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3.試験評価隊

2月26日  銚子沖西30キロの海域

札幌守備隊が防衛を断念したその日、館山基地より飛び立った編隊が目標へ向かっていた。

「艦攻に転科しろと言われた時は本気で辞めてやろうかと思ったのにこの機体は・・・・・」

赤松貞明大尉は流星21型の操縦席で呟いた。

「機長、感アリ、2時方向」

通信員の宇野上飛曹が電探に映った影を見逃さず言った。

「よーし、宇野、全体にトツレだ。(打ち合わせ通り動け、配置再確認)って伝えとけ」

赤松は通信員の宇野上飛曹に伝え自分は操縦桿を倒して高度を下げた。命令を受けて他の隊もそれぞれの行動を始めた。


試験評価隊所属 旗艦「葛城」

「電探に反応。方位190、距離4千、数18」

電探室からの報告が艦橋に伝えられた。

「来たか」

司令席に座る宇垣纏中将が鉄仮面のあだ名通りの無表情で言った。

「艦長、防空隊に通達。所定の通り行動始め」

「了解、通信、酒匂に通信(防空隊は所定の通り行動始め)以上」

宇垣の命令を葛城艦長の北原泰典大佐が艦内電話で通信室に伝えた。


「酒匂」

「艦長、司令より通信(所定の通り行動始め)」

通信室からの報告に酒匂艦長の鹿野浩二大佐は笑みを浮かべた。

「来たか。砲術長、お客さんだ。対空戦闘、丁重に出迎えろ」

艦内電話で射撃指揮所にいた松井孝宏少佐にそう言った。

「了解、対空戦闘。情報室指示の目標、主砲、高角砲用意。発射機、目標は敵編隊第1目標群、照準合わせ、ヨーィ、テェー」

砲術長の号令で目標を高高度にいた編隊に合わせ発射機は誘導弾を載せないまま作動した。誘導装置も発射機の動きに連動するように動いて目標に照射を続けていた。

「第1目標群より2機編隊より離れる」

見張り員からの報告で鹿野はよしと頷いた。

今頃、離脱した機体では逆探の警報が響き渡っている頃だろう。

「発射機、次弾装填。各砲座、射撃用意」

「通信、駆逐隊に通達。(防空戦闘、優先は低高度の第2目標群、第1は本艦と葛城で処理)以上」

防空戦闘時は酒匂が統括で指揮を執る事になっている為、鹿野が防空戦の相方とも言える秋月型に指示を飛ばした。

「目標、射程圏内に近づく・・・・・・今、入った」

見張り員の報告を受け松井砲術長が叫んだ。

「撃ちー方始め」

その号令で酒匂の各砲座から訓練弾が放たれた。


「クソッ!!死なないからって遠慮なしに!!」

赤松はすぐそばで破裂した訓練弾に悪態を吐きながら巧みな操縦で回避し続けた。

「3番、命中。……5番、8番ダメです、編隊離れます」

宇野は破裂した訓練弾から飛んだペンキで化粧された機体を確認しながら報告した。

「残りは大丈夫だな、よし、宇野通信しろ、(急降下隊、予定通り。低空隊我に続け)」

そう言って赤松の目は酒匂を睨んでいた。


「第2、本艦目掛けて突っ込んでくる!!」

見張りの方向より先に第2の方に目を向けていた鹿野は命令を下していた。

「砲術長、装填作業中断。装填員を艦内に戻せ、機関砲撃ちまくれ」

「了解」

「航海長、面舵一杯。目標に対して搭載火器を可能な限り射線に収める」

「了解、おもーかーじー一杯」

その後も可能な限りの命令を出したが赤松は自分を含め9機中5機を生き残らせて酒匂を突破したのである。ご丁寧にも通過前に機関砲を放ち酒匂を中破判定に追い込んだ、しかし赤松もここまでだった酒匂を突破後に酒匂の影にいた新月の決死の防衛で撃墜(判定)され、低空隊は指揮官喪失の混乱から立ち直る前に葛城と残りの秋月型に撃墜、急降下隊は葛城の直掩に喰われながらも搭載ロケットの発射に成功したが結果は虚しく葛城の飛行甲板の後部を僅かに彩るだけでこの日の演習を終えたのである。





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