底が知れない?
新たにアータル神を仲間に加えた総本山は、
今日も変わらない日常だった?
俺は三蔵だ…
まぁ、なんだかんだでこの生活も慣れて来た訳だが、それもこれも仲間達が俺を支えてくれてるから…
だが、俺はコイツ達について新たに発見した事が多々ある。
先ずは蛇塚…
(本名…蛇塚軍斗)
コイツとは何かとつるむ事が多いし、割と話が合うんだよなぁ~
歳は俺より二つ上らしい…
(ちなみに卑弥呼と同い年だと…)
で、コイツ…
妹が空海と一緒になってから、挙動不審なんだ。
空海と妹さん…
確か詩織さんだったかな?
空海とは歳が20くらい離れているらしいのだが、妹さんの方からの猛アタックしたらしい。
俺からみたら笑い話なのだが、蛇塚にとっては世界がひっくり返る程の重大事件なのだ…
まぁ、蛇塚にとって空海とは師弟関係…
自分の師匠に妹を奪われたようなもんだし、妹さんが惚れ込んでいるため怒るに怒れない…
シスコン蛇塚には現実逃避しなきゃ、やってらんないよな?
蛇塚「はぁ~~」
と、溜息ばかりつく蛇塚に、更に追い打ちをかけるかのように新たな告知が伝えられた。
『オメデタ!』
それを聞いた直後の蛇塚の顔は、今でも忘れられない…
そう…
まさに、リアルムンクの叫びだった。
まぁ、後は時が解決してくれるだろう。
次に大徳!
(本名は大徳力也)
コイツは主に、俺や蛇塚に武術や法術の稽古をしてくれるのだ。
この男、鬼のように強い!
本人曰く、小角には敵わないと言っているが、いやいや!謙遜すんなって話だ!
じゃなきゃ、いつになっても俺の小角越えが出来ねぇじゃねぇかよ~
さて、大徳は俺より七ツ上だったかな?
大徳は昔自分自身に枷た誓いで酒は一切飲まない…
俺もイキサツを知ってるだけに、無理に飲めとは言わないが…
だが、しかい!この男…
酒の匂いだけで酒乱化するのだ!
暴れだした大徳を俺と蛇塚が止めようとしたが、その結果俺達は全治二ヶ月…
絶対にコイツの近くでは酒を飲まないと誓った。
次にバサラ…
バサラか…
コイツは謎だらけだ…
中国遺跡の戦いの件で、過去のイキサツは聞いたが…
(かつて『白い妖精』と呼ばれる暗殺専門の部隊の生き残りで、ナンバー6と呼ばれていた。実は妖精の力を手に入れた最初の少年であるゼロでもあった。)
そういう事だけあって、物理的な格闘なら、俺達の中では一番の実力者だ…
が、しかし…
この件で、俺の中で疑問が残るのだが…
コイツは幾つなんだ?
本人に聞いても、『気にするな!』と流されてしまうし…
マジに気になる!
が、多分…答えは解らないままだろう。
で、本題に入ろうか?
俺が一番解らない奴…
それが、三千院だ!
三千院一真…
卑弥呼の兄であって、俺の義兄となる訳だが…
この男…不可思議である。
解っている事は、自称天才らしい…
いや?実際天才的に強い事は認める。
俺や蛇塚はもちろん、大徳やバサラですら勝てないのだから…
流石に話に聞いた卑弥呼の母親の修羅姫の実子なだけはある。
いや、そんな事はどうでもよいか?
それは先日の話…
俺は三千院から驚くべき台詞を耳にしたのだ。
三千院「ん?私には妻がいるぞ?」
と…
この男は妻子持ちだったのかぁ!?
しかも、俺達が中国遺跡に行く前に子供が産まれたとか…
三千院「アハハ!だから絶対に生きて帰ると誓って来たのだよ!アンナにな?」
アンナ?
…ハテ?
すると三千院が奥さんの写真を見せてくれたのだ。
そこに写っていたのは?
『欧米かぁー!!』
そこに写っていたのは金髪のフランス美人だった。
『OH!フランス!』
あっ…失礼…
マジかよ?
三千院「いつか私の息子を紹介しなくてはな?」
いやいや…
そういう問題じゃ…
そういう事は早く言わないとな?俺がビックリしちゃうからさ…
と、肝心な話を後回しにする男…三千院…
てか、この裏世界に生きる三千院が、どうやってフランス女と知り合ったんだ??疑問が残る…
これも天才のなせる業なのか?
天才で全て片付けるつもりなのか?
いやいや!この男については、もう少し掘り下げなければならないな…
実は数ヶ月前…
久しぶりに俺達の前に晴明が現れたのである。
安倍晴明…
俺の幼なじみであり、天才的な陰陽師でもある晴明は中国遺跡の戦いの後、一人精密検査を受けていた。
と、言うのも…
一度は鬼に喰われ、晴明本人が百鬼夜行と呼ばれる鬼神になっていたのだから…
その後、俺の無意識に使った術[転生変化]により、元の人間に戻ったのである。
本人曰く、かつて妲己と呼ばれる九尾の狐の妖怪の魂と同化したようで、今は半人半妖なのだとも言う。
俺にはサッパリと解らない話なので、この話は省こう…うん。
で、その晴明が来訪しに来た理由と言えば?
三蔵「晴明!久しぶりじゃないか!」
晴明は俺に目もくれずに先に向かって行く?
って、オイ!
三蔵「晴明!無視すんじゃねぇよ!」
晴明「悪い…お前には後で礼を言うつもりだったが、今は別件があるのだ!」
別件?
晴明が真剣な眼差しで向かった先とは?
三千院の所であった。
晴明は三千院を見付けるなり、叫んだのだ!
晴明「三千院さん!約束通り私と勝負してください!」
はっ?勝負?
一体全体、何事だよ!?
その質問には、毎度毎度何でも知っている大徳が教えてくれた。
話を聞くと…
晴明が中国遺跡へと出向く前に、俺と同じく『金の錫杖』の修業をしていたのだ。
当然、晴明もその修業をクリアーした後、三千院に向かって言った。
晴明「予てより貴方の事は裏世界で有名になっておりました…」
三千院「ん?天才だとか?天才なのは心得ている!」
晴明「…………」
晴明は三千院の冗談とも言えぬ台詞に、一端呆気に取られたが…
晴明「ええ…かつてない天才がこの総本山にいらっしゃると!しかし、天才とはどれくらいのものなのでしょうね?」
それは晴明なりの褒め言葉…
じゃ…ないな?
挑発だろう…やっぱし?
晴明「もし宜しければ私に御指南していただけませんか?」
三千院「アハハ!晴明!お前も天才だと聞いているぞ?良かろう!天才同士!腕試しをしようじゃないか!」
晴明の思惑に応えるかのように三千院は相手をした。
その戦いは呆気ない決着だったと言う。
晴明の圧倒的な負け…
晴明「三千院さん!中国遺跡から帰還した後、再び私の相手をしてください!」
三千院「良かろう!精進せよ?晴明!」
と、言う訳で…
晴明のリターンマッチと言う訳か…
晴明は道場に案内され、そこには三千院と蛇塚が待っていた。
晴明「三千院さん!あの日の借りを返しに来ました」
三千院「楽しみにしているぞ?晴明!」
解る…
晴明から伝わる力の波動がビンビンと!!
あいつ…
中国遺跡から帰還した後も一人修業を重ねていた。
奴の背中越しから、ビンビンと伝わってくるぜ!
それに比べ、三千院はいつも通り…
こりゃ~!
晴明がやってくれるかもしれない?
そして天才と天才の戦いの幕が、切って落とされたのだ。
その戦いに、俺は口を開けたまま動けないでいた…
まさか?
僅か十分で、晴明が道場に倒れているなんて…
圧倒的だった。
晴明の巧みな術の切り返しの連続を、全て先に先に先手を打ち術を返していく三千院…
次第に打つ手を無くしていく晴明は、気付くと逃げ場を無くしていた。
三千院は晴明を追い詰めるように、逃げ場を塞ぎ…
とうとう王手をかけたのだった。
圧倒的な惨敗に晴明も唖然としていたが、その後…大笑いしていた?
晴明「まだまだ私は未熟だったようですね?三千院さん!お相手ありがとうございます!しかし、いずれ貴方を倒せるようになりますからね?」
三千院「いやいや!流石に晴明殿!私の追い詰めから、何度と瞬時に逃げ道を見極め攻撃に転ずる流れは評価に値する!」
そう言って二人は握手をしたのだ。
ふぅ~
俺の見せ場がないまま…
そんな一日が終わったのであった。
それにしても…
三千院…底が知れない。
次回予告
三蔵「考えてみれば、三千院も卑弥呼も少しズレているよな~
母親に似たのか?父親に似たのか?
母親だろうな~
では、次の話は遺伝子負けした男の回想だぜ!」




