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神を導きし救世主!  作者: 河童王子
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帰郷


蛇塚軍斗、彼は運命に導かれるかの如く、己の数奇なる運命に引き込まれていく。


俺は蛇塚軍斗…



現役高校男子の俺は、ほんの少し他の人間と違う力を持っている。


と、言っても霊が見えるだけの些細な力なのだけど。


そんな俺は親元を離れて妹と二人で暮らしていた。いや、妹は足を患っていて病院に長期入院しているから実際は一人暮らしみたいなもんか?詩織は幼い頃に原因不明の病気で足が動かなくなり、そのために都会の病院に入院しているのだ。

本来なら両親も一緒に来るのが常識だろうと思うが、これもまた仕方ない理由があった。お袋がまた身体が弱く、都会に出る体力も危うい寝たきり状態なのだ。だから親父がお袋を見るために俺達親子は離れて暮らしていた。


そのため毎月送られてくる仕送りだけが唯一親との繋がりだった。



そんな俺と妹のもとに、久しぶりに父親からの手紙が届いた。普段は筆無精な親子からは一切の手紙がなかっただけに俺は驚いた。手紙には親父のいる故郷にて行われる儀式?いや、祭か?そこに妹と一緒に参加するようにと言う内容だった。



蛇塚「祭なんか高校生にもなって出なきゃいけないもんなのかねぇ~?」



とか言いつつ…



俺は妹の詩織を連れて故郷のある島へと帰郷している最中なのである。


まぁ…夏休みに入った事だし、懐かしがてら詩織の気晴らしにもなるかな?とか言う軽い気持ちの帰郷だったのだが…



なんか…



戻らないといけないような強制力が、俺を急かさせているような気分もあった。



何故だろう?



そうそう!何故と言えば、詩織の病院の一時退院の許可は、不思議と簡単におりたのだ。


で、俺は詩織を車椅子に乗せ、二人で新幹線を乗りつぎ、故郷に向かっている途中だったりする。



詩織「お兄ちゃん…私、里に行くの緊張する…」



蛇塚「ん?そうだよな?あの里にいたのは、お前が八歳の時までだったけか?五年ぶりになるんだな?」


詩織「う…うん。あんまり覚えていないけど…何か…忘れちゃいけない事があったような気がするの」


蛇塚「忘れちゃいけない事?」



詩織は少し不安な顔付きだった。



そういえば…


俺も何かあったような?


思い出せねぇ…



俺は新幹線の窓から外の風景を眺めながら昔の事を思い出そうとしていた。



何か、昔…


何かあったような?


忘れてはいけない何かが?



だが、いくら思いだそうとしても、やっぱり…思い出せなかったのだ。


それから俺と詩織は電車を降り、海の見える海岸へと向かう。


すると前方から二人の僧侶が俺達に気付き、近付いて来たのだ?



なんだ?


俺に僧侶の知り合いなんかいないぞ?



すると僧侶は俺とすれ違い様、変な事を口走ったのである。



『また、来たのか…まだ遅くない…引き返したまえ…』




なっ?


振り返ると、その僧侶は消えていた。


なんだ?今のは?



俺は不気味に感じつつも目的の場所に向かっていく。


おっと!


ここから先は里の掟で秘密なんだったな!



俺と詩織は持って来た勾玉を、海岸近くの小さな小屋にいた男に見せる。この勾玉は届いた手紙に俺と詩織の分が二つ入っていたのだが、実はこれは里に入るために必要なのだ。


小屋にいた男は勾玉を見ると頷き、俺と詩織を舟に乗せてくれた。



詳しくは知らないが、この勾玉がないと今から向かう場所に入る事はもちろん、その位置を発見する事も出来ないとか?



…俺の里は訳ありで、俗世間から離れた孤島にあるのだ。



蛇塚「大丈夫か?」


詩織「…うん」



俺は車椅子ごと詩織を抱き抱え舟に乗せると、俺達は故郷のある孤島に向かって行く。



すると勾玉が光だすと、目の前に光の壁が現れ、舟が通れるほどの穴が開いたのだ!



そうさ…


俺達が向かっているのは外界から閉ざされた島…


『蛇神島』



俺と詩織はこの島の出身なのだ。


久しぶりだ…


本当に何も変わっていないな?


俺と詩織は島の入り口にいた者達に持ち物検査をされた後、里の出入りを許される。俺は車椅子を押しながら里を見回していた。


詩織は初めて来たような感じで目を丸くしている。



無理もないだろうなぁ…


不思議と里に戻ると同時に、少しずつ幼い頃の薄い記憶が蘇って来る。



確か俺は…


ガキの頃、よく里の仲間達と里を駆け回っていたよな。あいつ達元気にしてるかな?



多分、まだこの里にいると思うけど?



すると、海岸の方から俺と同じくらいの歳の連中が視線を送っている事に気付いたのだ。



蛇塚「あいつ達…あれ?もしかして?」


すると、そいつ達は俺と詩織に向かって近付いて来たのである。詩織は少し心配そうな顔付きになっていたが、その中の一人が俺に話し掛けてきたのだ。



「お前…もしかして軍斗か?頭領のところの?」



俺は答える。



蛇塚「ああ!蛇塚軍斗だよ!久しぶりだな?長人に健司!それに、光治と高城と千亜!」



こいつ達はさっき説明にあった俺の幼なじみ。


この蛇神島で幼少時代に共に遊んだ仲間達。


一番身長が高く大人びた奴が碇長人[イカリナガト]、髪を逆立たせているのが村上健司[ムラカミケンジ]、相変わらずポッチャリ?ふっくらした奴が高城武志[タカギタカシ]、茶髪の優男が中野光司[ナカノコウジ]、最後に唯一女の、恥ずかしげに俺を見ているのが加藤千亜[カトウチア]の五人だった。



長人「お前、軍斗だよな?頭領の所の?久しぶりだな!儀式のために頭領に呼ばれて戻って来たのか?」


蛇塚「ああ!妹の詩織も一緒だぜ?元気だったか?みんな!」



俺が軍斗だと解った途端に、五人は俺を囲むように話し掛けて来た。



成長して少し見た目が変わっていたが直ぐに解った。



高城「軍斗!お前、身長伸びたよな?都会には美味い食べ物ある?」


蛇塚「えっ?あ~まぁな?」


光司「軍斗君…久しぶりだね?元気してた?」


蛇塚「あぁ!元気元気!てか光司は相変わらずだな?最初、女の子かと思ったぜ!」


光司「酷いよ!女の子って千亜がいるじゃん!」


軍斗「千亜?」


俺は健司の後ろに隠れるように俺を見ている千亜を見た。千亜は昔、妹みたいに俺になついていたが…綺麗になったな~



軍斗「千亜?久しぶりだな!」


千亜「軍斗君…お帰りなさい」


軍斗「ただいま!」


健司「・・・・・・・・・」


すると健司が俺を睨み付けていたのだ?


蛇塚「ん?」


健司「軍斗!お前なぁ~?戻って来るなら連絡の一つもよこせよな?」


蛇塚「わ…悪い!何か色々と急で、久しぶりで気が回らなかった~」


健司「ひでぇ~!マジに忘れてた訳じゃないだろ?」


蛇塚「当たり前だろ!」


長人「積もる話もあるだろうが、頭領の所にはもう挨拶に行ったのか?」


蛇塚「これからだが?今から詩織を連れて親父…じゃなくて頭領に顔を出すつもりだ!」


長人「そうか…なら、早い方が良い!また後でな?」


蛇塚「ああ!」



久しぶりの友人トークに花が咲き、和んだ後、俺と詩織はその場を後にして、頭領…


あっ!


実は俺と詩織の父親は、この里に奉られている蛇神様を護る護衛隊のリーダー格なのであり『頭領』と呼ばれているのだ。実質、この里の長と言っても良いかもしれない。



蛇塚「そういえば父親とは五年振りか?…ん?」



詩織の返事が少なくなっている事に気づく。



蛇塚「どうした詩織?」


すると…


詩織「お兄ちゃん…帰りたい…なんか…」



詩織は青ざめた顔で俺に訴えて来たのだ?



蛇塚「帰りたいって?祭は明日だぞ?」



俺は詩織の真剣な目に俺はそれ以上何も言わずに答えた。



蛇塚「そっかぁ!解った!じゃあよ?父親への挨拶を終えたら帰るか?」


詩織「お兄ちゃん…良いの?」


蛇塚「当ったり前だろ?お前が楽しめなきゃ、来た意味ないしな!」



そう言って、俺は詩織を連れて早々と父親に挨拶を済ませるべく父親のいると思われる社に向かったのだった。




父親のいる社は蛇神島の中央にある高い崖山の上にあった。その崖山は離れて見ると、まるで蛇の頭が空に向かって昇って行く姿に見えた。この蛇の頭に似た崖山を蛇神山と呼び、この隠れ島の名前の由来なのだ。


山頂まではロープウェイに乗って行く。大体、十五分程度で着く。


山頂には社が有り、俺は詩織の車椅子を押しながら入っていく。


そこで俺と詩織は社の案内人から父親の待つ部屋にまで案内された。



父親は祭壇の上で俺達から背中を向けて立っていたのである。




蛇塚「父上…蛇塚軍斗、蛇塚詩織!ただいま帰郷致しました!」



父親『…良く戻った二人とも』



父親は俺と詩織に振り向かずに返事をする。


久しぶりの再会なのに・・・




蛇塚「父上!実は詩織の体調が良くないみたいなので、帰郷して間もないと言うのですが…父上にお目通りも出来た事だし…えっと…すみません!これから直ぐに帰ろうと思います!」



だが…



父親『ならば一日この里で休めば良い!明日は儀式だ!それまではゆっくりとしていれば良いだろう。良いな?』



俺は…


蛇塚「は…はい…解りました」



俺は父親には逆らえなかった。


威厳?


いや、何か威圧感みたいなもので…


俺の言葉は制止させられたのだ。



俺は仕方なく隣にいる詩織に説明し、里に戻る事にしたのだった。



蛇塚「ごめんな…詩織…」


詩織「大丈夫…後一日くらい我慢出来るよ?」



どうして…


あの時、俺は詩織を連れて直ぐに引き返さなかったのだろうか?




俺達が再び里に降りると、そこには長人達が待っていた。



蛇塚「よぉ?あれ?どうしたんだ?」



長人曰く、久しぶりに俺と話をしたくなったからだそうだ。



しかし、今は詩織が心配だし…



詩織「大丈夫だよ!お兄ちゃん?」


蛇塚「…そうか?」



すると千亜が詩織の面倒を見てくれると申し出てくれたのである。



なら、大丈夫だよな?



俺は安心して、久しぶりのダチ達と絡む事にしたのだった。



その時…


誰かが言った。






「…どうして戻って来たんだよ…せっかく…あの日…


この里から逃げ切れたと言うのに………」


次回予告


蛇塚「ダチって良いよな?いつになってもダチなんだよな~


それにしても、俺がシスコン疑惑があるようだが、それは大きな間違いだ!


兄とは、普通こういうもんなんだぞ?


兄は、妹を守り、優しく、ちやほやする者なんだ!


あははははは!」

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