私だって、生きたい!
孔雀明王の力を解放させた卑弥呼が蛇神の王に立ち向かう!
光と闇の戦いが今、始まる!!
解ってた…
解ってたはずなのに…
私がお兄ちゃんにとって、お荷物だったって…
お兄ちゃんだって学校で部活したり、友達と遊んだり、恋とかだってしたかったよね?
それを全部犠牲にして…
私なんかのために…
妹だから?
関係ないよ…
お兄ちゃんは私なんかに振り回されないで、自分の人生を送って欲しい!
私なんかのために、お兄ちゃんに不幸になってほしくない…
私なんか死んだって…
このまま…
消えてしまいたい…
(そう思っていた…)
この島に来てお兄ちゃんと別行動になった時に、私は千亜さんに連れられて逃げた。けど、追っ手に捕まり私は千亜さんと一緒にお父さんの所に連行された。
そこで私は…
お父さんから、蛇神島の秘密を聞かされた…
お母さんの事や…
私を贄にして大蛇の王を呼び覚ます儀式に使う事…
不思議と恐怖はなかった。
だって私は話を聞かされた時に思ったの…
(とうとう、この日が来てしまったと…)
私は薄々気付いていたのかもしれない。
自分が普通の人間じゃないと…
なぜなら、私は入院していた病院で何度も悪夢にうなされていた。
気付くと、自分の足が失くなっていて、蛇のような身体になっている夢…
幼い私が蛇の化け物になっていて、お兄ちゃんに襲い掛かる夢…
でも、これは全て夢じゃなかったんだと解った。
これは昔体験した事実…
私は蛇…
私は化け物…
私は生きていたらいけない存在…
このまま生きていたら、必ず私はお兄ちゃんを苦しめる。
私がお兄ちゃんを…
殺してしまう…と…
そうなる前に、私なんか消えてしまえば!!
私はお父さんに言われるがまま頷き、儀式を受け入れる事を了承した。
だけど、そんな私の手を引っ張り逃げ出そうとしてくれた千亜さんの言葉が頭を過る。
千亜さんは逃げ出した私達を追って来た大蛇の化け物を振り切りながら、私に言った。
千亜『貴女のお兄ちゃんを悲しませたりしたらダメ!軍斗兄さんは、貴女に死んで欲しいなんて思ってないよ?生きて欲しいって思ってる!お願い!生きて!詩織ちゃん!』
私は気付いた。
千亜さん…
詩織「もしかしてお兄ちゃんの事を?」
千亜さんは答えずに無言で私の手を引っ張り、逃げている。
(…私が死んだら、お兄ちゃんが悲しむ?)
だけど、私達は捕まった。
千亜さんは裏切り者として体罰を受けていた。
私は…
詩織「お願いします!私は言う事を聞きます!だから千亜さんを助けてください!」
そして私は儀式を受け入れたのに、
そこに、来たの!
お兄ちゃんが!!
どうして?
お兄ちゃん・・・来ないで!!
そんな私を大蛇の王になった光児さんに祭壇の下にある闇の空間へと落としたのです。闇の力が私を覆い包み次第に意識が失くなっていく。
このまま…
何も考えたくない…
それから、どのくらい時間が経ったのだろう?
消えかけた私の魂を揺さぶる声が?
『しぃおりぃー!』
その声は間違いなく…
お兄ちゃん!?
私は叫びたかった…
「お兄ちゃん!」
だけど、身体の自由はもちろん声も出ない…
逃げて!
お兄ちゃん…
お兄ちゃんが私を呼ぶ声が何度も聞こえる。
私は…
もう…良いよ…
お兄ちゃん…止めて?
お兄ちゃん…
私はもう人間でも、貴方の妹でもないの!
私は化け物なのよ!!
私の身体が…蛇神化していくのが解った。
そんな私を見ても、変わらずお兄ちゃんは…
私のために…
何度も名前を呼び続け、手を差し出してくれている。
それなのに私は…
蛇神化した私は、衝動を抑えられずにお兄ちゃんの首に噛み付いていた。
お兄ちゃんの血が、私の中に入って来るのが解る。
お兄ちゃん…
ごめんなさい…
ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!
嫌だ…
私がお兄ちゃんを?
『いやぁーーー!』
その時、私の身体が熱くなっていくのが解った。
熱い…苦しい…
お兄ちゃんの血が毒?
そんなんじゃない…
私が激しく苦しんだのは…
自分自身への葛藤…
お兄ちゃんは、何度も何度も何度も何度も…
私を助けようとしてくれたのに、あんなに傷付きながらも?
既に、お兄ちゃんの方が先に死んじゃうかもしれない状態だと言うのに…
私のために?
それなのに私は何を?
逃げる事だけ考えて!
何もしていない!
その時、千亜さんの言葉が脳裏に浮かぶ。
千亜『お願い!軍斗兄さんを悲しませないで…』
兄さんが悲しむ事?
それは、私が死ぬ事?
私は…
私だって、死にたくなんてない!
だけど、お兄ちゃんが苦しむ姿をもう見ていたくなかったから…
お兄ちゃん…!
そして、闇の中から…
再び、お兄ちゃんの声が聞こえてきた。
蛇塚『詩織!死ぬなぁー!必ず兄ちゃんが助けてやるからぁ!絶対に!お前を一人になんかしないから!例え…例えお前が化け物になろうとも、詩織…お前は俺の妹なんだからよ!お願いだ…死なないでくれ…俺を…俺を一人にしないでくれ…俺を悲しませないでくれよぉ…しぃおりぃー!』
その時、私は思った。
心の底から…
『生きたいと…』
それが引き金になったのか?私の中(魂)からナニカが抜け出て来たのです!
強烈な力が私の中から産まれて来たような感覚?
その時、私の前には…
知らない僧侶さんが立っていたのです。
その方は私に言いました。
『蛇塚詩織よ!お前は生きて、私を産む定めにある。だからこそ今、このような場所で死してはならぬ!お前は選ばれし神の転生者を、この私を現世に産み落とすために産まれし宿命の女なのだからな!』
な…何を?
詩織「わ…私は!蛇神を産むくらいなら、生きていたくない!世界に…いえ、お兄ちゃんを傷付ける蛇神なんか消えて!」
私は震える身体を抑え、目の前の僧侶に叫んだのです。だけど、僧侶さんは優しい目で答えた。
僧侶『ふふふ…強くなったな?詩織よ!それも、あの少年のお陰か?あの少年…不思議な魂を持っているな?強い魂だ…私は見ていた!お前達兄弟を!』
私達を見ていた?
僧侶『だからこそ、お前の命の危機に、私は陰ながら力を貸し与えていたのだ!蛇神の力をな!』
蛇神の力?
詩織「そんなのいらない!私は!私はお兄ちゃんと二人で人間として生きたかっただけなの!」
僧侶『力を貸さねば、お前は死んでいた…そして、あの少年もな!』
エッ?
その時…
私の記憶に過去のイメージが入って来る。
それは初めて私が蛇神化した時の記憶でした。
目の前で怯えるお兄ちゃんを、私を連れて来たお医者さんが蛇神化した化け物に襲われそうになったのです!
お兄ちゃんを守りたい!
そう思って強く願った時、誰かが私に言ったのです。
《娘よ?大切な者を守る力を!生き残る力を与えよう!》
その声を聞いた後、お兄ちゃんを助けたくて前に出た私の姿は無意識に蛇神化していました。私はその姿で襲いかかる化け物を薙ぎ倒し引き裂く。そのまま私は蛇神化した姿でお兄ちゃんを守りつつ逃げたのです。
もう大丈夫だと思えた所で私は元の姿に戻っていく…
それから後の事は記憶にないのですが、お兄ちゃんが私を背負いながら島から出たのだと聞かされた。
確かに私が蛇神化しなければ、あの日、島から抜け出せなかったかもしれない…
二人とも生きてなかったかも…
詩織「あの時の声は貴方だったの?貴方が私達を助けてくれたのですか?」
すると、その謎の僧侶は言ったのです。
僧侶『時間がない!今に、この闇の空間から抜け出せなくなる!だから、今一度我の力をその身に与えよう!今度は蛇神としてではなく、本当の我の力を貸し与えよう。さすれば、お前だけでなくお前の兄の命も助けられよう!』
この闇から抜け出せる?
お兄ちゃんが助かる?
私は自分の事よりもお兄ちゃんを守りたい!
詩織「本当に助かるのですか?」
僧侶『あぁ…ただし!』
えっ?
詩織「…ただし?」
謎の僧侶は言ったのです。
僧侶『ただし、これより後、お前は死ぬまで戦う運命から逃れる事は出来なくなるがな!』
戦う運命?
私は…
(お兄ちゃんさえ助かれば…私は…)
詩織「解ったわ…私は貴方の力を受け入れ…ま…」
私が覚悟を決めたその時!
『待ったぁーーー!』
えっ!?
そこに、お兄ちゃんがいたのです!
詩織「お兄ちゃん?」
お兄ちゃんは傷付いた身体を引きずりながら…
蛇塚「なぁ?話を聞いていればお前は神なんだってな?お前の力を使えば、この真っ暗闇の世界から抜け出せるんだよな?だったら…」
『俺にその力をくれよ!』
エッ?
すると、目の前の僧侶は…
僧侶『少年…まさか、この精神世界にまで来るとは思わなかったぞ?本当に強い魂を持っているな?だが、お前には無理だ!何故ならお前の魂には、まだ覚醒してはいないが私とは別の力を感じるのだ!同じ魂に二つの神の力を背負う事は不可能!もし、無理に私を受け入れれば、お前の魂は耐えられずに肉体もろとも木っ端みじんに崩壊するのだぞ!?』
いや…
お兄ちゃんが死ぬなんて?
嫌…嫌…嫌!
私は、再び…
詩織「私が受け入れますから!」
蛇塚「ダメだって言ってるだろ!」
すると、お兄ちゃんは私の頭を撫でながら、
蛇塚「詩織…お兄ちゃんを信じられないのか?お兄ちゃんはずっとお前を守るって言っただろ?お兄ちゃんを信じろ!お兄ちゃんは絶対に死なないし、お前も助ける!だから、詩織はお兄ちゃんだけを信じて欲しい!ダメか?」
私は首を振り…
お兄ちゃんの言葉に涙が出て来て…
止まらなくて…
泣きじゃくってしまったのです。
そして頷くと…
蛇塚「さぁ!話はすんだぜ?俺の中(魂)に来い!蛇神様よ!」
僧侶『時間がない!どうなっても知らぬぞ?無謀なる少年よ!』
すると、僧侶の姿をした蛇神が、その本来の姿を現したのです。
そして、お兄ちゃんの身体に吸い込まれるかのように入って行ったかと思うと?
『ウグオオオオオオ!』
お兄ちゃんが尋常じゃなく苦しみ出したのです!
目や耳、鼻や口から…
血が噴き出し…
そのまま、疼くまったのでした。
詩織「お兄ちゃーん!」
その時、あの僧侶の声が再び頭に入って来る。
『少年!妹を思うその強き魂で、見事に我を受け入れてみよ!さすれば我が力!お前に貸し与えようぞ!』
そして、名乗ったのです。
『我が名は…蛇神の王たる者!軍荼利明王!』
次回予告
蛇塚「やはり俺の妹は最高だ!優しく健気で、お兄ちゃん思い!!
やはり、俺の育て方が良かったんだなぁーーー!!」
三蔵「このシスコンが・・・正直、危ないぞ?」
蛇塚「何を勘違いしている?俺はシスコンじゃないぜ?」
三蔵「じゃあよ?詩織に彼氏が出来たらどうする?」
蛇塚「そりゃ~当然・・・」
『殺す!!』




