生き残った意味?そして時は世界は動き出した・・・
修羅姫はミカエルにより魔眼を潰される寸前、娘に、その魔眼の能力の全てを送り飛ばしていた。
俺は鷹仁…
俺の目の前では、世界の命運をかけた戦いが繰り広げられていた…
天使の大群を連れたミカエル率いる四大天使と、突如光の中から現れた明王!
そんな中、俺は全身大火傷で立っているのもやっとの状態…
そして、今まで天使達と死闘を繰り広げていた修羅姫は、瞳[魔眼]を潰され、全身の骨が砕け、両手両足もおしゃかになっていたのである。
だが、そんな状況下でも修羅姫は、ミカエルにより魔眼を潰される寸前、遠く離れた日本にいる俺と修羅姫との間に産まれた娘に、その魔眼の能力の全てを送り飛ばしていたのだ。
修羅姫「全く…情けない…憐れだよな…我も…
一度は己の手で殺そうとした我が娘に、我の力を明け渡す事になるなんて…
この世界の救世主として産まれた事…
星[地球]の巫女として、その力[魔眼]を手にした我…
それは、我にとって生きる意味だった。
己の存在理由であった…
だが、娘が産まれた事で、その全てを引き継がすと解った時に、我は…我の存在理由が解らなくなった…
怖くなったのじゃ…
それは…
母が!祖母が!
長く続きし卑弥呼一族の全ての女がしてきた事…
宿命…
後に続く子孫にその力を繋げるだけの定め…
解っている事だった。
だが…
嫌じゃあ…
我はそんな決められた歯車の一部となる人生は嫌なんじゃ…
だから、我は『卑弥呼』の名で呼ばれるのが嫌じゃった。いつの頃か、我を『修羅姫』などと呼ぶ者達が現れ、我も気に入り、その名を呼ばせていた…
我は我なんだよ!
我は長く続いた卑弥呼一族の中でも、ずば抜けた力と美貌を兼ね備えて産まれて来た。
我は特別だと思った…
我こそ救世主に間違いないないと…
卑弥呼一族の歴史に終止符を付けるのは、我しかおらぬと!
世界の救世主になるために我は存在していると!
だが、そんな自信が不安へと変わったのだ…
我に娘が産まれた…
『娘に全てを奪われる?』
一度はそのジレンマから娘に嫉妬し、怒りを!殺意をも感じた…
この我の娘が、新たな救世主になると言う事なのか?
嫌だ!嫌だ!嫌だ!
それは、我の存在が母上達の運命と同じく、歴史の中の歯車の一部だったと証明してしまう事なのだぞ?
ならば、我は娘を殺してでも、我の存在理由を奪い返してやる!
そう思った…
だが、娘には我と同じような魔眼がなかったのだ…
アハハ…
つまり、それは…
娘には力が必要ないと言う事か?
我が救世主として証明された事なのだ!
そう思ったのに!
くそぉ!今になって…
解ったよ…
この世界の命運をかけた戦いに、娘はまだ若すぎた…
戦う力が養うには早過ぎたって訳か?
だから…
我に力が残ったまま、我が救世主代理として星[地球]に選ばれたのだよな?
仮初めの救世主としてな…
だが、結局はその力も娘に明け渡す事になった…
全く、道化だよ…
我の人生は…
だがな?道化だろうと、仮初めの救世主であろうと…
我にも意地があるんだよ!
我を信じて死んでいった馬鹿者達…
未来を託していった奴達が、我の背中を押すのだよ…
『この地球を頼むと…』
だから、我は…
まだ、戦わなきゃいけないんだよぉーー!」
俺は修羅姫の歎きを黙って聞いていた。
修羅姫…
お前って奴は…
俺は満身創痍の状態で自分自身の弱みを、本音を語る修羅姫に熱くなるものを感じた。
……俺は?
俺は一体何のために存在しているのだ?
この戦いで死んでいった数多くの戦士達の中…
俺は、まだ生き残っている。
何故だ?
こんな無力な俺が生きていて、意味があるのか?
そんな中、空中ではミカエル達天使達と、現れた明王達が死闘を繰り広げていた。
不動明王『ミカエルよ!この世界の命運をかける戦いに、我達と共に傷付きながらも戦ったお前が!何故世界を滅ぼそうとするのだ!』
不動明王とミカエルの剣がぶつかり合いながら、お互いは言葉を交わしていた。
ミカエル『何を言っている?異界の神を名乗る者よ!私は貴様を知らぬ!共に戦った事などあるものかぁ!私の心を乱す心理戦なら無駄だぞ?』
不動明王『お前が忘れていようが、その魂は忘れてはいないはずだ!ミカエル!』
この神々の間に何があったのか、人間の俺には到底解る事はないだろう…
解るはずがない…
だが、一つだけ解った事があった。
俺の目の前で、動かない身体を引きずり…
眼を潰されながらも、その闘志は消えてない修羅姫…
修羅姫「…鷹仁よ?まだ、そこにいるか?」
鷹仁「あぁ…」
修羅姫「今、お前に我がこの戦いに終止符をつける所を見せてやるよ!」
鷹仁「?」
すると修羅姫の口から、天使達の不死の秘密が明かされたのである。
修羅姫「あの天使達は全て虚像…偽りの天使達だ!
いや、戦ってみた感触からしてコピーみたいなものか?
あの天使達はいくら倒しても蘇り、再生していく…
不思議とは思わないか?
いくら神とて、そんな芸当されては反則だろう?
我は考えてみた…
何か別の力が作用しているのではないかと?
そして、ムカつく事に奴達に眼をつぶされて、初めて気付いたのだ…
いや?五感を失い魂が感じたと言った方が良いな?
天使達の魂が、全て同じ一点に繋がっている事に…」
修羅姫は見えないはずの目で見ていた方向?
そこに、あったのは?
巨大水晶!
次元の穴が開いた時に降って来た巨大水晶?
巨大水晶から発する不思議な力で天使達は無限に再生され、複製された肉体で戦っていたのである。
修羅姫「恐らく天使達本体は、この世界に入っては来れない理由があるのだろうな?そして複製体に戦わせて、本体は何処かで高見の見物って訳か?
全く、ふざけた連中だよ!
だが、それも終わりにしてやるよ!天使よ!」
修羅姫は残された力を振り絞っていた。
修羅姫「微かだが、我の魂の中には魔眼の力が僅かに残っているみたいだ…その力を使い、世界中に散らばている12ヶ所の水晶全てを破壊する!」
(まるで人の運命を知る超越した何者かによって、計算されていたかのようだ…)
修羅姫『これが、救世主として生きてきた我の最後の仕事だよ!!』
修羅姫は世界中に散らばった水晶の力を感じ、狙いを定めていた…
が、修羅姫の感知能力は既に限界を超えていたのだ。
(狙いが…定まらない…
水晶を壊すだけの力を保ったままだと、狙いに集中力が欠けてしまう…
一か八か?いや!絶対に外す訳にはいかな…ぃ……『!!』)
解ったよ…
何もかもが…
確かに怖いくらいに決められた運命かのようだ…
俺のような力ない男が…
このような戦場に立ち…
俺のような男が…
知らず知らずに、こんなスゲェ女と同じ道を歩いていた…
それもこれも、全てはこの日の…
この『時』の…
この『瞬間』のためだったのだと…
俺は動かない修羅姫の身体を自分の身体に引き寄せて、俺の前に座らせる。
修羅姫「おぃ?おぃ?マジに欲情したのか?おぃ?マジに?」
頬を赤らめる修羅姫の壊れた腕を支え、両手を握って俺は言った。
鷹仁「修羅姫!お前は攻撃にのみ集中しろ!」
修羅姫「鷹仁?何をするつもりだ?」
俺は己の魂を修羅姫と同化させていく…
まるで、自分の身体と修羅姫の身体が一つになったような感覚になった。
修羅姫の奴も、俺のやる事に気付いたみたいで集中し始める。
お前の腕が動かなくとも、俺にはお前の腕を支える腕がある…
お前の眼が見えないのなら、俺がお前の眼となろう…
俺には!
そのための『眼』があるのだから!
『魔眼・鷹の眼!』
そうさ!俺が存在する理由は、全てはこの一発をお前と打ち噛ますためだったのだからな!!
俺は修羅姫と魂を同調させながら、世界中に広がる水晶を魔眼で見る。
世界中で仲間達が戦っていた…
今、終わらせてやるぞ!
そして全ての水晶に狙いが定まった時!
俺と修羅姫は同時に叫んだのだ…
『今だあーー!!』
その力は放たれた。
俺と修羅姫から放たれた光は空高く飛んだ後、12ヶ所へと飛散していく…
それは世界中に散らばっていた水晶に直撃し、消滅させたのだった。
ミカエル『クウッ!何者かが水晶を!?』
同時に天使達が出て来た空中に浮かぶ次元の穴も消えていき、天使達も次元の穴に吸い込まれるかのように消えていった。
終わった…
そして、時がゆっくりと動き出す…
何も知らない人間達が、いつもの日常を過ごし新たな世紀を迎える中…
西暦2000年に起きたこの聖戦に幕が閉じたのだった。
次回予告
三蔵「こんな事があったなんて・・・」
三千院「だが、この戦いの後にも・・・」
三蔵「何が?」
三千院「それは・・・」
三蔵「それは?」
三千院「次回に話そう!」
ズコッ!!




