三千院の追憶!
三千院と大徳の出会い
そして三千院は一人思う。
私は三千院一真…
ご存知の通り天才だ。
私は幼い頃よりずば抜けた才能に恵まれ、天に選ばれし特別な人間だと思っていた。
私は三千院寺の跡取りとして恥じぬ器になる事が、私を育ててくれた養父母への恩返しだと考えていた。
まだ十代の前半、寺に始めてパソコンが入る。
私は興味本位で触ってみたが、思った以上にはまってしまい、世の中の情勢や株の動きを学んでいく。他にも企業や海外への投資、留学をも繰り返して世界へのパイプをも手に入れていた。匿名で・・・
気付くと、三千院寺は世界トップクラスの寺へと成り上がっていく。
お陰で表家業でも別に三千院財団をも立ち上げてしまったのは言うまでもない。
それが確か13歳くらいだったか?
あんまり記憶にないのは多分、一時凌ぎの娯楽だったからだろう。
流石に表舞台で私のような天才が公に出るのは裏の世界に生きる者としてはまずいので、あくまでも裏から当たり障りなく干渉していた。
いつも冷静に、感情を表に出さずに難無く事を熟していく…
まさに天才のなせる業であった。
そんな私にも感情を抑え切れね出来事が起きた。
養父の不治の病…
養父には、返しても返しきれぬ恩がある…
養父母は多分、私が養子である事を知っていた事は知らぬであろう。
私もそう接してきたし、養父母も実の子供のように私を愛してくれていたから…
正直、実の父母については感心はなかった。
いや、一度調べた事があったのだが、私のネットワークを駆使しても捕まらないトップシークレットになっていたのである。
無理に調べる必要もないし、それ以後、私は気にもしなかった。
そんな私のもとに、養父の古い知人である男がやって来たのである。
その男の名前は不動鷹仁…
裏世界でもトップクラスの退魔師であるらしく、不動寺院の長でもあった。私も裏世界に生きる宿命にあるがために、この男から退魔の術を学ばんと師に迎えたのだ。
それに…
私には間もなく明王召喚の儀式が迫っていたから…
明王召喚が成されて、始めて三千院家は裏世界の頂点に認められるそうだ。
それが、養父の念願でもある事は私も知っていた。
だが、その儀式は人間がたやすく手にしてはならぬ禁断の儀式であり、命の危険も有り得るのである。
そこで私は不動鷹仁の下で、その儀式に必要足る力を手に入れるがために修業を開始したのだが…
正直、私が想像する以上に退魔の行は面白い…いや、興味ある修業であった。
好奇心に勝る相乗効果はないと思えるくらい、私は見る見る不動鷹仁の与える修業を熟し、修得していく…
話は少し戻すが、この不動鷹仁と呼ばれる男についてもう少し語ろう。
この男の第一印象は、無感情かつ無関心…
何を考えているか解らない男…
それが、この男への第一印象だった。
修業の話以外、何も話さずに、必要最低限の言葉を口にするだけ…
正直、私も人付き合いが得意とは言えなかったから構わなかった。
だが、この男から感じられる『何か』には違和感をも感じていたのも確か…
それが何だったのかは、後に知る事になるのだが…
その後、私は明王との儀式に成功する。
それも師である不動鷹仁が私を身を呈して守り、二度と戦えぬ身体になると言う犠牲の上に勝ち得た力…
私は、この時…
この不動鷹仁に対して、本当の意味で敬意と感謝を感じたのである。
それから間もなく不動鷹仁殿の指示に従い、役行者【小角】の下に世話になる。
役行者には大徳と言う弟子がいたが、この男もまた私と同じく明王を背負いし者なのだそうだ…
歳は私より上だが、腕は未熟。しかし伸ばせば出来る奴だと思い、私はなるべく優しく手本やアドバイスをしてやったものだ。
お陰で今では私の背中を任せるくらいにまで成長し、逞しくなってくれた。
嬉しい限りだ…
その後、私は立派に三千院頭主として任についた。
そんな矢先、小角殿が久しぶりに現れ、大徳と共に連れて行かれた場所が密法裏世界の総本山だった。
そこで私は、この日本…
いや、世界の中心に立つ座主との面会を認められたのである。
座主とは、それこそトップシークレットクラスの人物で、面会を許されているのは現在小角殿と空海殿のみであったと言う。※かつては不動鷹仁師匠も在籍していた事は後で知った。
流石天才の私でも、その人物が若い娘とは思わなかったが…
だが、その座主…
名を卑弥呼と言うのだが、私は彼女を目にした時に感じたのである。
(この方を護る事が、私の使命…)
それから私と大徳は座主様(卑弥呼)を筆頭に、世界の秩序を護るための戦いの日々が始まったのだ。
後に、まさか座主[卑弥呼]様が私の妹だったとは正直驚いたが…
更に月日は流れ、不動鷹仁師匠が明王の儀式の際に亡くなられた事を知る。
私はその日ばかりは、荒れに荒れていた…
私を庇い、傷を負わなければ…もしや?
と、自分自身を責めた。
しかも、不動鷹仁殿が求めたはずの明王を手にしたのが、まだ未熟窮まりない小角殿の弟子だと?
その晩、私の枕元に…
不動鷹仁師匠が立った。
師匠は眠っていた私に起きるように告げると、私は無言で起き上がる。
私はその場に座して面と向かったのだ。
私達は無言だった…その沈黙を破ったのは師匠だった。
師匠は私に告げる。
不動鷹仁『お前に二つ託すべきモノがある…』
二つ?
すると師匠は印を結び、私に向かって紅い光を放ったのである。
それは私の眼を捕えた…
強烈な熱が、私の眼の中に入って来た感覚だった。
私を両目を抑え…
三千院「痛ッ…何を?」
すると師匠は厳しい口調で言ったのである。
不動鷹仁『お前がこれから歩む道には必要な力だ!その力をお前に託そう!』
気付くと、私の眼は紅く光り輝いていたのだ?
それはまさしく不動鷹仁師匠の力の象徴…
『魔眼・鷹の眼』であった。
三千院「この眼は?」
不動鷹仁『私の魔眼は一子相伝の能力であるがため、直接お前に譲り渡しに来たのだ…』
三千院「一子相伝?」
不動鷹仁『ほんの些細な力であろうが、僅かでもお前の力になれば本望だ…』
それが私に託された力…
私には勿体ない力だった…
だが、私に託されたもう一つのモノとは?
それ以上に重いモノだったのである。
師匠は言った。
『私達が一度は守った…この星の未来を…お前に託す…』と…
私は静かに師匠に向かい頭を下げたのだった。
再び頭を上げた時、私の前に不動鷹仁師匠は消えていた。
夢?幻?
いや、確かに私の眼には今、師匠の魔眼の力を感じる。
託されたのだ…
魔眼と、この星の未来を…
そして、魔眼はもう一つの真実を私に伝えた。
魔眼が師匠と共に見て来た記憶…
不動鷹仁師匠が戦いに明け暮れながら生きて来た人生を…
西暦2000年の神との大戦までも、まるで己が見て来たかのように私の中に入って来た。
そして、不動鷹仁師匠こそ私の血の繋がった父親だった事を…
私は呼吸を整えた後、己の心(魂)に誓った。
父親の意志(魂)は、私が必ず引き継いで見せると!
それが、私の生きる意味だと悟ったのだった。
次回予告
三蔵「さて!次の話は久しぶりに俺が主役だ!」
蛇塚「待て!三蔵!ちょっと待ったあああああ!」
三蔵「何だよ?何か問題でも?」
蛇塚「次話は、あの例の話だぞ?」
三蔵「例って?はっ!あの話かぁああ??」
三蔵『無し無し!やっぱり無し!!
次の話は読まなくて良いぞ?むしろ読むな!!
そうだ!一話飛ばして読んでくれよな?』
蛇塚「大丈夫だろうか・・・」




