つるがも町中央公園戦線異常無し
ある晴れた夏の昼下がり、せみしぐれ
「…すいませーん。奥山さん?つるがも町役場の嶋田ですけど」
「しょうこりもなく来たわね、つるがも町役場の嶋田生活安全課係長代理!!」
「あ、そこにいたんですか。名前覚えてくれてたんですね、有難うございます」
「覚えたわ、えぇ覚えたわ!だって貴方は私から権利と尊厳を奪い取っていく憎い国家権力の犬ですもの!さぁ、今日は何を奪い、何を踏み躙っていくの?!言ってご覧なさいよ、この公僕が!!」
「別に何も奪いませんし踏み躙りませんよ…。そのダンボールの張りぼての撤去をお願いしに来ただけです」
「まぁ!いきなりのメチャクチャな要求と名誉毀損の数々、さすがの私も返す言葉が見当たらないわ!いかにも圧政者が要求しそうな内容ね、嶋田生活安しぇ…安全課係長代理!」
「いきなりじゃないですよ、三ヶ月も前から言ってるじゃないですか。それに名誉毀損なんかしてないですよ」
「名誉毀損はしてないですって?!よくもそんなことが言えたわね!私の家をダンボールと言ったじゃない、立派な名誉毀損よ!謝罪と賠償を要求するわ、嶋田生きゃつ…生活安全課係長代理!」
「実害がないかぎり名誉毀損にはなりませんよ。というか役職名つけて呼ばなくていいですよ、さっきから噛みっぱなしじゃないですか」
「私のどこが噛んでいるというの?!それすらも名誉毀損だわ!もう一度謝罪と賠償を要求するわよ、嶋田しぇい活…生活安じぇ…嶋田ぁ!!!」
「もういいです。とにかく早く撤去してください、公園は貴方だけの物じゃないんです」
「お断りするわ、嶋田課長代理」
「係長です。あのですね、近隣住民の方も迷惑してるんです。というかその年でホームレスってなにやってるんですか、もっとしっかりして下さい」
「ホームレスですって?ハッ!貴方のような下賎な労働者がよく言うわね。自然とふれあいながら暮らす私の優雅な生活に嫉妬しているの?」
「自然とのふれあいってドングリ拾いのことですか?朝っぱらからあれやるのやめて下さい、登校中の子ども達がひいてます」
「違うわよ。あれは拾ってるのではなくてドングリを悪い人間の手から保護してるの。私のふれあいはふれあいじゃなくてふれ愛なのよ、お分かり?」
「分かりません、貴方が恐いです」
「まぁ貴方のような労働者階級の人間に理解は無理でしょうね。せいぜい少ない稼ぎの為に必死で働きなさい」
「あなた無職ですよね?とにかく警告しましたので、一週間以内に撤去してください。でないと強制代執行で実力排除しますので」
「あら?そんなことしていいのかしら、柴田係長代理!」
「嶋田です」
「私の父は国会議員なのよ?!しかも共和党よ?!そんなことをしたら泣きを見るのは貴方の方ね!」
「共和党はアメリカの政党ですよ。それに貴方のお父さんは駄菓子屋の重雄さんでしょ、すぐにバレる嘘つかないでください」
「ウフフ、私の嘘をみま…見破るとはなかなかやるはね、嶋田係長代理!見直したわ!」
「そうですか、有難うございます。それじゃぁ」
「あら、もうかえるの?ふふ、どうやら私の正論に勝てないと悟ったようね!!所詮国家権力の犬なんてこんなものよ!勝利だわ!!」
「はい、ではこれで」
「……ホントにかえるようね」
「もちろん。さよなら、お邪魔しました」
「え?ちょっ、タンマ!ストップ!!まだ15分もいてないじゃん?!この前は30分はいたじゃん?!早くね?!マジ早くね?!」
「仕事あるんで」
「はぁーー?!?ノリ悪っ!!マジノリ悪いんですけどぉ?!意味わかんねーし!」
「じゃ、さようなら」
「わ、わーかったって!出てくからさ?出てくからもーちょっと寄ってってよ!チョー暇なんだって!」
「…ホントに出てってくれます?」
「マジ出てくマジ出てく、死ぬほど出てく」
「じゃぁ付き合います。あと15分くらいね」
「マジ?!やったー!!!えーと、じゃぁ嶋ッチが入ってくるところからね!」
「分かりました。…失礼します」
「来たわね!嶋田生活安全課係長代理!!」
始めに戻り、以下エンドレス