マザーのお歌?
三蔵に何かを告げようとしていたアリスが何者かに殺され、三蔵は犯人を突き止めようと動き出す。
俺は三蔵だ…
俺はアリスに呼ばれて、夜な夜なアリスの部屋に訪れたのだが…
そこで彼女は血だらけの状態で何者かによって殺されていたのだ。
俺は直ぐに集まって来た奴達を外に追いやり、一人部屋に残ったのである。
アリス…
俺は印を結び、この部屋に残っているアリスの残留思念を集めていた。
この部屋で何が起きたというのか?
一体、誰がアリスを?
俺はアリスの霊魂と対話しようと試みたのだった…
だが、別の力の影響で術が上手く出来なかったのである。
三蔵「きっと、この地にある結解のせいだな…」
そこで俺はアリスと最後に話した時に、スレ違い様耳元に囁いた言葉を思い出す。
アリス「…三蔵様…あの方には…気をつけてください…あの子達を…守っ…て…」
それが俺がアリスから聞いた最期の言葉…
あの方とは何者だ?
とにかく、この孤児院の中に…アリスを殺した奴がいるのは間違いない!
誰だ?
ここにいるのは九人のガキと、テレス、それにマザーと呼ばれる院長…
この部屋に刻まれた跡やアリスの致命傷になった傷は、人間有らざる者の仕業…
疑わしいのは…
化け物と化す子供達なのだが…
カミシニの力を多少なりとも持っているテレスにも可能と言えば可能だろう。
それに謎が多いマザーって女…
アリスが言い残した『あの方』と言う敬称からみて、一番怪しいのかもしれないな…
しかし、マザーならマザーと言うのではないか?
それはテレスやガキ達にも言える。
解らねぇな…
そもそも、俺はこう言った推理とかが苦手なんだよ…
仕方あるまい!
俺は一人一人に事情聴取する事にしたのである。
先ずはガキ達…
なのだが、ガキ達は俺の言葉に対して何も語らなかった。
そこで俺は部屋の外から耳を澄まし、中のガキ達の会話を聞いていたのだ。
「先生、死んじゃた…」
「きっと直ぐに会える…」
「だって、私達…もう直ぐに死んじゃうし…」
「そうだね…僕達長くないしね…」
「直ぐに会えるから寂しくないね…」
俺は何も言えなかった…
死を悟ったガキ達の会話…
こんなの…
ガキの会話じゃねぇ…
ガキが未来に希望を持たないでどうする?
俺はアリスとの約束を思い出す。
アリス安心しろ!ガキ達は俺が必ず守ってやるよ…
次に俺はテレスの部屋に行ったのである。
テレスは部屋の中で奮えて怯えていた。
テレス「殺される!私もアリスみたいに殺される!いや!いや!いや!」
テレスは恐怖で気を取り乱していた。
テレスは入って来た俺に気付くと、突然しがみつき、泣きながら俺に言った。
テレス「もう嫌!私、死にたくなんかない!」
そこで俺は、テレスの額に自分の癒しの気を押し付けたのである。
テレス「はっ!」
三蔵「少しは落ち着いたか?」
テレスは乱れていた服を着直し、俺に謝罪する。
テレス「気を取り乱して申し訳ございません…」
すると、
テレス「三蔵様にお聞かせしたい事があるのです…」
三蔵「聞かせたい事?」
テレスは一度目を逸らしながら、再び勇気を持って俺に話してくれたのである。
テレス「これはきっと…アリスが貴方に伝えたかった事だと思います…」
それは孤児院から少し離れた場所に隠された小屋があり、そこにマザーが一人で夜な夜な向かっては、そこから薬みたいのを持って来ては子供達に飲ませていると言うのだ。
その話が確かだと、マザーが何かをしているのは間違いないが…
薬とは何だ?
俺は早速、テレスに聞いた小屋に向かう事にした。
とにかく、一つでも手掛かりが欲しい…
俺は小屋を見付けると、そこには確かに何かを研究しているような形跡があった。そして、そこに並べられていた瓶を手にした時…
三蔵「これは!」
『錬魂の雫!』
錬魂の雫とは、人間をカミシニにする薬のはず?
それを、マザーはガキ達に投与していたと言うのか?
マザーとは一体?
俺は直ぐに孤児院に向かおうとした…
その時だった!
突如、俺のいる小屋に向かって雷撃が落ちて来たのである。
俺はなすすべなく、そ突然の雷撃に巻き込まれてしまったのだった。
その一部始終を見ていた何者かが立ち去る。
そして、何処からか聞こえて来るバイクの音?
一体、誰が??
その頃、孤児院では…
子供達が胸を抑えながら苦しみもがいていた。
「ふふふ…三蔵君だったかな?彼には私の実験には少し邪魔だからねぇ~!早々に消えてもらいました~」
それはテレスであった。
テレス「私がかつて放置していた実験体達だったが、ちょっと面白い事を思い出してねぇ~いやはや!本当、忘れてましたよ~!私の新しい実験に使える素材達だった事をね~!」
するとテレスの姿が見る見る姿が変わり始める?
その姿は白衣を着た中年の男の姿へと変わっていた?
その姿は間違いなく、中国遺跡にて俺と死闘を演じたクローリーの姿だったのだ。
「やはり、この姿の方がしっくり来ますねぇ~」
テレスはクローリーが化けた姿だったのである。
クローリー「さて、まだ邪魔をするのかね?君は?」
そこには一人、クローリーの前に立ち塞がる者がいた。そいつは掌に炎を燈し、剣へと変化させていく…
それは光明と呼ばれる少年だった。
光明「誰らか知らないけど、皆に何をした?返答しだいじゃお前を許さない!」
クローリー「はて?どうして君は動けるのかな?凄いね~?」
クローリーの言った通り、光明は胸を抑えながら苦しそうでいた…
だが、仲間達を…
この孤児院の兄弟達を守るために、光明は立ち上がったのだ。
クローリー「ほぉ~若いのに中々の精神力だね?君は?」
光明「黙れ!それより本当のテレス先生を何処にやったんだよ!」
すると…
クローリー「テレス君かい?テレス君は…」
『最初からいなかったのだよ?』
光明「それはどういう事だ?」
クローリー「実は、テレス君とは私の造ったマリオネットだったんですよ~!あらら~ビックリ玉手箱!私が留守の間も、私に代わり治癒薬と言って君達実験体達に投与を続けさせていたのですよ~!そう!実験はまだ続いていたのですね!」
光明「そ…そんな…」
クローリー「それをね、アリスちゃんが止めるもんだから~邪魔なんで殺しちゃったんだなぁ~!まぁ、彼女は別にいてもいなくてもどうでも良かったし、君達のお守りのために生かしていたお荷物さんでしたからね~」
光明「お前がアリス先生を殺したのか?許さない!」
光明が飛び出そうとした時、クローリーは苦しんで倒れている八人の子供達を指差す?
クローリー「君の相手はあっちですよ!」
光明が振り返ると…
倒れていた八人の子供達の姿が…
邪悪な形相の鬼神へと変わっていく?
光明「そんなぁ!?」
八人の子供達の姿が完全な鬼神と化した途端…
光明に向かって襲い掛かって来たのだ。
光明「うぅわあああ!」
『逃げなさい!』
そこに何者かが飛び出して来て、光明を抱き抱え救ったのだ?
それは…
光明「マ…マザー?」
飛び出して来たのは包帯姿のマザーであった。
マザー「光明君…大丈夫?」
光明「マザー…」
クローリー「あらあら?君も邪魔するんじゃないだろうね?」
マザー「………」
クローリー「いくら君でも、そう何度も甘やかしてあげないよ?」
マザー「結構です!私も、この子達にこれ以上危害を及ぼすようなら…」
『貴方を許しません!』
すると、マザーの周りに水泡が浮かび上がる。
そしてマザーの意のままに動く水弾と化してクローリーに向かって放たれたのだ!
クローリーはマザーの放った水弾で貫かれるが、平然としたクローリーの身体は見る見るうちに再生していく。逆にクローリーはマザーに向かって、己の流れた血で構成させた剣を投げつけたのである。
マザー「キャアアア!」
マザーはクローリーの剣で串刺しにされたのだ。
光明「マザーーー!」
「…大丈夫」
マザーは自分の身体に串刺しになった剣を抜くと、地面に投げ捨てる。
光明「マザー…貴女は?」
そこに鬼神と化したガキ達が再び襲い掛かる。
マザー「みんな…」
すると、マザーは立ち上がり、襲い掛かって来た八体の鬼神に向かって歌い始めたのだ…
その歌は透き通るように…
この一帯に響き渡る?
それは耳からでなく、直接魂に語りかけるような…
『鎮魂歌』
その歌を聴いた鬼神達は動きを止めていく…
(マザーの歌だ…)
(マザーのお歌が聞こえる…)
(マザー……)
その歌声は、鬼神と化した子供達の魂へと響き…
次第に大人しくなって、元の子供達の姿へと戻っていったのだ。
クローリーはその様子を見て驚く事なく、
クローリー「流石に元カミシニ七賢者の一人の事はありますね~
しかし、元は元ですよ?私を邪魔して、ただで済むと思わないでくださいね?」
『八百比丘尼さん!』
マザー「例え貴方を道連れにしてでも、子供達は私が守ります!」
三蔵「八百比丘尼?あの伝説の不死の女か?
マザーの正体がその八百比丘尼?
それに俺の安否は??
一体、どうなるんだよ?」




