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25.欺瞞作戦 3

 4月18日 7:43 千歳飛行場

「司令、偵察隊の準備完了。何時でも出せます」

飛行長からの伝令が千歳基地司令小林尊海軍少将に伝えた。

「よろしい。すぐさま暖気運転始め。発進は追って伝える」

「暖気運転始め。発進は追って伝える。了解」

復唱し伝令は司令室から出て行くと入れ替わりに設営隊の伝令が入ってきた敬礼しようとした彼に小林はしなくていいと手で合図して報告させた。

「報告。第1(滑走路)並び第2は地雷設置完了。電探、通信室、爆薬設置作業終了。現在、時限装置の設置作業、開始」

「了解。時限装置の設定は通達通り変更なし」

「時限装置の設定は通達通り変更なし。了解」

設営隊員は復唱して部屋を出て行った。小林は中断していた重要書類の焼却処分を続ける為に金庫の中にある残りの書類を取り出し炎を上げていたタライに書類を入れた。

「そろそろか……」

時計を確認して小林は呟いた。彼は咥えていたタバコをタライに投げ捨て、鞄と軍刀を持って部屋を出た。

5分後、彼は格納庫で待機していた深山改に乗り込み、偵察の天山隊に発進命令を出した。


第4滑走路

「発進命令出たぞ!!」

隊長が電話の受話器を握り締めながら隊員達に怒鳴った。

「よし、いくぞ。かかれ!!」

分隊士の1人が声を上げ、隊員は乗機に駆け出した。それぞれが自分の機体の点検を終え整備士に合図を送り全機が準備完了となった所で隊長が通信機で「チョーク外せ」と命令した。天山隊は隊長機を先頭に次々と飛び出し、空中で集合し南下していった。


これより20分前 『葛城』

飛行甲板には流星が発艦準備を整えていた。護衛役の戦闘機隊は既に上がっていて艦隊の上空を旋回していた。

「へへ、いよいよか」

赤松は愛機のコクピットの中で発艦開始の合図を待ち望んでいた。

「隊長、もうすぐですから落ち着いて下さい。気が入りすぎて発艦失敗なんていい笑い者ですから」

相棒の宇野が赤松をたしなめた。

「おう、わかってる。安心しろこんな所でしくじりゃしねーよ。せっかくの機会だぞ。おっと出たぞ」

赤松の視界に飛行科の士官が映り『発艦用意』の合図を出して、射出機管制所に駆け込んだ。

「よし、出るぞ」

赤松の顔が引き締まった。手旗を持った兵曹が旗を上に挙げ、下に振り下ろした。赤松の機体は一気に射ち出され、飛行甲板の下に消えていったが直ぐに浮き上がって戦闘機隊に合流しようと高度を上げ始めた。それを見る事なく甲板では次の機体の発艦作業に取り掛かった。

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