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10.それぞれの反応

4月12日 6:00 北海道安平村

「大隊長殿」

まだ寝惚け眼の西野に藤木が声を掛けた。

「ああ、おはおう。何か?」

あくびを噛み殺しながら言った為に変な発音になりつつ西野は藤木に続けるように促した。

「中継役の潜水艦から定時連絡と暗号電です」

藤木は解読した物が書かれた紙を西野に手渡した。

「…………!」

内容を理解した西野は目が覚めた。

「藤木、とりあえず全士官を招集して」

「はい」

藤木が士官への招集命令を伝えるために去った後、西野はずれたメガネを直した。

「ようやくか」

手渡された紙には只一つ『救援艦隊、出る』と書かれていた。西野は士官への説明の時に民間人にも一緒に伝えるべきかどうか考える事にした。


同日同時刻 青森県大湊湾

2隻の貨物船と潜水母艦長鯨が停泊し、その間に身を隠すように第44潜水隊の潜水艦が停泊していた。

「司令、艦隊司令部より司令宛の電文が入りました」

伊90の艦橋で潮風を浴びていた木梨鷹一司令に先任士官が紙を挟んだボードを渡した。

「艦隊は無事、出航セリ。貴隊については命令変更ナシ。別命あるまで待機か……」

彼は口にくわえたタバコの灰が落ちかけている事に気付かず口を動かした。

「ようやく、この艦も戦える時が来るのですね」

木梨の隣で同じくタバコを吸っていた渡来艦長が嬉しそうに言った。

「嬉しそうだな、艦長」

その様子を見ながら木梨はその若い艦長に話しかけた。

「ええ、この艦は新世代の艦の先駆けと言って差し支えのない艦ですから、やっと実戦でその性能が実証できると思うと嬉しくて嬉しくて」

艤装員長としてこの艦に関わった者としての感慨がにじみ出ていた。

「ああ、そうだな。だがいくら性能が良くても操る人間がその性能を十二分に理解し、それを余すことなく発揮できなければ宝の持ち腐れだ」

「はっ、心得ています。それで本日、抜き打ち訓練を行いたいのですが」

先程の嬉々とした表情とは全く違う真剣な顔で尋ねた。

「許可する。頼んだぞ渡来生徒」

かつての生徒だった男を頼もしさを感じながら教官は許可を出した。

「了解。先任」

渡来は先任を引き連れ艦内に戻っていった。



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