12.員数外戦力
4月16日
第1任務部隊は仙台にて第4戦隊分遣隊と合流し、補給船から補給を受け仙台港を出港した。
「司令、先導役のタグボートが離脱します」
北原艦長が離れてゆくタグボートを見ながら宇垣に伝えた。
「うむ、タグボートに『先導、感謝する』と伝えてくれ」
「了解」
「しかし、小沢長官もよく我々に増援など回せましたね」
葛城の前方を航行する高雄と愛宕を見ながら岡田参謀長が言った。
「我々の目的を考えれば、余った戦力なら回してもいいと判断したのだろう、たとえ員数外の戦力でもな」
宇垣は司令席に座ったまま葛城の左舷に目を向けた。そこには大規模改装を終えてかつての不格好な艦影と比べればかなりマシになった龍驤が航行していた。
「対潜空母ですか、対艦攻撃能力を捨てて、6式哨戒機を中心に運用する艦艇……、果たしてどこまで役に立つのでしょうか?」
「とりあえず、今回の任務には使えるだろう。目的地までの航路には敵潜が何隻か潜んでいるとの報告もある、使い道自体は困らんだろう。せっかくもらったのだ彼らにはせいぜい働いてもらう」
宇垣がそう言った時、艦橋に通信士が入ってきた。
「司令、龍驤より入電、『航空隊、発艦許可求む』」
「早速、言ってきたか。龍驤に返信『許可する。準備でき次第、発艦せよ』以上」
「『許可する。準備でき次第、発艦せよ』、了解」
通信士は通信室へと戻っていった。龍驤は許可を受けると昇降機から6式を飛行甲板に上げ、牽引車で発艦スペースへと運んでいき甲板に4機が並べられたところで6式は飛び立った。続けて同じく4機が甲板に上がり計8機が対潜哨戒を始めた。
「参謀長、葛城もそろそろ訓練を兼ねた哨戒飛行の時間ではなかったか?」
6式の発艦を見ていた宇垣は腕時計を確認しながら言った。
「はい、あと20分で艦戦隊が発艦準備を始めます」
「そうか」
司令席から立ち上がり、左見張り所に向かうと甲板上では甲板員と手空きの整備員がカタパルトや飛行甲板自体に異常が無いかを点検していた。
この時、第1任務部隊の進行方向には1筋の小さな白波が立ち、潜望鏡が海面に突き出ようとしていた。




