謎の少年ギルと迷子の迷子の法子ちゃん?
大徳とバサラが中国遺跡に向かい、三蔵もまだ戻らない総本山に何やら異変が起きていた?
ここは総本山内部
(しまった…見失った)
軍荼利明王の契約者である蛇塚軍斗は、一人寺の中を探し回っていた。
軍斗「法子さまぁ~!何処に行かれたのですかぁ~?」
軍斗は三蔵と卑弥呼の娘である法子の世話役を務めていたのである。
が、法子は悪戯盛りで軍斗が目を離した隙に直ぐに消えてしまうのだ。
軍斗「本当に何処に行ってしまったんだぁ~!!」
場所は変わり、そこは総本山外れの森の中…
そこに一人の少年が疼くまっていた。
髪は金色の異国の少年であった。
しかし何故?
この一帯は強力な結解に阻まれ立ち入る事は不可能のはず?
そこの異国の少年とは奇怪な?
少年は胸を抑え、過呼吸のような状態で苦しんでいた。
(うっ!…ダメだよ…暴れないで?僕の中の荒ぶる魂よ…お願い…もう少し、我慢して…)
それは『何か』を自分の中に押し止めようとしているようにもみえた。
(ダメだ…壊れそうだ…)
その時、木陰から物音がしたのである。
(誰!?)
すると、そこから幼い少女が現れたのだった。
「どーしたの?大丈夫?」
その少女は、興味津々に少年に近付くと顔を覗き込んで来た。
『ダメだよ…僕から離れて…早くここから逃げて!さもないと…さもないと…』
しかし、少女は恐れる事なく答える。
「でも、イタタしてるよ?」
『早く逃げっ!!アアアアアアアアアア!!』
その時だった!
苦しみ出した少年の身体が真っ赤なオーラに包まれていき、凄まじい覇気で上半身の服が破れていく?すると、その背中から血が滲み出て、まるで『竜』の紋章のような入れ墨が浮かび上がったのだ?
少女は少年の変化に驚きつつも少年に近付き、その身体に手をやる?
『ダメ!早く逃げっ……(えっ?)』
少年は驚いた?己の身体から噴き出した赤いオーラが小さくなっていき、苦しみが軽減していったからだ?
『何?(まさか、この女の子が!?)』
その時、少年が少女の顔を見ると、少女の瞳が金色に輝いていたのである。
『!!』
少女は言った。
「痛いの痛いの飛んでけぇ~!」
直後、金色のオーラが辺り一帯を覆い、少年の身体から出ていた赤いオーラを完全に消し去ったのだ。
少年は楽になった自分の身体に驚きつつ、少女に尋ねたのである。
『…君は、誰?』
少女は言った。
「私、法子だよ!」
が、その言葉を言った直後、少女は力尽きてその場に倒れたのだった。
そこに、先程の金色のオーラの気を感じ取って大柄の男が現れたのである。
『何があったのだ!?』
それは見るからに鍛えぬかれた身体付きに、威厳とも思える風格の大男だった。
大男が少年と少女に近付いたその瞬間…
「貴様ぁー!何者だぁ!その娘から離れやがれぇ!」
木の上から蛇塚が飛び降りて来たのである。
男は蛇塚の殺気に気付き、咄嗟に強力な気を放ったのだ。
蛇塚(何者か解らねぇが、ただ者じゃねぇ!)
「オン・アミリテイ・ウン・ハッタ!」
蛇塚は印を結び、軍荼利明王の真言を唱える。
次第に蛇塚の姿が軍荼利明王の姿へと変化していく…
その手には金剛杵と呼ばれる打撃系の武器を持っていた。
蛇塚『うおおおおお!』
蛇塚の変化した姿を見た謎の男は、
(こちらの国の神か?しかも凄まじい力を感じる!)
『面白い!貴様の武を見せてみよぉー!』
蛇塚と謎の男はお互いの力量を感じ取り、渾身の一撃が激突した。
二人の激突は凄まじい衝撃波を起こし、二人を中心に辺りの木々を倒れる!
蛇塚「法子様!!」
蛇塚は咄嗟に倒れていた法子を抱き起こしながら、その衝撃波から守るように謎の男から距離を取る。
謎の男もまた、倒れていた少年を抱えていた。
蛇塚「何者か知らねぇが法子様に何をしやがった!?返答次第じゃ…」
男『返答次第で、どうすると言うのだ?この『国』の武神よ!』
蛇塚「当然、ぶっ倒す!」
男『ほざいたな?若造!面白い!少々、本当の戦って奴を教えてやろう!』
蛇塚「上等!」
が、その時だった。
二人の上空から神々しい光が照らし、その戦いを止めたのである。
男『ん?』
蛇塚「あれは…」
(卑弥呼様!)
空から舞い降りた卑弥呼は、二人の間に着地したのである。
そして、謎の男の前に近付いて行ったのだ…
蛇塚「卑弥呼様!お気をつけて下さい!」
すると卑弥呼は男の前に軽く跪き、頭を下げて言った。
卑弥呼「初めてお目にかかります。メソポタミアの最高神・エンリル様!」
エンリル「うむ。お主が修羅姫の娘殿か?母親譲りの大した力を感じるぞ?」
卑弥呼「いえ、私はまだ母上様には遠く及びませませんわ」
そこに、三千院も遅れてやって来たのである。
三千院「エンリル殿!私の父が世話になったと聞きます。遅ればせながら今は亡き父に代わり礼を申し上げます」
エンリル『お主は?』
三千院はエンリルに、自分と卑弥呼が今は亡き修羅姫と不動鷹仁の子供である事を話したのだ。
エンリル「そうか、修羅姫が亡くなった噂は聞いていたが、鷹仁も……。かつての戦友がいなくなるのは寂しいものだな」
蛇塚「…?メソポタミアの最高神??」
メソポタミア最高神・エンリルとは、かつて天使達との大戦の最中に助太刀をしてくれた神の転生者であった。
卑弥呼「ところでエンリル様、今宵はどうして日本に?」
するとエンリルは卑弥呼に自分達が日本に来た理由を説明し始めたのである。
それは、近々…
エンリルの故郷にて、神々の連合軍とカミシニ達との全面戦争が行われると言うのだ!
エンリルと同じく最高神であった天空神アヌと水神エアが、その命と引き換えにカミシニの副大将であった『不死のデッドマン』を封じた事により始まったと言うのだ!そのためエンリルは『力』ある強者に声をかけているのだ。
卑弥呼「そうでしたか…何やら世界中で不穏な空気を感じてはいましたが…」
蛇塚「世界中の神とカミシニとの戦争ですか?信じられねぇ話だが…」
エンリル「間違いなく現実に起きる話だ!そして、それは間もなく始まるのだ!その時はお主の力を借りたいと思うが良いかな?」
蛇塚「あぁ!任せろよ!」
卑弥呼「エンリル殿!暫しお待ち下さいませんか?」
エンリル「?」
卑弥呼「実は、その大戦の戦力になる戦士達が、別件にて出ているのです」
蛇塚「三蔵の奴もまだ戻って来てないですからね?」
エンリル「サンゾウ?」
三千院「ふっ…私達の切り札ですよ?」
エンリル「切り札とな?それは心強い!何者だ?」
三千院「恐らく、その正体を知ればエンリル殿も驚きますよ?」
エンリル「そうか?なら、出会ってからの楽しみにしよう!その時、俺達の切り札もそこで紹介しようか?」
三千院「エンリル神の切り札?」
卑弥呼「では、三蔵達が戻りしだい、我等も出向く準備を致します」
エンリル『解り申した。安心なさって下さい!まだ大戦は先!それまでに私はもう一人の戦友に挨拶に出向く予定なのでな?それから…』
するとエンリルが足元に隠れて見ていた少年を、自分の肩に乗せたのである。
卑弥呼「その少年は?」
エンリル『カミシニとの大戦に最も必要なキーパーソンになる少年だよ!』
三千院「キーパーソン?」
エンリル『ふふふ…』
エンリルが説明するには…
この少年の魂の中には、あの不死のデッドマンの力をその身に封じていると言うのだ。そのため、この少年には本来の神の力とカミシニの力を合わせもっているのである。
エンリル『だが、そのためにカミシニの力を完全に抑えこまねばなるまい。そのために『神転血』なる秘術を施さねばならないのだ!』
卑弥呼「神転血?確か、八百万の神の巫女様の秘術と聞いた事があります」
エンリル『そのために、その巫女・クシナダ姫の元に向かっていたのだ!が…』
蛇塚「…が?」
エンリル『道に迷い、居場所も解らずさ迷っていたら、この場所から強い力を感じてな?入ってみれば、かつて昔に修羅姫に呼ばれて来た場所だったと言う訳だ!あははは!やはり土地勘のない場所は危険だな…』
蛇塚(つまり、道に迷った訳だ…)
卑弥呼「解りましたわ!」
そう言うと、卑弥呼はエンリルを寺に招き入れ、占い水晶にてクシナダ姫の居場所を説明したのである。
エンリル『礼を言う!修羅姫の娘よ!』
エンリルは再び少年を肩に乗せて、去って行ったのだった。
総本山から離れ、旅だった二人…
エンリル『ん?どうした?』
エンリルが、肩に乗せた少年の身体が震えている事に気付いたのだ。
エンリル『お前、まさかまた未来を予知したのか?』
頷く少年に…
エンリル『そうか…だが、お前は強くあれ!強くならなくてはならないのだ!』
『何故なら…』
エンリル『ギルよ!お前はカミシニとの大戦の切り札!人でもあり、神でもある運命の子!』
『神を導く救世主・ギルガメシュなのだからな!』
だが、少年ギルの耳にはエンリルの言葉は入ってはいなかった。
少年はただ涙して、自分の予知が外れてしまう事を祈っていた…
いや、外れる事のない予知だとは解っていた…
だけど…
信じたくはなかった…
(自分を助けてくれた…あの少女が、間もなく死ぬなんて…)
次回予告
神を導く救世主・ギルガメシュ?
この少年は何者?
三蔵と卑弥呼の娘の法子の不思議な力は?
そして最後のギルが予知した法子の死は?
そんな時、三蔵は今・・・




