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17.誤報

4月18日 北海道 資材輸送道 独立混成大隊拠点

独立混成大隊は札幌と苫小牧を結ぶこの地下トンネルに開戦前まで工事の拠点の一つとして建てられていた建物を自分らの拠点として使っていた。地下にありながら他の拠点との連絡用に設けられた無線設備は彼らにも役に立つ物であった為に事前にその存在を知っていた西野がここを拠点に決めたのだった。

「………………」

その無線室で当直であった倉間裕美少尉は同じく当直であった軍曹と交代で小休止を取っていたが当直であった為に無線室から出る訳にも行けず情報収集の名目でラジオに耳を傾けていた。戦時下である為に娯楽番組は大幅に減らされたが前線の将兵の数少ない楽しみを減らすべきではないと陸軍省と海軍省双方の意見があり完全撤廃は回避されラジオ局はかなりきつい制約の中で番組を続けていた。

「――さんからのお便りでした。この後は一旦気象情報の後にお悩み相談室後編に入ります。お相手は中山哲彦と」

「神崎美鈴でした。この後も引き続きお楽しみくたさい」

時報がなって0時を知らせた。気象情報が始まったタイミングで倉間は大きく伸びをした。

「通信士殿、お疲れ様です」

倉間の相方であった軍曹はアンテナの点検を名目に外に出ていたが休憩時間が終わった為に通信室に戻ってきた。

「はい、お疲れ。ん?何持ってんの?」

倉間は軍曹が手ぶらではない事に目聡く気づいた。

「通信士殿もお疲れでしょうから戻る前に烹炊所に寄ってきました」

「こんな時間なのによく貰えたわね」

そう言いながら倉間は軍曹が手渡した包みとカップを受け取った。包みの中身は黒パンにチーズとコンビーフを挟み込んだサンドイッチだった。

「……ウチの烹炊もだんだんこういうのに慣れてきたわね。最初のは薄切りのパンの間に切った具が存在してるだけって代物だったのに」

「なんだかんだで特殊戦が一定の戦果が上がってますからね、正規の補給が期待できない状態では敵さんから飯の材料を調達せにゃならんのですから。このままでは烹炊の連中、日本の飯の作り方を忘れかねないですな」

しげしげとサンドイッチを見ていた倉間のカップにヤカンで貰ってきたお茶を軍曹が注ぎながら言った。

「今に向こうの代表的な料理のボルシチって汁物が出てくるかもね」

軍曹の言葉に倉間はこう返した。

「自分は聞いた事がありませんがその時は『味噌汁を飲みたい』と思いながら食べましょうや」

このようなやり取りがあった中でラジオからは淡々と気象情報が流れていたがある部分が聞こえてきた時に二人のおしゃべりは止まり、二人はラジオの音量を上げ内容を確認した。

「――繰り返します。高知県南部室戸岬方面に濃霧警報が発令されました。該当する地区にお住まいの方やお仕事等で向かわれる方はくれぐれもご注意ください」

このフレーズは少し時間を置きもう一度流された。この時期に霧など起きる筈もない場所での濃霧警報、手筈通りならこの後すぐに訂正の情報が入る。それはすぐに出され東北地区に変わった、(始まった)二人の脳裏にはこの言葉が浮かんだ。倉間は軍曹に通信室を任せ大隊長室へ駆け出した。

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