て場所に落とすんだ!あのテカテカ野郎!)
「グッ!」
その時、俺は身体中に強烈な痛みを感じた。
それもそのはずだ…
ついさっきまで、蚩尤率いる魔物相手に戦いの連続だったのだからな…
突然雲が裂けて光の柱が戦場の中心に落ちたかと思えば?何処ともなく現れた人間の俺に魔物達は戸惑っていた。
(どうも、こっちでは魔物を妖怪と呼ぶのらしいのだが…)
「人間だぜ?」
「突然、現れたぞ?」
「しかも、僧侶だ!」
この世界では僧侶は妖怪達の恰好の餌らしい…
当然、我先と俺に向かって襲い掛かって来たのだ。
まぁ、良い…
俺も、むしゃくしゃしていた…
しかも、あのテカテカ野郎の仕業か?幸運にも俺が時限の壁を突き破るために失った指や腕だけは復元してあった。
(妖怪達の数は左右合わせて一万かそこらか?)
(物足りねぇな…)
俺は真言を唱えていく…
『ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!』
俺の姿が不動明王へと変わり、妖怪達が突然の神の出現に驚き退く中…
『さぁ!俺の名前は三蔵だ!てめぇ達!死にたい奴からかかって来やがれぇー!そして生き残りし者は俺の名前を胸に刻み、恐怖するが良い!』
その後、俺はたった一人で妖怪の軍勢を一網打尽にしたのである。
流石に傷だらけの俺は壁に寄り掛かり、朦朧とした頭でやけに強い妖怪が二体いたのを思い出していた…
『魔王?』
(どうやら左右の地に分かれた魔王同士の領土争いだったらしい…
ゲームか何かだと、魔王を倒して世界は守られましたエンディングだよな?
雑魚の妖怪を締め上げ聞いた話だと、魔王を名乗る妖怪は他にもいると言うし…
とりあえず、この世界の魔王狩りから初めるとするか?)
そこで、俺は眠るように気を失ったのだった。
次に目が覚めた場所は何処ぞの寺であった。
俺が目を覚ますと、数人の修行僧が何やら語りかけていたが、全く聞こえやしなかったのである。
そこで俺は自分が聴覚を失っている事に気付いた。
恐らくは光の壁を抜けるために五体の明王を同時に体内に取り込んだ副作用だろうか?
以前にも、あったからな…
そうだ…
俺は昔、中国遺跡での戦いの後に嗅覚を失っていたのだから…
俺は目の前で語っている修行僧の口の動きを読む。
読唇術
ん?日本語じゃねぇな?
中国語?しかも古い言葉?
昔、小角が教えてくれた言葉みたいだ…
俺は片言で相手の言葉に応えると、連中は驚いた様子で喜んでいた。
聞くに、俺は一年近く目が覚めなかったらしい…
俺を運んでくれたのは、武闘寺院と呼ばれる妖怪退治を専門にしている僧侶達だった。あの妖怪達の領土戦争の中、崖上で隠れて俺が一人で壊滅させた現場を見て驚きつつも倒れている俺を運んでくれたのだ。
その後、俺は暫くこの寺の世話になり、衰えた身体の療養の後…
動けるようになり次第、再び己の身体に鞭を打ち、鍛え上げたのである。
そして…
俺は世話になった武闘寺院に別れを告げ、取り敢えずの目的(魔王退治)を決めて旅に出たのだ。
それから三年の月日が過ぎていった…
俺は今だに旅に答えを出せないでいたのだ。
これまで、魔王と名乗る妖怪を片っ端からぶっ倒していたせいか知名度も上がり、助けた村の人間達からは救世主と呼ばれ、とっちめた妖怪達からは死に神と怖れられていた。
今や相当、妖怪達には恨まれているらしい…
まぁ、良いか…
そんな世界で俺は何かを求め、探し続ける。
魔王の中には馬鹿げた強さの奴や面倒な能力の奴もいた…
俺も傷付き、寝る間もなく襲われる日々…
そうそう!この世界に来て気付いたのだか、どういう訳か俺の金色の魔眼とカミシニの力が消え失せていたのである。
魔眼と言えば…
俺が旅の中で探し出さねばならない十二人の使徒の手がかりには、俺が持っていた金色の魔眼を持っていると言うのだが…
会えば解るもんなのか?
謎だ…
それにしても頭に来るのはカミシニの力が失われたのが痛手であったな。俺愛用の降魔の剣が失ってしまったのだから!
俺に残された力と言えば、魂の絆にて結ばれた『明王の力』と、三千院より学んだ『天地眼』であった。
そこで俺は天地眼の力を集中させ、新たな武器を構成させたのである。
俺の新たな剣…
『天地眼・降魔の剣!』
明王の力を一点に集め金の錫杖の要領で『形』にし武器とする。
俺は新たな力を引っ提げて、旅を続けた。
ただ、一人の旅を…
いや、一人じゃねぇな?
俺の中(魂)には、いつもあいつ達がいる…
三千院…
蛇塚…
大徳…
バサラ…
そして、卑弥呼…
俺は決して一人なんかじゃねぇ…
いつまでも共に…
俺は胸に手を置き、皆の魂を感じていた。
さてと…
そんな旅の途中で俺は石猿の妖怪の話を耳にした。
かつてこの世界にて妖怪の軍勢を率い、神の住まう世界へと侵略しに導いた金色の石猿妖怪の話…
最強最悪の大魔王?
六大妖魔王の一柱?
確か名前を…??
忘れた!!
歳は取りたくないもんだ…
しかし、テカテカ野郎の教えてくれたキーワードに、猿とか言ってたのを思い出したのだ。
三蔵「…ここか?」
そこは黒い霧に囲まれた妖気に満ちた山…
『五行山』
俺は高僧の衣を纏い、ただならぬ気配に身を引き締めていた。
「うじゃうじゃいやがるぜ!妖気に群がる邪気妖霊が!しかも半端ない量だな?こりゃ気を引き締めねぇとな…」
俺の新たな戦いが、本当の戦いが始まる…
『さて、行くか!』
転生記零…三蔵外伝 終幕
次回予告
沈黙を続けていたあの者達が動き出す!
救世主が失われた後の物語・・・
※三蔵の物語の続きは第一部『転生記』にて公開中!




