卑弥呼の見る夢?
三蔵が救世主として己を見つめていた時、
卑弥呼は?
…これは夢?
これは確か…まだ母上がいらした時の記憶…
私は卑弥呼…
私は今、夢の中で過去の出来事を見ているみたいです。
あれは、確か…
母上…先代の卑弥呼であられ、通称…修羅姫と呼ばれた過去最強の卑弥呼。
私は母上を尊敬致しておりました。
そんな母上が私と空海を連れて、ある孤島へと向かった時の話です。
そこは、蛇神島と呼ばれる閉ざされし孤島。
蛇神島は強力な結解の中にあり、濃い霧の中に存在していました。
修羅姫「ふぅ…無関係な一般市民からは、このような島があるとは思いもよらないだろうな」
母上は西暦2000年に起きた聖戦での怪我が原因で、視力を失い身体も自由には動かず、空海の押す車椅子で移動していました。
空海「修羅姫様?この島で一体何が?異様な力を感じたらしいのですが、修羅姫様までも出向く必要がお有りだったのでしょうか?」
修羅姫「有り有りだよ!」
母上は封印解除の印を結ぶように私に指示をすると、私は島に向けて印を結んだのでした。
次第に島に施された結解が消え、霧が晴れてくる。
この蛇神島には何者が張ったかまでは解らないのですが、強力な封印が施されていたのです。
修羅姫「この封印のお陰で我も気付かなかったわ…」
『天使の落とした水晶がこの地にもあったなんてな!』
空海「何と!では!?」
修羅姫「あぁ!世界に現れた十二の次元の穴はこの蛇神島にもあったのだよ!十三番目の開かれたままの穴がな!」
空海「それは一大事ですよ!では、早急に手を打たなければなりません!」
修羅姫「そのために我達が出向いたのだよ!」
空海「私達だけで大丈夫なのでしょうか?」
修羅姫「多分な…不思議な事に天使達の動きは今だに感じられないようだし、恐らくこの結解に落ちた事で天使達にも何らかの問題が生じたのだろう?」
空海「しかし…」
修羅姫「そう心配するなよ?お前や我!それに現在最強の座主である娘がいるだろ?あいつは強いぞ?この修羅姫の全てを継いでいるのだからな!」
卑弥呼「私はまだ未熟です…母上…」
修羅姫「安心しな!お前は自分の力を信じよ!」
卑弥呼「はぃ」
確かに私は母上により厳しい修業を受け、ありとあらゆる術を修得したものの…
11歳の私には実戦経験が不足していたのです。
私達が蛇神島に上陸すると、そこでは既に事件が起きていたのでした。
修羅姫「強力な力を幾つも感じる?一つ…二つ…いや?更に違う異神の存在まで?」
卑弥呼「一体、何が起きているのでしょう?」
その時、私達の前に見上げる程の巨大な大蛇が口を広げて立ち上がり、襲って来たのです。
空海「なっ!蛇神か!?」
大蛇は私達に飛び掛かって来た所で、光の霊圧により消滅したのでした。
修羅姫「ふん!」
それは母上の強力な霊気によってでした。
例え動かぬ身体でも、その力は健在だったのです。
しかし、別の大蛇達が血の匂いと私達の匂いを嗅ぎ付け集まって来たのでした。
卑弥呼「母上!後は私にお任せください?」
私は難無く向かってくる大蛇達を、霊気の波動によって撃退したのでした。
空海「卑弥呼様…」
(さすがに血は争えませんなぁ…)
私達はその後、蛇神島の奥へと向かって行く。
蛇神島には蛇塚一族と呼ばれる人間達が、この島にて暮らしていたのですが村は荒れに荒れていました。
炎が建物を燃やし、村人達の死体が幾つも?
一体、何が起きて?
その時、私達に向かって生存者らしき男性が逃げて来たのです。
男性は息を切らして私達の前にひざまずくと、私達に島に起きた事を説明したのです。
男「突然、島に大蛇が現れて、島を!島を!」
…その時、私は気付いたのでした。
男性の掌が白く輝きながら霊気のナイフへと変わり、私の顔目掛けて突き出して来たのを!
空海「卑弥呼様!」
叫ぶ空海を私は制し、そのナイフを躱したのでした。
卑弥呼「何をなさるのですか?異界の神よ!」
すると男は自分の正体を見透かされ驚きながらも、私達の目の前でその姿を現したのです。
『いやぁ~全てお見通しとは驚いた~!アハハ!こんな異島にまで足を運ぶ人間がどんな者か試してはみたが、なかなかの腕前のようだよ?お嬢ちゃん!』
男の髪は白髪へと変わっていき、その透けるような白い肌と美しい容貌が私達を魅了させたのです。
私達は警戒しつつ、いつでも攻撃に転じられるように戦闘体勢を取る。
その者は…
『待てよ!俺に構ってる暇はないぜ?直ぐにこの島は崩壊する!あの面倒な翼を持つ神によってな!だから、逃げるなら今のうちだぜ?』
…翼を持つ神?
卑弥呼「それは天使の事ですか?私達はその天使を討伐に来たのです!」
すると、その謎の神は透けるように私達の前から消えていき、最後に私達に言葉を残したのでした。
『あれは羽付きの天使神なんかじゃない…この島にはもっと…もっと!ふふふ…興味あるなら、その命と引き換えに見て来ると良いぜ?奴は島の中央にある蛇神の丘の地下にいるからよ!アハハハハハ!』
蛇神の丘の地下?
後に、この異神が『ロキ』と呼ばれる悪神と知る事になるのでした。
私達はロキに言われた通り、その丘に向かう事にしました。
空海「何て凄まじく濃い力の神圧だ!息をするのも辛い!」
卑弥呼「一体、何が現れるのでしょうか?母上!」
母上は唾を飲み込み…
修羅姫「…お前は会っているよ…この神圧の持ち主にな…あの聖戦に…」
えっ?私が会っている?
修羅姫「と、言っても…あの時は無意識だっただろうがな?我々はその主を必ず封じ、その力を手にいれる!」
それって、まさか?
次元の穴が開きし時、天使達と別に現れし者達…
その者達は私の魔眼の力を借り、何処からともなく天使達とは違う時限の穴より現れ、聖戦では私達の味方をしてくれた。
この地に現れし謎の神圧の持ち主は、まさか!?
私達は急ぎ足で丘に向かうと、突如地面が揺れ始めたのです。
空海「地震ですか?」
修羅姫「いや!地面から何かが抜け出して来るぞ!」
すると、地面が盛り上がり、そこから強烈な光が空高くに舞い上がったのです。
神々しい光が空を覆い、それは私達の前に巨大な翼を羽ばたかせ立ち塞がったのでした。
それはエメラルドグリーンの光の中から現れし怪鳥…
卑弥呼「あれは母上…まさか?」
修羅姫「そうだよ!あの聖戦の時に現れる事なく消えた最後の光の神…」
『孔雀明王!』
空海「孔雀明王とは、あの最古の明王と呼ばれる最強の神ですか?それでは私達の味方では?」
修羅姫「味方か…だが、何やら雲行きが怪しいぞ?」
その時…再び大地が揺れ動き、地面が崩れ落ちた闇の中から、新たな別の魔神が抜け出して来たのです。
それは巨大なる影!
人間の女の顔に、蛇の下半身を持つ蛇神…
蛇神は孔雀明王を追うように向かって行く!
どうやら二神は交戦中のようでした。
孔雀明王の翼から放たれたエメラルドグリーンの光線が、巨大な姿をした蛇神を貫いていく…
蛇神は身体から黒い血を流し、そのまま大地に平伏して光熱に熔けながら、再び闇の穴に落下していったのでした。
空海「何て圧倒的なる力なのだ!」
が、その時…
空海「えっ?」
修羅姫「空海!躱すのです!」
孔雀明王から放たれた光線は蛇神だけでなく、私達にも向けられていたのです。
私と母上は防御壁が間に合ったのですが、空海は間に合わずにその腕を貫き消し去られたのでした。
空海「うがぁああああ!」
直ぐに私は空海に治癒の術で痛みを止める。
空海「卑弥呼様…面目ありませぬ…」
空海は止血のために失った腕に布をきつく巻く…
卑弥呼「空海は母上を連れて退きなさい!ここは私が食い止めます!」
空海「申し訳ありませぬ!さぁ、修羅姫様!」
空海は母上の車椅子を残された腕で押し、その場から離れていく…
修羅姫「油断はならんぞ?卑弥呼よ!」
私は頷くと、空中にて私達を見下ろしていた孔雀明王を睨みつけたのでした。
あれが明王!
しかし、何故に私達に対して敵意を抱くのでしょうか?
すると、孔雀明王は私の脳に直接語りかけて来たのです。
『お前は運命の魂を持つ選ばれし人間か?』
これはテレパシー?
私は孔雀明王に向かって念を送り返す…
卑弥呼『孔雀明王!貴方の目的は何ですか?』
すると、孔雀明王は言ったのです。
『私の目的は世界中に散った明王達を消し去った後、この偽りなる世界を再び消し去る事!』
偽りなる世界を消し去る?
意味が解りません…
ですが、私がそれを絶対に許す訳にはいきません!
未来にて廻り出会うあの方のためにも!!
次回予告
三蔵「まさか、卑弥呼の夢からの過去編になるとは?先の展開が読めないな?」
卑弥呼≪安心してください?ちゃんと・・・≫
三蔵「ちゃんと?」
卑弥呼≪伏線になっているのですよ?≫
三蔵「マジか??」
卑弥呼≪今回の話と次の話の前後編が序章にもなっているのですよ?≫
三蔵「今後も目が離せないな・・・」




