30.立つ鳥たちは跡を残す
千歳飛行場包囲部隊 第133独立狙撃師団
「戦闘配置解除!!」
この声が師団のあちらこちらから聞こえ将兵達は配置から解放された。しかし師団本部テントでは対空戦闘を命じる原因となった日本軍の行動に対して会議が行われた。
「あれだけの大群です。タダの攻撃には思えません」
参謀の一人はこう言い政治士官の一人と何人の将校がそれに同意した。
「しかし、これだけの大部隊が出たのだ。飛行場は裸同然ではないのか?」
参謀長がそう言って残りはそれに同意して飛行場の占領を主張しだした
「あれだけの大群です。タダの攻撃には思えません。敵もあの飛行場の価値は当然理解しているでしょうから地上戦力もそれなりの物もあるはずです」
それに反対の参謀の一人はこう言い政治士官の一人と何人の将校がそれに同意した。
やや平行線を辿ろうとした議論を師団長はとりあえず1個中隊による偵察で飛行場を確認してから北海道攻略軍司令部へ指示を仰ぐという結論で議論を一旦終わらせる事にした。
苫小牧市
日本航空隊の襲撃が去り中断していた後片付けを再開しようとした矢先に司令部には日本軍機の大編隊が接近中の報が入り彼らは疲れきった体に鞭打って徹底的に叩かれつつも悪運強く生き残った数少ない対空火器に張り付いた。それ以外の人員は小銃と機関銃を天に向けた。
「来たぞ!!」
見張り所の人員が叫び上げた。それによって兵員の緊張は頂点に達した。遠くから多くのエンジン音が苫小牧の空に響き渡り数える気が失せる影が見えてきた。先頭に艦上攻撃機の編隊が見え爆撃を警戒していたがその機体は苫小牧上空を警戒しながら通り過ぎていった。その後も中型爆撃機、戦闘機等が現れたがその機体達も苫小牧を一瞥しただけで次々と通り過ぎ、最後に護衛の戦闘機中隊を引き連れた深山改輸送機4機が通り過ぎていった。
「何だアイツ等……」
それを見ていた兵が呆然とした声で呟いた。
深山改機内
「司令、苫小牧を通過。これより本機は味方制空権を通過して三沢飛行場へ進路を取ります」
機長は窓の景色を見ていた小林に伝えた。
「ああ、ご苦労。頼んだぞ」
機長を労って小林は腕時計を見た。
「そろそろか」
千歳飛行場付近
師団長命令で偵察行動に向かった中隊は千歳飛行場まで数十メートルの所まで近づいていた。
「同志中隊長、偵察に出ていた分隊戻りました」
士官の一人が分隊長の曹長を引き連れて中隊長に報告した。
「おう、でどうだ?」
「一通り見て見ましたが人影が見当たりません」
「そうか、もう少し近づいてみるぞ。全員、戦闘用意」
中隊長はホルスターから拳銃を取り出しながら言った。
「ど、同志中隊長。危険ではないのか」
若い政治将校が不安を顔に浮かべながら言った。
「いえ、我々に与えられた任務はこの飛行場の状況を確認して報告する事です。よってこの状況では可能な限り接近して――」
ここまで言った瞬間、彼らの視界と聴力は光と轟音に支配された。
「全員伏せろ!!」
中隊長は音に負けないように叫んだ。かろうじて聞こえた部下は鉄帽を抑えながら地に伏せ、それを見ていた他の兵も伏せだした。その最中でも爆発は続いた。爆発が収まって彼らが見たものは1本の滑走路を残してあらゆる設備が消え失せた千歳飛行場の姿だった。
「……とりあえず。師団本部へ連絡」
中隊長は冷静に通信兵にそう言った。
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